ショートステージが連続するスプリントバトル
2014年全日本ラリー選手権は、4月11日(金)~13日(日)に佐賀県唐津市を舞台に開幕を迎えた。11日(金)は市内の唐津神社に選手全員が集まり、恒例となっている交通安全の祈願を行ったのち、大勢の市民が見守る大鳥居の前からセレモニアルスタートが行われた。
今年の全日本ラリーは、改造範囲が狭い新たな車両規定の「RPN車両」が対象となるクラスを2クラス追加し、JN1クラスからJN6クラスまでの6クラスでタイトルが争われる。また、トップカテゴリーのJN6クラスには、海外ラリーで活躍していた新井敏弘や炭山裕矢が出場。4年連続チャンピオンの勝田範彦や、9度のチャンピオンを獲得している奴田原文雄とどのような戦いを展開するのか、注目を集めた。
ラリーは、2日間にわたりSS総距離69.35kmに16本のSSを設定。SS1本あたりの平均距離はシリーズのなかで最も短く、0.1秒を争うスプリント勝負が展開されるのがこのラリーの大きな特徴だ。また、タイヤの消耗が激しい路面のため、最大10本まで使用できるタイヤをどう使っていくかというタイヤ戦略も、勝敗の鍵を握っている。
[ JN6クラス ] 雨の2日目に勝田範彦が再逆転
初日のSS1で新井敏弘/竹下紀子組(スバル・インプレッサ)に6.6秒、奴田原文雄/佐藤忠宜組(三菱ランサーエボリューションⅩ)に10.2秒勝ちという鮮やかな先制パンチを放った勝田範彦/足立さやか組(スバル・インプレッサ)だが、サスペンションのセッティングを変更したSS4以降のタイムが伸びず、SS7で勝田を捉えた新井がトップ、奴田原が2番手、勝田が3番手で初日を終えた。トップの新井から3番手の勝田まで2.6秒差という僅差だ。
2日目は早朝から雨が降り、滑りやすいウェット路面へと一変する。この路面に新井がこらえきれず、SS13で痛恨のスピン。タイムを20秒近くロスしてしまい、3位まで順位を落としてしまう。一方、2日目に入り息を吹き返した勝田は、奴田原も捉え一気にトップに浮上。「今までの開幕戦のなかで、最も苦しい展開だったけど、コ・ドライバーの励ましもあり、最後まで集中して諦めずに走ったことが結果に結びついたと思う」という勝田。最終SSまで逃げ切り、9年連続となる開幕戦優勝を果たした。
[ JN5クラス ] 山口清司が開幕戦2連覇
JN5クラスは、初日は地元の筒井克彦/石田裕一組(ホンダS2000)がSS1からSS8までベストタイムを連取し、2番手の山口清司/島津雅彦組(トヨタ・カローラレビン)に19.6秒差をつけるという快走を見せたが、ギャラリーステージのSS9でコースオフしクラッシュしてしまうという波乱の展開となった。これでトップに立った山口は、2日目もトップの座を死守。昨年に続き開幕2連勝を達成した。一方、初日を2番手で折り返した松本琢史/萌抜浩史組(ロータス・エキシージ)が、2日目のSS14でドライブシャフトを折損し痛恨のリタイア。トヨタ86の石田雅之/遠山裕美子組が2位に、スバルBRZの鎌田卓麻/市野諮組が3位に入賞した。
[ JN4クラス ] 若手とベテランが好バトル
改造範囲が狭い「RPN車両」は、排気量によりJN4クラスとJN2クラスに分けられている。1600cc以上のJN4クラスには、3台のトヨタ86と2台のスバルBRZが出場してきた。
そのなかで、全日本ラリーと全日本ダートトライアルの両カテゴリーでチャンピオンを獲得しているベテランの平塚忠博/鈴木裕組(スバルBRZ)と、今回が2回目の全日本ラリー出場となる若手の竹内源樹/安東貞敏組(スバルBRZ)が、終盤まで0.1秒を競うドッグファイトを展開した。
初日は竹内がSS7でコースオフしかけて7秒近く離されてしまうが、2日目のSS10で一気に挽回。最後は平塚に1.6秒という僅差で逃げ切り、全日本初優勝を獲得した。
[ JN3クラス ] 天野智之がライバルを圧倒
昨年のJN2クラスが、クラス区分改定によりJN3クラスと呼称を変えたこのクラスは、2012年チャンピオンの天野智之/井上裕紀子組(トヨタ・ヴィッツRS G's)が、初日のSS1で2番手の岡田孝一/漆戸あゆみ組(マツダ・デミオ)に26.7秒差をつけるベストタイムでリード。
その後もJN5クラスのトップタイムを凌ぐペースで次々とベストタイムをマークし、最終的には2位の岡田に1分以上の大差をつけ、開幕戦優勝を果たした。
一方、初日は若手の石川昌平/竹原静香組(トヨタ・ヴィッツRS)が3番手で折り返すが、2日目のSS13でミッショントラブルを起こしリタイア。代わって、高篠孝介/廣島真組(スズキ・スイフト)が3位に入賞した。
[ JN2クラス ] ベテラン田中伸幸が開幕ウィナーに
[ JN1クラス ] 中村晃規が全日本2勝目を獲得
昨年のJN2クラス王者の川名賢がラックGR86のドライバーに!
昨年、JN2チャンピオンに輝いた川名賢が、今年は昨年のJN3チャンピオンカーの「ラックGR86」のステアリングを握りJN5クラスを戦う。チャンピオンドライバーとチャンピオンカーのコラボレーションだ。今まで、FF車や4WD車でラリーを走ってきた川名は、FR車でラリーに出場するのは今回が初めて。「最初はFR車をうまくコントロールできるかどうか心配でしたが、実際にテストで乗ってみたら、予想以上にコントロールしやすくて驚きました。昨年まで乗っていたヴィッツRSよりもパワー感があるし、なによりも運転していて楽しいと思ったのが第一印象ですね」と川名。
「今回は、いろいろな走らせ方を試してみました。自分のなかでは『これはいい』と思った走り方でも実際には思うようにタイムが出ていなかったり、逆に予想以上にタイムが良かったりというように、まだまだ勉強の段階ですが、今回はドライ路面とウェット路面の両方を走ることができたのが一番の収穫だったと思います」と語るように、今シーズンの序盤戦はドライビングとセッティングの方向性を見極めるというのが、川名の課題のようだ。
「コーナーの進入スピードが高すぎたり、ブレーキを踏むポイントが奥すぎたりと、ついFF車の感覚で走ってしまう時があるんです。もちろんJN5クラスでもチャンピオンを目指していきますが、まずはしっかりとFR車の特性を掴むことが先決ですね」
トヨタ86でのデビュー戦はJN5クラス4位。今シーズンは、JN2クラス王者の新たな挑戦と進化に注目だ。
クラス別順位結果(上位3クルー)
1位 |
ドライバー/コ・ドライバー 勝田 範彦/足立 さやか |
---|---|
スバル・インプレッサ | |
2位 |
ドライバー/コ・ドライバー 奴田原 文雄/佐藤 忠宜 |
三菱ランサーエボリューションX | |
3位 |
ドライバー/コ・ドライバー 新井 敏弘/竹下 紀子 |
スバル・インプレッサ |
1位 |
ドライバー/コ・ドライバー 山口 清司/島津 雅彦 |
---|---|
トヨタ・カローラレビン | |
2位 |
ドライバー/コ・ドライバー 石田 雅之/遠山 裕美子 |
トヨタ・86 | |
3位 |
ドライバー/コ・ドライバー 鎌田 卓麻/市野 諮 |
スバル・BRZ |
1位 |
ドライバー/コ・ドライバー 竹内 源樹/安藤 貞敏 |
---|---|
スバル・BRZ | |
2位 |
ドライバー/コ・ドライバー 平塚 忠博/鈴木 裕 |
スバル・BRZ | |
3位 |
ドライバー/コ・ドライバー 山岸 健/渡邉 晴子 |
トヨタ・86 |
1位 |
ドライバー/コ・ドライバー 天野 智之/井上 裕紀子 |
---|---|
トヨタ・ヴィッツRS G's | |
2位 |
ドライバー/コ・ドライバー 岡田 孝一/漆戸 あゆみ |
マツダ・デミオ | |
3位 |
ドライバー/コ・ドライバー 高篠 孝介/廣嶋 真 |
スズキ・スイフト |
1位 |
ドライバー/コ・ドライバー 田中 伸幸/藤田 めぐみ |
---|---|
スズキ・スイフト | |
2位 |
ドライバー/コ・ドライバー 高橋 悟志/箕作 裕子 |
トヨタ・ヴィッツRS | |
3位 |
ドライバー/コ・ドライバー 東 隆弥/藤田 洋文 |
マツダ・デミオ |
1位 |
ドライバー/コ・ドライバー 中村 晃規/古川 智崇 |
---|---|
マツダ・RX-8 | |
2位 |
ドライバー/コ・ドライバー 鷲尾 俊一/鈴木 隆司 |
マツダ・RX-8 | |
3位 |
ドライバー/コ・ドライバー 中西 昌人/廣瀬 香織 |
ダイハツ・ストーリア |
全日本ラリー選手権のクラス区分はこちらを参照ください。