第3の提言

第4回「スーパーGT 近未来への提言」レーシングドライバー/スーパーGTドライビング・スタンダード・オブザーバー/2009-2010日本カーオブザイヤー選考委員 服部 尚貴 氏

年のスーパーGTも残すところ2戦になり、チャンピオンシップも3メーカーがトップ3に入っており、次回のオートポリスが最大のキーポイントになるだろう。また300クラスもトップ3がドライバーズポイント同点でそれ以外のチームにもチャンピオンの可能性が残っているのでまだまだ分からない展開になっている。このレースを接戦にしている1つの要因として特別性能調整がある。前回も500クラスに新たに調整が入った事はお伝えした。この特別性能調整はチームからだけではくレースファンからも不評で『GTはプロレスだ!』と言われる原因にもなっている。

確かに一生懸命マシンを改良しても、何もしていないチームのマシンが性能調整で軽くなったりリストリクタ-がデカくなるのは間違っていると思う。またチームから『うちは遅いから何とかしてくれ…』とGTAにお願いしてくるのも変な話だ。しかし、どのチーム・メーカーが勝つか、勝負を拮抗させるには現状なくてはならない調整だと思っている。ただ、今回シーズン途中で入れたのはGTAサイドでシーズン初めの見極めが甘かった部分で、私を含めGTAが反省しなければいけない。これからも今年のようなバラバラなマシンを合わせて行くには『完璧』は難しいだろう。

こで私が勝手に今後のスーパーGTレギュレーションを考えてみた。言っておくが、勝手に考えたので『これ無理だよ!』とか『こっちの方がイイよ!』ってな意見もあると思うが、私の理想をお伝えしたい。

マザーモノコックの使用
これはモノコックを細かく図面から規定してモノコックをワンメイク化する。国内だと童夢がメジャーだが、図面が決められているのでムーンクラフトでも海外でも作る事が出来る。また今まで参戦していないメーカー(内外問わず)にも参加しやすくなる。サスペンションはメーカーのアイデアで、決められたディメンションで作る。またミッションもコスト削減の為にワンメイク化。
また2年間使用したワークスマシンは、販売しなければならない。これによって500クラスに新たなチーム参戦のチャンスが増える。

パイプフレームの使用
今は300クラスもカーボンモノコックのマシンもあるが、使用を制限してパイプフレーム化にする。また、ここではFIA-GT車両(GT2)との混走を認めて、今年のマレーシア戦のように海外からのチーム参戦も可能にする。ただ、ここではやはり特別性能調整は必要になってしまうのですが…

タイヤのサイズ統一化
これは500クラスと300クラスのタイヤサイズを同じにする。これは、今スーパーGTに参戦しているタイヤメーカーは6メーカーあり、荷重域が違うにせよ、今まで参戦していないクラスに出場し易くなる。またクラス違いによるコーナーでのスピード差が出にくくなり、無意味な接触を防ぐ事ができる。

ボディーワークの年間登録制
今はサーキットによってリアウイング・アンダーパネルを含むボディーワークでダウンフォースを変えているが、これを年間1種類にして風洞実験等の予算を削減する。

燃料の使用量規定
グループCカー時代もあったが、これからの時代、速いだけではなく燃費も考えたエンジン造りが必要だろう。また将来的には化石燃料に頼らないエタノール化やハイブリッド化も必要だと思う。

エンジンの規定統一
これは今年実現できなかったが、将来的には熱望します。

ざっと500クラスを中心に書かせて頂いたが、もう1つ新たなクラスを増設する。
GTW300クラス
これはマークXジオやオデッセイなどのミニバンをGTに取り込む。車種のサイズに関係なく決められたディメンションで、販売可能なコンプリートシャシー(パイプフレーム)に外装を被せる。イメージとしてナスカーのミニバンタイプだと思って頂ければよい。エンジンは、難しいかもしれないがノーブランドのワンメイクにして出来るだけランニングコストを下げる。室内の容量を利用してミドシップにエンジンを置いて、見かけ以上?のコーナリングスピードを保つ。ミニバン普及率が絶大な日本ならではのカテゴリーで、新たな層にモータースポーツを知って頂くきっかけにもなる。ちょうど外観は2008年オートサロンのトヨタブースにTGDAとして出展したマークXジオのように可愛くもカッコいいマシンになってくれればと考える。

マシンだけではなく大会運営も変えていきたい。例えば、原則1サーキット1開催にして国内6大会。これは今2大会行っているサーキット側の反発も大きいと思うが、出来ない事ではない。各地域の人々がスーパーGTを年に1回のお祭りとして楽しめる場にして行きたい。そして、セパン等のアジア圏で2大会。最終戦に日本国内で市街地コースを作り締めくくる。これはかなり現実から遠いかも知れないが、ドライバーとしてではなくGTAの仕事をやっている私の夢です。

回は私の妄想を書かせて頂いたが、まだまだモータースポーツ業界にとって大変な時期なのは分かっています。フォーミュラーカテゴリーの低迷も承知していますが、まずはスーパーGTがメジャー化して土台を作り、そこから波及して国内モータースポーツ全体の底上げを図る事が出来れば幸いです。

最後に、4週に渡って読んで頂いてありがとうございました。 これからも『子供達の夢となるモータースポーツ』の発展の為に服部尚貴は頑張ります!

【編集部より】
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Profile:服部 尚貴 氏
1966年生まれ 三重県四日市市出身
GTA ドライビングスタンダードオブザーバー、TeamLeMansフォーミュラーニッポンチームテクニカルディレクター、フォーミュラーレーシングドライバーアソシエイション(FRDA)顧問、トヨタGTドライバーズアソシエイション(TGDA)顧問、2008-2009日本カーオブザイヤー選考委員、DVD ベストモータリング レギュラーキャスター
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