第6の提言

第3回「『プロドライバー日本一決定戦』が見てみたい!」モータースポーツアナウンサー ピエール北川 氏

日中国で行われた、「レース・オブ・チャンピオンズ」(以下ROC)というイベントをご存知の方も多いでしょう。以前はヨーロッパなどで開催されていたこのイベントも、年々規模を拡大してきたようで、モーターリゼーションの発達が近年著しい中国で、ついに今年11月アジア初の開催を成し遂げました。筆者は少年のころから実はラリーが大好きで、特にグループBのアウディ・クワトロを駆るミシェル・ムートン選手が大のお気に入り。ですからこのイベントが始まった頃、発起人がムートン選手だと聞いて、毎年このROCは気になるイベントのひとつになっていました。しかし日本ではメディアで詳しく伝えられることが少なく大変残念に思っていたのですが、先日発売されたモータースポーツ専門誌でROC中国大会のことが大きく取り上げられ、とても嬉しかったしありがたかったですね。余談ですがその記事の中で、開催が1988年に始まり、もう22回目と知ったとき、「自分も随分歳をとったな~」などと妙に感傷にひたってしまいました(苦笑)。

そんな私の話はさておき、このROC、日本での開催も可能性として十分考えられるようです。面白いイベントであるのは間違い無いと思いますから、開催されれば最高に楽しみですし、日本のモータースポーツ業界に一石を投じる“事件”になるはずです。実は以前より筆者は、このROCを日本流にアレンジしたイベントが実現できないものだろうか?と、いちモータースポーツファンとして常々妄想を膨らましておりました。
“日本のモータースポーツで活躍した選手が一堂に集まり、同じマシン、同じコース、条件をイコールにして、真のドライバー王者を決める!”
こんなレースがあったら、さぞ面白いだろうなぁ…。シンプルにそう思ったからです。過去を振り返ってみると、日本にそのようなものが全く無かったわけではなく、もう20年ほど前の話だと思いますが、鈴鹿サーキットを舞台にしてよく似たイベントが存在したと聞いた事があります。どんな選手が出場し、どんな競技が行われたか詳細はわかりませんが、当時専門誌で取り上げられていたと記憶しています。このROC日本版のようなイベントが今また復活をするなら、日本のモータースポーツ活性化やクルマ好きの人を増やすのに、小さくない役割を担えるのではないかと考えます。

あ、ココからは完全に筆者の妄想です(笑)。
まず基本的な構想としてはROCと変わりませんが、開催時期はシリーズ戦などが終わったオフシーズンに開催。出場できる選手は日本国内のあらゆるモータースポーツのジャンルから、チャンピオン経験者や才能あふれる有望なトップドライバーに集まっていただきましょう。特にその年のヒーローに。レースやラリー、ジムカーナにダートトライアル、D1やドラッグレースなど。ある一定の年齢以上であればレーシングカートのドライバーもOKでしょうし、もちろんROCのように2輪のトップライダーが参加するのも大歓迎です!
レースに使用するマシンの選定などは悩み多きところですが、日本にはこれだけ多くの自動車メーカーが充実しているわけですから、市販車のスポーティーな車両を競技用にチューンし、各社持ちよって提供していただく。あるいは「日本カー・オブ・ザ・イヤー」などとコラボレーションして、その年の最もハイパフォーマンスなクルマをノミネートしてもらい、それをメーカーからご提供いただいてレースをするというのも良いかもしれません。もちろんモーターショーなどで登場する、実走行が可能なコンセプトカーなどでも、話題性としては最高でしょうね。それから、メーカーが提供する市販車などとは別に、ドライバーがフルアタックして走っても心配無用で「ROCカー」のようなパイプフレームで作られたオリジナル・バギー車両を、日本のレーシングカー・コンストラクターの皆さんに出来るだけローコストで製作をお願いし、それも使用できれば助かります。

催地の候補としては、ラリーのスーパーSSが出来るぐらいのスペースが必要ですから、大都市圏で規模の大きなスポーツスタジアムや、お台場にあるような広大な多目的スペースが良いでしょうか。そして条件が許せば封鎖した都市の公道など、出来るだけ観客の移動でストレスの無い、交通インフラが整った場所で開催するのが良いですね。アフター5にフラッと気軽にモータースポーツを見ていただけるような環境づくりが出来たら最高です。また、回を重ねてイベントが軌道に乗ったら、積極的に全国各地に開催地を移しましょう。大都市圏の人口背景も魅力的ですが、生活の中でクルマへの依存度が高い地方では、よりマーケティングの上でイベントの効果が期待できると思います。
ROCは国別対抗戦がかなりの盛り上がりを見せているようですが、日本版ROCでは国民体育大会(国体)や高校野球の甲子園のように、出身都道府県や地域でチーム分けをした団体戦も行いましょう。レーサー達も、普段世話になっているメーカーやサポート企業などの為でなく、自分の出身地を代表して戦うというのは、いつもと違う使命感や責任感が芽生えてきて面白いことになるでしょう。



て、そろそろ妄想の話を止めないと読者の方に怒られそうなので、この辺で(苦笑)。
今回皆さんに何が言いたかったかというと、「プロドライバー日本一決定戦」を開催してはどうだろう?ということです。なんだか軽々しい企画内容だと思われるかも知れませんね。モータースポーツというのはその名のとおり、複雑な機械技術の集合体であるクルマやバイクを“道具”として使うスポーツです。世の中には色々なスポーツがありますが、ここまで複雑な道具を使ってのスポーツも珍しいと思います。読者の中には「モータースポーツはスポーツではない!技術開発の戦いである!」と仰る方もいるとは思いますが、私はその考えを否定しませんし、むしろそれが大切だと思う自分もいます。しかし道具の優劣で勝負が左右されてしまう部分を一切排除し、純粋にプロドライバーがマシンを操るスゴ技を披露しあったり、メーカーやカテゴリーを超えて対決するドライバーたちの緊張感や興奮を身近に感じてもらう場があってもいいのになあ…とも思います。「日本一決定戦」の開催でモータースポーツのドライバー達が、他のスポーツと同様すばらしいアスリートであることを、幅広い方に認知していただくきっかけが出来れば、それが“運転技術”に興味を持つ人が増える結果となり、ひいては自分のクルマで“操る楽しさ”を実行してくださる方の増加に繋がる気もします。そうなればモータースポーツの存在がこれからのクルマ社会のお役に立てそうですね。
妄想はまだまだ続いていますが(苦笑)、これからも時代は進みクルマの技術開発はまだまだ続いていくでしょう。それによってこれからも技術的に素晴らしいクルマが世に出続けるはずです。そこに車を操る面白さや、その喜びを感じる「ドライバー(人)」が増え続けていれば、クルマ社会やモータースポーツの明日も“明るいぞ”と感じますが、読者の皆さんはどう思われますか?

【編集部より】
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Profile:ピエール北川 氏
1970(昭和45)年6月2日生まれ、39歳。
三重県桑名市出身。名古屋市在住。
元々は某自動車ディーラーの営業マン。
趣味でカートレースを楽しむ傍ら、マイクを握り始め実況の世界へ。
現在は鈴鹿サーキット、ツインリンクもてぎを中心にF1からカートやラリーまで、あらゆるモータースポーツを実況するフリーアナウンサー。
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