新居章年リポート バーレーンGP
2006年4月16日(月)
いつもご声援ありがとうございます。それでは、先週に引き続いての開催となりましたバーレーンGPの報告をいたしましょう。
●連続開催ながら、空力特性を改良
マレーシアGPから連戦のグランプリとなるため、空力パーツで新投入のものはありません。ただ、ひとつだけ前回のマレーシアGPで見直したインダクションポッド付近に取り付けられているロールフープウイングを改良してきました。具体的には空気抵抗を減らして、より効率のいいエアロダイナミクスを得るために、ウイングの両端を短くしました。大きな改良はスペインGPにて予定していますが、その間でもいいものが見つかれば、これからも積極的に改善を図っていきたいと思っています。
今季は従来の2対(左右で4枚)から1対(2枚)へと仕様が変更されたロールフープウイング。ここバーレーンではさらにウイングの長さを短縮し、さらなる空気抵抗の軽減を狙ったものへと変更された。
またエンジンについて、3戦目の今回はふたりともドライバビリティの面で改善を施したフレッシュエンジンを搭載しています。ここバーレーンは2月に合同テストを行っているサーキットで、そのとき我々は風にかなり苦しめられました。その後、チームは開幕直前のプライベートテストでセットアップの方向性を探り出すことに成功。開幕2戦で連続入賞し、その方向性に間違いがなかったことを確認しました。とはいえ、合同テストで痛い目にあったサーキットだけに期待と不安が入り交じった心境でした。
●ヤルノは順調に走り込み、ラルフはTカーにスイッチ
徐々にパフォーマンスを発揮するようになったTF107が、2カ月前のテストで苦戦したバーレーンを舞台に、どんなパフォーマンスを見せることができるのか。
特種な条件となるここバーレーン・インターナショナル・サーキットでは、シーズンオフのテストでずいぶんと苦しめられた。今回ラルフが好みのセットを見つけられなかったが、2カ月前からは大きく前進した。
フリー走行が始まると、不安は杞憂に終わりました。2カ月前に我々が苦しんだのは、バーレーンの風。ライバル勢が安定して走行している状況で、我々だけがセットアップをうまく煮詰めることができなかったのです。
フリー走行開始直後に、ヤルノから「風が強くて、ときどきクルマが不安定になる」という報告を受けましたが、ラップタイムを見る限り、2月ほどの大きな落ち込みはなく、ライバル勢のラップタイムも同じように推移していました。風の影響を受けにくいように、セッティングをピーキーに振りすぎなかったことが功を奏したのかもしれません。
しかし、ラルフはセットアップに苦しみました。金曜午前中のフリー走行後に、Tカーに乗り換えて午後のフリー走行2回目に臨みましたが、結局満足のいくセッティングを見つけることができませんでした。とはいえ2台ともトラブルなく2度のセッションを走行したので、データを検証して2日目に挑むことになりました。
●ヤルノの予選トップ10入りは力強い結果
金曜日に続いて、ヤルノは順調にセットアップ作業が進み、セッション後半には主に予選で履くことになるミディアムタイヤを履いてのアタックを予定通り行うことができました。タイムは14番手に終わりましたが、これはアタック中にレッドブルのデイビッド・クルサードがコース脇に止まっていてイエローフラッグが振られていたため。きっと予選では、もう少し上に行ってくれるはずだと思っていました。
一方、初日に使用したTカーで2日目の走行を始めたラルフは、フリー走行3回目の途中でリヤサスペンションの一部に不具合が発生。その対応に追われて、結局ミディアムタイヤを履いてのアタックは断念しました。
予選前のフリー走行でトラブルが発生し、ラルフは波に乗れず苦しい展開を強いられた。ヤルノは今回も第3ピリオド進出を果たした。前戦マレーシアの予選8番手を上回るグリッド獲得も目前だったが、これは次戦以降にお預けとなった。
午後の予選では、その影響が少しあったのかもしれません。ヤルノが6番手で第1ピリオドを通過したのに対して、ラルフは予選の第1ピリオドでも15番手と、苦しみながらの第2ピリオド進出。さらに今回の予選は第2ピリオドが大激戦となり、1秒差の中に7番手から16番手までの8人がひしめいたことも、ラルフにとっては不運でした。残り数分で2回目のアタックに出たラルフですが、アンダーステアが最後まで消えずに第1セクターで自己ベストを更新できず、14番手に終わりました。
これでヤルノ1台だけとなったわけですが、まずは第2ピリオドで1分32秒429を叩き出して7番手。最終ピリオドでも7番手、うまくいけばBMWザウバーのどちらかを上回って6番手も狙えるだろうと目論んでいました。ところが、ヤルノも最終ピリオドのアタックでアンダーステア症状が出てしまい、結果は9番手。
それでも2カ月前の合同テストでの状態を考えれば、トップ10入りは評価すべきこと。決勝レースでも、この調子を維持して3戦連続でポイント獲得を狙います。
●風の影響を受けながらも、ヤルノが2戦連続の入賞
そして決勝では目標としていたポイント獲得を達成。今回の7位入賞は、本当にヤルノの走りに尽きます。
日曜日のバーレーンは風が強く、ライバル勢よりもダウンフォースを強めに施していたヤルノのクルマは、ストレートで向かい風を受けてトップスピードが伸びませんでした。レース序盤にヤルノが積極的な走りを見せることができたのは、ライバル勢の背後にいたからです。彼らのスリップストリームを使うことができたので空気抵抗が目立たず、逆にしっかりダウンフォースがついていたため、コーナー進入でのブレーキング競争で差を詰め、ルノーの2台を相次いでオーバーテイクすることができました。
レースではヤルノのテクニック、駆け引きが光った。前走者を風よけとしてオーバーテークのチャンスをうかがい、タイミング良く相手をパス。反対に後につかれたときには絶妙な走行ラインで相手をけん制してポジションを守りきった。
ところが、そのルノーの2台をパスして集団の先頭に立つと、風による影響をまともに受けてしまうようになります。レース終盤、ジャンカルロ・フィジケラに猛追されたのは、クルマに問題があったからではなく、空気抵抗が増したためでした。それでもコーナーの立ち上がりではヤルノのほうが速かったので、スリップストリームに入られないよう、ベテランらしい冷静なドライビングで7位を守りきってくれました。
ただし、今回はトップ3との差が広がっていることも身に染みて感じることになりました。とはいえ、開幕から3戦連続でポイントを獲得し、2台そろって完走。しかも、苦手だと思われていたバーレーンで、ルノーの2台を押さえて、3強に次ぐ4番目のチームの座を得ることができました。これは私たちが着実に進化を遂げていることを証明した結果だと思います。
再来週のバルセロナ合同テストでは、アップデートした空力パーツを投入、そしてヨーロッパラウンドに突入したいと思っていますので、今後もパナソニック・トヨタ・レーシングへのご声援よろしくお願いします。