バーレーンGPテクニカルプレビュー
パスカル・バセロン Q+A
●マレーシアGPをどのように評価していますか?
「滑り出しはかなり好調で、再び予選第3セッションのトップ10争いに2台とも送り込むことができた。だが残念なことにレースではいいスタートが切れなかった。ヤルノはまずハードタイヤで走ったわけだが、その理由はそうしておけばレース後半にかなりいい順位につけると考えていたからだ。だが惜しくも彼はスタートでルノーに順位を譲る形になってしまい、また、ラルフもタイムをロスしてしまった。ラルフは第2スティントでパンクに見舞われたため、さらに順位を落としてしまった。そのため予定よりも早めにピットインしなければならず、レースを走り切れるだけの燃料を補給したわけだが、その結果クルマはとても重い状態になり、バランスがもはや最適ではなくなってしまった。ヤルノがいい仕事をしてくれたお陰で、われわれは2ポイント獲得することができた」
●ヤルノは金曜日にクルマのパフォーマンスが安定しないと言っていましたが、この点についてはどのように考えていますか?
「セッションを通じて相対的な競争力を分析するのは容易ではない。特に各車の燃料搭載量が異なる場合はね。したがって恐らくはそれがひとつの説明になるだろう。これまでのところ、他車と比較した際にグリップレベルがいろいろと変わってくることに関して、不思議な部分はなにもないよ。私としては、われわれの競争力のレベルは各セッションを通じてとても安定していたと思う。金曜日のわれわれのロングランのペースは、他車と比較した場合、直前のテストのときよりもよかった。金曜日に一番悩ましかったのは、走り出しの1周目の速さがどこまでいけるのかということだった。だが土曜日に予選に向けて準備していた段階では、1周目の速さも大丈夫だという確認ができていた」
●あれだけの酷暑に対応するため、身体的に何か特別な準備はしたのでしょうか?
「ドリンクシステムは定期的にチェックしていたよ! ドライバーのふたりはあの暑さに耐えられるようしっかり準備していた。マレーシアは、彼らがトレーニングに注いだすべての努力が、しっかりと成果となって自分に返ってくる場所でもある」
●マレーシアやバーレーンのレースに向けて、冷却システムを備えたレーシングスーツの使用は検討しましたか?
「実は私は今までシングルシーターのドライバーがそういったレーシングスーツを使用した例を目にしたことがないんだ。スポーツカーやDTMといったカテゴリーでは、車内に十分なスペースがあるため、そういうスーツを頻繁に使用しているようだけれどね。でもあれはかなりかさばるシステムだ。冷却水用に大きな箱が必要になるが、もちろんF1カーにはそんなスペースはないからね」
●ここまでの2戦では予選でいずれも8位と9位でしたが、この結果には驚いていますか?
「その数字は、ふたりのドライバーがそろってトップ10に入っているという事実の確認であり、ある意味いいことではあるものの、まだわれわれが望んでいる位置には到達していない。われわれの冬のテストの調子を見て、もっと悪い状況を予想していた人間もいたようだが、それは冬のテストで実際に行っていることを間違った形で分析してしまったせいだ。前年のシーズンのデータが手元にあれば、何も間違った方向には進んでいないことは容易にわかったはずだし、開幕前のわれわれのテストでの調子は昨シーズンよりも良かったんだからね。だからふたりそろってトップ10入りしたのも大きな驚きではなかった。ただし、だからといってわれわれが満足しているわけではない」
●ライバル勢についてですが、過去にブリヂストンタイヤの経験がなかったチームのほうがパフォーマンスの面で大きく苦しんでいると思いますか?
「もちろんタイヤの変更は各車の調子の悪さと関連しうる要素のひとつだろう。だがそれが全体に影響するような大きな要素だとは私は思わない。今シーズン使っているタイヤは昨年までのタイヤと比較して遥かに扱いが容易だし、クルマとタイヤがまったく適合しないといった問題が生じる余地は皆無と言っていい。すくなくともグリップに関してはね。各タイヤの適切な作動領域を見つけるのも簡単なことだ。率直に言えば、微妙に異なるタイヤの形状その他によって生じる空力的な違いのほうが影響力は大きいと思う。タイヤの形状は空力パッケージの一部でもあるが、もしかしたらミシュランタイヤにより適したクルマもあるのかもしれない」
●昨年のバーレーンではやっかいなタイヤの問題に直面しました。今回は大丈夫でしょうか?
「昨年何が起こったかといえば、まず開幕前の冬の間、ブリヂストンはタイヤの構造に関して大きな進化を遂げ、そしてそのお陰で耐熱性や耐摩耗性の点で性能が大きく向上した。ところが、その第1世代のタイヤは性能向上の副産物として熱入れの問題を抱えてしまっていた。とにかく冬の間、あのタイヤを使いこなすのは困難極まりないことだった。われわれはそれを承知の上で、過去の経験から、気温がもっと高い状況でレースが始まれば自然に消滅する問題を冬の間に解決しようとするのは意味がないとわかっていた。だが昨年のわれわれはチームとしてひとつミスを冒してしまった。つまり、空力パッケージをアップデートするため、バーレーンテストには参加せずにファクトリーに近い場所にとどまることを選択したわけだ。そのためバーレーンには行かなかったわけだが、結果的にレースの週末を迎えてから、気温が高い状況になっても熱入れの問題は相変わらずだということに気づくことになった」
●つまり、昨年は開幕戦のバーレーンに行ってからその問題に気づいたというわけですね?
「そうだ。しかも昨年のバーレーンは予想よりもはるかに気温が低かった。予想では路面温度が50度を超えると思われていたのが、実際には35度しかなかった。そして開幕戦の後、マレーシアに行ってみたら今度は55度だった。タイヤへの熱入れの問題はそこで自然消滅し、そしてわれわれは競争力を取り戻したというわけだ。昨年の第3戦だったメルボルンでは、再び温度が下がることも路面の特性から熱入れの問題はさらに大きくなることもわかっていたため、われわれとしてはその問題をなんとか解決しておかなければならなかった。そのときちょうどうまいタイミングでふたつのことが起こった。ひとつはセットアップを改善することによってタイヤに熱を入れやすくなったこと、もうひとつはブリヂストンが昨シーズン用にぴったりのコンパウンドを導入してくれたことだ。あれ以降はタイヤに関する問題はまったく生じなくなった。つまり、多くの人が2006年のタイヤの問題を口にするものの、実際にタイヤに問題があったのは1レースに過ぎないわけだ。2007年のバーレーンについては、何も怖れてはいないよ!」
●今年はバーレーンでテストを行いましたが、いかがだったでしょうか?
「われわれにとってはひどいテストだった。そのせいで外から見ている人たちはいろいろとネガティブなことを口にしたわけだが、不調の原因は昨年のバーレーンGPのときとはまったく違う問題だった。とにかく数多くの信頼性の問題を抱えていて、毎日、小さな問題が頻発していたんだ。クルマを十分に走らせることができないでいると、速いタイムもだせず、だんだん悪循環へと陥ってしまうものだ。だがその後へレスでテストしたときには、すでに大きく改善されていた」
●オーストラリアとマレーシアでのパフォーマンスをバーレーンでも発揮できると思いますか?
「空力効率の点でバーレーンではすこし劣ることになるかもしれない。だがそれも始まってみなければわからないし、更なるポイント獲得に挑むわれわれを妨げるものは何もないよ」