バーレーンGPを振り返る
ラルフ・シューマッハー Q+A
●オーストラリアGPから始まって次にマレーシアテスト、そしてまたレースと続いたわけですが、バーレーンGPの前に中東地域でリラックスできる時間はありましたか?
「いや、実は自宅に戻っていたんだ! 大勢のスタッフにとってこれが随分と長旅だったことは知っているよ。パソコンやインターネットフォン経由で家族と連絡をとりあったりしながらね。でも私の場合は2~3日、自宅に戻ることができた。特に何も計画していなかったから、ただ家族と一緒に過ごしたり、息子と遊んだりしていたんだけどね」
●バーレーンGPでは12位でした。あのレースではいろいろと問題があったのでしょうか?
「かなりね。金曜日の滑り出しから、自分が満足できるセットアップを見つけるのが本当に難しくて、あとはそこからどんどん問題が大きくなっていく感じだった。その結果、予選であまりにも後ろのスターティンググリッドになってしまい、いいレースをするのは無理だった」
●セットアップにどのような問題があったのですか?
「大雑把に言えば、クルマのフロントに問題があった。かなりアンダーステアがきつくて、それがクルマ全体のバランスに悪影響を及ぼしていた。それを解消しようといろいろ試してみたけど、なにをやってもだめだった。あれほど苦しんだのはそれが原因だ」
●土曜日の午前中はヤルノに比べて半分の周回しか走れませんでしたが、それも足を引っ張ったのでしょうか?
「リアサスペンションを交換しなければならなかったから、早めに走行を切り上げたんだ。あれも痛かったね」
●そのせいで予選に向けた練習走行ができなかったのですね?
「そう。でもあれがそれほど大きな問題だったとは思わない。開幕前にバーレーンでテストをしていたから、準備段階の仕事は終わっていた。それよりもバランスの問題のほうが深刻だった」
●その問題はレースよりも予選のほうに大きく影響したのですか?
「その通り。レースではリアタイヤがある程度磨耗するため、自然にバランスはよくなるし、アンダーステアの影響もそれほど大きくは感じなくなる。しかし予選アタックをするときにはかなりその影響を被ってしまう。アタックの際にタイムをロスしてしまうからね。また、予選順位が今回のように後ろになってしまうと、レース全般を通して渋滞の中で走らなければならなくなるから、いわば悪循環に陥ってしまうわけだ。たとえ自分が速い場合でも、ご存知のようにF1では追い越しが難しいからね」
●今回のあなたのレースもそういう流れだったわけですね?
「残念ながらそうだったね。バーレーンの最初のいくつかのコーナーはとてもタイトで、中団グリッドにいるときはちょっと運まかせになってしまうことがある。今回の私はまさにそういった状況で、1周目は気づいてみたら各車がコースいっぱいになって走っていた。私自身のスタートもベストではなかったし、いくつか接触もあった。ジェンソン・バトンとスコット・スピードがぶつかったようだったけど、その直後はどのクルマも必死で彼らに巻き込まれないようにしていた。全体が落ち着いて1周目が終わってみたら、私の順位はバリチェロとリウッツィに次ぐ18位だった。そのときリウッツィのタイヤを見たらグルーブに白い線が入っていなくて驚いたよ。つまり彼は硬いほうのタイヤでスタートしたわけだ。彼のチームはセーフティーカーが入るほうに賭けたのだろう。そうすれば彼は残りのレースをミディアムタイヤで走れるからね。彼のあの選択は私にとっても都合がよかった。そうでなかったら彼の後ろでもっと多くの時間をロスしていたはずだからね。結局トロ・ロッソが早めにピットインしてくれたから、私はホンダのバリチェロと競うことができて、その後5周目に彼をパスした。それからはとにかく自分ができる限り速く走って、競争の厳しい中団グループのバトルの中をどこまで這い上がれるかだけが問題だった。そして最終的には12位だったわけだ」
●バーレーンはトヨタにとってちょっと相性が悪いサーキットなのでしょうか?
「いや、そうは思わない。昨年は確かにひどい経験をしたけど、でもあれにはタイヤに関する特別な理由があったし、レースの前にテストもしていなかったからね。確かにコースレイアウトはマレーシアよりもトヨタ向きではないだろうと予想していたけど、でもヤルノは予選でトップ10入りしたし、レースでは再びポイントを獲得することができた。だから明らかにクルマには十分な速さがあったんだ。私に必要なのは、とにかくもっと自分の好みに合うようにクルマのセットアップを進めることだ。来月バルセロナでヨーロッパラウンドが始まる前に、この点について力を入れて改善していくつもりだよ」
●今シーズンのチームの滑り出しをどう評価していますか?
「明らかに、今いる場所は望んでいた場所ではないものの、とはいえ、予選ではたいてい2台がトップ10入りしているし、ポイントも稼いでいる。信頼性もしっかりあるし、レース戦略もいい。つまり、ファクトリーとレースチームはどちらもかなりいい仕事をしていると言えるだろうね。今われわれに必要なのは、あとすこしの更なるパフォーマンスだ。願わくば、近いうちにそれを実現できればと思う」
●改善の余地が一番大きいのはどの分野だと思いますか?
「いつものことながら空力はとても重要な分野だし、今もそれは同じだと思う。まだまだやるべきことは多いよ」
●現段階での各チームの勢力図ですが、おそらくはフェラーリとマクラーレンがトップで次がBMW、そしてその後はすこしギャップがあるようです。このギャップを短期間で縮めることは現実的に可能なのでしょうか?
「そうしなければならないよね。これは、われわれが今手にしているパッケージから最高のものを引き出せるかどうか、そしてすべての要素を最適化できるかどうか、という問題だ。言うまでもなくバーレーンでの私は、レースのほとんどの時間を渋滞の中で過ごしてしまったが、でも最速ラップがヤルノのタイムより速かったのはトップ争いをしていた3チームだけなんだ。つまり、客観的に見て、われわれは4番目に速いクルマを手にしていると言えると思う。われわれの後ろを走っているチームのひとつが、実は過去2年のコンストラクターズ選手権を制覇したチームだということを考えてみれば、今のF1における競争がどれほど厳しいかがわかると思う。この世界では簡単に手に入る成功なんてひとつもない。とにかく一生懸命仕事をするしかないんだ。そして間違いなくわれわれはそれを実行できている」