悪路と悪天候が勝負に大きく影響
全日本ラリー第2戦は、愛媛県上浮穴郡久万高原町の県立自然公園大川嶺に位置する旧美川スキー場を拠点に、5月3日(土)~5日(月)の日程で開催された。ラリーは、標高の高い山々から急勾配の下り坂を麓まで下り、麓から頂上付近まで一気に上るスペシャルステージ(SS)で構成され、2日間にわたりSS走行距離68.82km(12SS)で戦われる。
この土地特有の石や岩が堆積して荒れた路面は、マシンのサスペンションやタイヤにダメージを与えやすい。そのため、別名「カーブレイクラリー」とも呼ばれているが、今年はこの荒れた路面に加え、初日は気温が20℃を超える快晴、2日目は気温が低く雨という両極端なコンディションが、このラリーをさらに難しくさせた。
初日からコースアウトやスピン、さらにタイヤバーストやサスペンションを破損させてしまうマシンが続出し、42台中15台がデイ離脱、あるいはリタイアするというサバイバルラリーとなった。また、マシントラブルやタイヤバーストなどのアクシデントは上位陣にも襲い、クラスによっては勝敗に大きく影響することとなった。
[ JN6クラス ] トップの奴田原を新井が追撃
JN6クラスは、初日のSS1で新井敏弘/竹下紀子組(スバル・インプレッサ)がタイヤをバーストさせて、いきなり41.9秒のビハインド、奴田原文雄/佐藤忠宜組(三菱ランサーエボリューションⅩ)がスタート直後にマシンの右リアをクラッシュするという波乱の展開となった。
だが、奴田原はマシントラブルを抱えながらもSS2で炭山裕矢/保井隆宏組(スバル・インプレッサ)と牟田周平/加勢直毅組(スバル・インプレッサ)を捉えトップに浮上。新井もSS2でベストタイムを奪い追撃を開始する。一方、開幕戦を制した勝田範彦/足立さやか組(スバル・インプレッサ)は、マシンセッティングが合わずタイムが伸び悩む状態。初日はトップ奴田原、3.0秒差で炭山、19.8秒差で勝田、25.2秒差で牟田、28.4秒差で新井という順位で折り返した。
雨に祟られた2日目は、SS7をフルアタックで攻める新井が3位に浮上。さらにSS10では2位に浮上し、SS11を終えトップの奴田原との差を1.5秒までに詰め寄る。濃霧に覆われた最終ステージ、新井は渾身の力で走りベストタイムを奪うが、トータルでは奴田原に0.5秒届かず。切迫した両者のバトルは、奴田原が逃げ切り今季初優勝を飾った。
[ JN5クラス ] ブーンX4対決は小倉に軍配
JN5クラスは、小倉雅俊/平山真理組と松原久/和田善明組とのダイハツ・ブーンX4対決となった。下りのSSを得意とする小倉は初日SS1、SS4、SS5でベストタイムをマーク。一方、上りのSSを得意とする松原はSS2、SS3、SS6でベストタイムを奪うという拮抗した戦いとなったが、初日は小倉が松原を4.2秒リードして2日目を迎える。
2日目に入っても両者の傾向は変わらなかったが、最も路面が悪い上りのSS10で松原が小倉を4.6秒リードしてついにトップに躍り出る。だが小倉も続く下りのSS11で松原に7.6秒差をつけるベストタイムをマークし、ふたたびトップの座を奪い取った。
シーソーゲームとなったふたりのバトルは、最終的に小倉が松原に5.2秒差をつけ決着。小倉にとっては2005年以来9年ぶりとなるクラス優勝を勝ち取った。また、3位には「急勾配のグラベル(未舗装路)をうまく攻略できなかった」という鎌田卓麻/市野諮組(スバルBRZ)が入賞した。
[ JN3クラス ] 第2戦も天野が独走態勢を築き優勝
開幕戦は天野智之/井上裕紀子組(トヨタ・ヴィッツRS)が独走態勢で優勝したJN3クラス。第2戦は、岡田孝一/漆戸あゆみ組(マツダ・デミオ)がSS1で駆動系トラブルに見舞われデイ離脱、南野保/織田千穂組(マツダ・デミオ)がSS5でコースアウトしてリタイア、石川昌平/竹原静香組がSS10でサスペンショントラブルで離脱するという荒れた展開となる。
そんななかで、天野はSS1からベストタイムを連発。初日はJN5クラス優勝の小倉を上まわるペースで折り返し、「ハンドリングに違和感を感じた」という2日目はペースを下げるものの、2位以下に4分近い大差をつけ今季2連勝を飾った。
2位には昨年のJN1クラスチャンピオンの松岡竜也/縄田幸裕組(スズキ・スイフト)が、3位には今季三菱コルトからマツダ・デミオに乗り換えた藤田幸弘/藤田彩子組が入った。
[ JN1クラス ] 宇田が昨年に続き2連覇を達成
ダイハツ・ストーリアX4とマツダ・デミオの対決となったJN1クラスは、昨年のこのラリーを制した宇田圭佑/石川恭啓組(マツダ・デミオ)が、SS1で2番手タイムの中西昌人/美野友紀組(ダイハツ・ストーリアX4)に10.6秒差をつけるベストタイムをマーク。一方、SS2は中西が宇田に7.1秒差のベストタイムをたたき出し反撃をみせる。
しかし、その中西がSS4でエンジントラブルに見舞われてリタイア。これで独走態勢となった宇田はギャラリーステージ以外すべての林道SSでベストタイムをマークして優勝。昨年のこの大会に続き2連覇を達成した。
また、2位には「今年は優勝は無理をせずに確実に完走してポイントを獲得し、シリーズチャンピオンを狙う」という鷲尾俊一/佐竹尚子組が入賞し、その言葉どおりにシリーズポイントトップに立った。 。
ラックGR86、グラベルの洗礼を浴びるも次戦に期待
トヨタ・ヴィッツRSを駆り、昨年のJN2クラスチャンピオンを獲得した川名賢が、今季は昨年のJN3クラスチャンピオンカーのラックGR86のステアリングを握りJN5クラス(昨年のJN3クラス)に参戦し、シリーズ上位を狙う。川名にとってトヨタ86で初のグラベルラリーとなる今回の大会は、苦戦はしたものの、次戦以降に向けて学ぶところが多かったという。
「ターマック(舗装路)以上に難しいラリーでした。特に急勾配のSSではコーナリングアプローチでクルマの姿勢をうまく作ることができず、ステアリングに頼って曲がるコーナーも多かったですね。しかも、2日間で2回もコースアウトしてしまいました。なんとかコースに復帰することはできましたが、2回ともコースに復帰するまでに時間がかかってしまい、残念ながら優勝争いに加わることはできませんでした」とクラス8位で終わる結果となった。
それでも、「2日目はグラベルでトヨタ86をどう走らせたらタイムが出るのか!? といったコツを少し掴めたと思います。第3戦の福島は僕にとって得意なフラットな路面も多いので、少しでもポジションアップできるように頑張ります」と、しっかりと手応えを掴むことができたようだ。
「まずはクルマの挙動を掴むことが一番の課題なので、そういった点では第1戦のターマック、第2戦のグラベルは僕にとっても貴重な経験を得られたラリーでした」と川名。第2戦から第4戦までのグラベル3連戦で、さらなる進化を目指す。
クラス別順位結果(上位3クルー)
1位 |
ドライバー/コ・ドライバー 奴田原 文雄/佐藤 忠宜 |
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三菱ランサーエボリューションⅩ | |
2位 |
ドライバー/コ・ドライバー 新井 敏弘/竹下 紀子 |
スバル・インプレッサ | |
3位 |
ドライバー/コ・ドライバー 勝田 範彦/足立 さやか |
スバル・インプレッサ |
1位 |
ドライバー/コ・ドライバー 小倉 雅俊/平山 真理 |
---|---|
ダイハツ・ブーンX4 | |
2位 |
ドライバー/コ・ドライバー 松原 久/和田 善明 |
ダイハツ・ブーンX4 | |
3位 |
ドライバー/コ・ドライバー 鎌田 卓麻/市野 諮 |
スバル・BRZ |
1位 |
ドライバー/コ・ドライバー 天野 智之/井上 裕紀子 |
---|---|
トヨタ・ヴィッツRS G's | |
2位 |
ドライバー/コ・ドライバー 松岡 竜也/縄田 幸裕 |
スズキ・スイフト | |
3位 |
ドライバー/コ・ドライバー 藤田 幸弘/藤田 彩子 |
マツダ・デミオ |
1位 |
ドライバー/コ・ドライバー 宇田 圭佑/石川 恭啓 |
---|---|
マツダ・デミオ | |
2位 |
ドライバー/コ・ドライバー 鷲尾 俊一/佐竹 尚子 |
ダイハツ・ストーリアX4 | |
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※JN2・JN4はクラス不成立。
全日本ラリー選手権のクラス区分はこちらを参照ください。