奴田原文雄選手がシリーズチャンピオンに王手
JN5、3、1の3クラスでチャンピオン決定!
2014年全日本ラリー選手権 第7戦 RALLY HOKKAIDO レポート
国内最大規模のグラベルラリー
アジア・パシフィックラリー選手権(APRC)と併催される全日本ラリー選手権(JRC)第7戦「ラリー北海道」は、スペシャルステージ(タイムアタック区間)総距離が約200km用意されている国内最大規模のラリーだ。そのためシリーズポイントに2.0の係数が掛けられ、タイトルの行方を占ううえでも重要な1戦となる。
北海道帯広市を拠点とするラリーは、初日に十勝地方北部に位置する陸別町、足寄町に設定された11SS(129.04km)を走破。2日目には音更町、本別町、足寄町に5SS(53.24km)という、2日間合わせて16SS(182.28km)が設けられている。いずれのSSも平均スピードが高く、なかでも28.75kmのSSクンネイワは、JN6クラスでは平均スピードが100km/hを超えるという国内最速かつタフなグラベルステージだ。
サービスパークが設営される帯広市郊外の北愛国交流広場には、恒例となった「北海道・食の祭典」が開催されるほか、チャリティオークションや大食いトライアスロン、痛車&コスプレ撮影会、地元アイドル「REC」のミニライブなど数多くのイベントが開催され、今年も多くの観客が会場に足をはこんだ。
[ JN6クラス ] 奴田原文雄がシリーズチャンピオンに王手
JN6クラスは、シリーズランキングトップの勝田範彦/足立さやか組(スバル・インプレッサ)と同2位の奴田原文雄/佐藤忠宜組(三菱ランサーエボリューションⅩ)が、序盤戦から熱い火花を散らした。SS1からSS3までは奴田原が3連続ベストタイムをマークし、奴田原が勝田を8.6秒リード。だが、SS4から勝田の反撃が始まり、SS5を終えた時点で奴田原と勝田が同タイムでトップに並ぶという両者一歩も譲らぬ接戦となった。
その後、奴田原が再びトップに立つが、SS8でスローパンクチャーに見舞われ約40秒タイムロス。これで勝田が奴田原に37.0秒差のトップに立つが、今度はその勝田にアクシデントが襲いかかる。SS9でタイヤバーストした勝田は、破損したタイヤが原因でブレーキトラブルに見舞われコースオフ。その後コースには復帰するものの、順位を一気に最下位まで落としてしまった。
これでトップに立った奴田原は、その後も確実に後続との差を広げ今季4勝目を獲得、シリーズチャンピオンにも王手をかけた。2位は、ベテランの大嶋治夫/井手上達也組(三菱ランサーエボリューションⅩ)が、3位には竹内源樹/保井隆宏(スバル・インプレッサ)がそれぞれ入賞した。
[ JN5クラス ] 鎌田卓麻が初のチャンピオンを獲得
JN5クラスは、シリーズランキングトップの鎌田卓麻/市野諮組(スバルBRZ)が、SS1でベストタイムをマーク。その後もSS7までベストタイムを連取し、ラリーをリードする。その後、SS8ではリヤタイヤがバーストして約20秒タイムロスするが、それでもトップの座は譲らず。初日は、鎌田が川名賢/竹藪英樹組(トヨタ86)に58.7秒の差を付け折り返した。2日目に入っても鎌田は5本中4本のSSでベストタイムをマークして後続との差を拡大。総合でも4位という速さをみせ、今季4勝目を挙げるとともにJN5クラスのタイトルを獲得した。2位には川名が、3位には初日に電気系トラブルに見舞われた石田雅之/遠山裕美子組(トヨタ86)が入賞した。
[ JN3クラス ] 今季無敗の天野智之がチャンピオン獲得
[ JN1クラス ] 中西昌人が4年ぶりチャンピオン
JN1クラスは、中西昌人/美野友紀組(ダイハツ・ストーリアX4)と、高篠孝介/廣嶋真組(スズキ・スイフト)との師弟対決となった。かつて中西が乗っていたスズキ・スイフトを譲り受けた高篠は、ターマックラリーでは速さを見せるものの、高速グラベルラリーでは苦戦。一方、中西はグラベルラリーに強い4WDターボのストーリアX4を巧みに操り次々とSSベストタイムをマークし、高篠に1分以上のタイム差をつけ、初日を折り返す。2日目に入ると高篠がタイムを上げてくるが、初日のマージンを活かした中西が逃げ切り、今季2勝目を挙げた。この優勝により中西が、2010年以来4年ぶりにJN1クラスのシリーズチャンピオンを獲得する結果となった。
川名賢、「価値のある2位でした」
昨年、トヨタ・ヴィッツRSを駆りJN3クラスで天野智之とチャンピオン争いを展開し、このラリー北海道でタイトルを決めた川名賢。今シーズンは昨年のJN5クラスでチャンピオンを獲得したラックGR86のステアリングを託されたが、スバルBRZの鎌田卓麻とチャンピオン争いを展開した末、惜しくもこのラリー北海道で鎌田にタイトルを奪われる結果となった。
だが川名は「鎌田選手に敗れはしましたが、自分にとっては価値のある2位でした」とラリーを振り返る。「第3戦福島で優勝しましたが、その時はまだ86をどう乗りこなそうかと手探り状態のなかでの結果でした。ですが、今回のラリー北海道は結果こそ2位でしたが、86をどう走らせたらタイムが出るかという方向性はしっかりと見据えることができたラリーでもあったのです」と言う。「ラリー序盤は今までヴィッツで経験した速度域を超えるステージにうまく対応することができませんでした。特に4速以上の高速コーナーは、86のポテンシャルをフルに活かすことができなかったのです。もっとスピード感覚を鍛えなければならず、そういった面ではラリー後半で少しずつ対応することができたと思います」と川名。
さらに、「安心してアクセルを踏んでいけたのは、メカニックの皆さんがしっかりとクルマをメンテナンスしてくれたおかげだと思います。すでにチャンピオンは決まってしまいましたが、残り2戦も全開で勝負していきたいと思います」と抱負を語ってくれた。8月にはヨーロッパのラリーに武者修行に行き、スピード感覚を鍛えてきた川名。残り2戦のターマックラリーで、その成果を発揮してくれることに期待したい。
クラス別順位結果(上位3クルー)
1位 |
ドライバー/コ・ドライバー 奴田原 文雄/佐藤 忠宜 |
---|---|
三菱ランサーエボリューションⅩ | |
2位 |
ドライバー/コ・ドライバー 大嶋 治夫/井手上 達也 |
三菱ランサーエボリューションⅩ | |
3位 |
ドライバー/コ・ドライバー 竹内 源樹/保井 隆宏 |
スバル・インプレッサ |
1位 |
ドライバー/コ・ドライバー 鎌田 卓麻/市野 諮 |
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スバル・BRZ | |
2位 |
ドライバー/コ・ドライバー 川名 賢/竹藪 英樹 |
トヨタ・86 | |
3位 |
ドライバー/コ・ドライバー 石田 雅之/遠山 裕美子 |
トヨタ・86 |
1位 |
ドライバー/コ・ドライバー 天野 智之/井上 裕紀子 |
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トヨタ・ヴィッツRS G's | |
2位 |
ドライバー/コ・ドライバー 石川 昌平/石川 恭啓 |
トヨタ・ヴィッツRS | |
3位 |
ドライバー/コ・ドライバー 南野 保/ポール・サント |
マツダ・デミオ |
1位 |
ドライバー/コ・ドライバー 中西 昌人/美野 友紀 |
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ダイハツ・ストーリアX4 | |
2位 |
ドライバー/コ・ドライバー 高篠 孝介/廣嶋 真 |
スズキ・スイフト | |
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※JN4、JN2はクラス不成立
全日本ラリー選手権のクラス区分はこちらを参照ください。