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Rd.11 Grand Prix of Hungary
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新居章年リポート
2007年8月6日(月)

いつもご声援ありがとうございます。今回は、東ヨーロッパで開催される唯一のF1グランプリ、ハンガリーGPです。その舞台となるハンガロリンクは、ガードレールのないモナコと形容されるツイスティなサーキット。それでは、さっそくその模様を報告しましょう。

●新しい空力パーツを前倒しで投入、ピット作業の対策も万全に

走り出しは路面が滑りやすく、アンダーステアが出やすいハンガロリンク。しかし初日の走行は順調で、予選前には問題を克服した
狭く曲がりくねったハンガロリンクでは、モナコ同様に高いダウンフォースが要求されます。そこで基本的にはモナコGPで採用したハイダウンフォース仕様のエアロダイナミクスパッケージを投入していますが、今回ハンガロリンクには風洞実験で良かったものを持ってきました。具体的にはフロアの前側とサイドポンツーンのリーディングエッジ周辺の形状が新しくなっています。さらに、外からはほとんどわからないと思いますが、ディフューザーにも手が加えられています。フロントウイングは、ミドルダウンフォース仕様で効果のあったエンドプレートを使組み合わせた新しいハイダウンフォース仕様を持ち込みました。前回のヨーロッパGPでは、ピットストップ作業で何度かトラブルを発生させてしまいましたが、レース後ガレージに設置している自社ビデオを解析した結果、原因を特定することができ、同じようなミスを誘発しないような対策を講じてきました。

●初日はハンガリー名物のグレイニングとアンダーステアに悩む

ハンガリーにはモナコ仕様をベースにサイドポンツーン、フロア、ディフューザー、フロントウイングに手を加えた新しい空力を投入
今回ブリヂストンさんがハンガリーGPに投入したタイヤは、年間で4種類供給される予定の中で最も軟らかいスーパーソフトとその次に軟らかいソフトタイヤ。ということもあって、初日はグレイニング(めくれ摩耗)が出ることを想定していました。案の定、午前中のフリー走行から2人そろってグレイニングが発生しました。これは我々だけに出たのではなく、ライバルチームにも見られた症状で、午後のフリー走行でも完全に解消されることはありませんでした。その午後のセッションでは、ロングラン走行で2種類のタイヤの比較テストを行いながら、ハンドリングが改善されるようセッティングを変更してみましたが、その時点ではアンダーステアが解消するまでには至りませんでした。
ただし、ハンガロリンクは普段レースが行われないため滑りやすく、初日はグレイニングが出やすい。それにともなってアンダーステアに悩まされやすいサーキットであることも確かです。路面にラバーグリップが乗ってくれば、グレイニングは改善されていく。金曜日は大きなトラブルに見舞われることもなく順調にプログラムを消化できたので、このデータをもとに土曜日午前中のフリー走行でセットアップを煮詰めていきました。

●新パーツの効果か、予選第2ピリオドでヤルノがトップ3入り
金曜日のデータを活かし、セッティングに変更を施して土曜日のフリー走行3回目に臨んだところ、前日ヤルノ(トゥルーリ)のクルマの左フロントタイヤに発生していたグレイニングは、かなり改善されました。逆にヤルノほどグレイニングに悩んでいなかったラルフ(シューマッハ-)のほうがキャンバー変化によってグレイニングを悪化させる方向となったので、予選に向けてセッティングを元に戻すことにしました。その結果、予選では2人とも素晴らしいアタックを披露することができました。特に第2ピリオドでヤルノが見せた1分19秒台のアタックは、TF107が確実に改善されていることを証明する結果となりました。

予選第2ピリオドでヤルノはトップ3に入る好タイムを叩き出す。次なる課題は、スタート時の燃料を積んで挑む最終ピリオドだ
ただし、2台そろってトップ10に入って出走した最終ピリオドでは、それまでの空タンクとは異なり、スタート時の燃料を搭載してアタックすることになります。そして、その車重の重い状態で我々のクルマは充分にパフォーマンスを発揮することができず、ラルフが予選6位、ヤルノは9位に終わりました。第2ピリオドの結果を考えれば、もう少し上位のグリッドへつけるチャンスがあっただけに残念です。とはいえ、ギリギリで間に合った新しい空力パーツの効果が、今回のパフォーマンスアップに大きく影響したことは確か。2台そろってのポイント獲得が見えてきました。

●現役チャンピオンを従えたラルフの素晴らしい走り
予選後、ライバルチームにペナルティが下ったためにラルフもヤルノも1つずつ前のポジションからスタートすることになりました。しかし、走行ライン側の5番手からスタートしたラルフが悪くない発進を見せたのに対して、奇数グリッドから1つ上がってイン側からのスタートとなったヤルノは、スタート自体は悪くなかったのですが、1コーナーでのポジション争いでやや苦しい状況に追い込まれてポジションを落とす結果となりました。抜きどころのないハンガロリンクでは、スタート位置とスタート直後のポジション取りが大きく勝敗を分けることになります。ヤルノのレースは、スタート直後の1コーナーがすべてだったと思います。

抜きどころの少ないコースではスタート直後が勝負。ラルフは好ポジションをキープし、今季最高となる6位フィニッシュを果たした
一方、スタート後もポジションをキープしたラルフは、1回目のピットストップ後の第2スティントで、思っていたよりもペースが上がらず、2回目のピットストップ後にスタート直後からテール・トゥ・ノーズの争いをしていたフェルナンド・アロンソにポジションを譲ることとなりました。また、3ストップだったBMWザウバーに、2ストップ作戦を採用していた我々が敗れたことも反省しなければなりません。それでも、終盤まで現役チャンピオンのアロンソを従えて、粘り強い走りを披露したラルフの走りは素晴らしかった。 ポテンシャルはありながら、なかなかレース本番で結果を残すことができなかったパナソニック・トヨタ・レーシングにとって、ヨーロッパラウンド後半戦で初めてとなる、この3点は大きい。これをきっかけに終盤戦、さらに上を目指した戦いをしていきたいと思っておりますので、ご声援よろしくお願いします。


ハンガロリンクでの新居章年。ようやくレースでも実力を発揮でき、前戦の悔しさを晴らした。次に狙うのは2台そろってのポイント獲得だ。