猛烈なホコリが選手の視界を奪う
全日本ラリー選手権第4戦が、7月4日(金)~6日(日)に北海道洞爺湖周辺で開催された。第2戦から続くグラベルラリー3連戦のラストイベントでもあるこのラリーは、全9戦で争われる今年のシリーズ前半戦を締めくくり、後半戦の戦いを占う上でも重要な1戦となる。
4日(金)の夕方からスタートするラリーは、サービス会場の洞爺湖文化センターに隣接する砂防ダムに設置された特設コースのスーパーSSを1本走り、本格的なラリーは翌日の5日(土)から始まる。その5日(土)には、洞爺湖北西部から北東部にかけて 3本の林道ステージを2回ループし、特設コースのスーパーSSを2回走行。6日(日)は洞爺湖西部に舞台を移し、3本の林道ステージとスーパーSSを2回ループするという設定だ。いずれの林道ステージも路面は固く締まっているが、時には後続のドライバーの視界を奪ってしまうほど、猛烈なホコリが舞い上がっていた。
一方、3日間合わせて5回走行する特設ステージのスーパーSSは、走行を重ねるごとに路面状況が悪化。ギャップや路面の下に隠れていた岩が露出し、わずか700mのステージながらも勝敗の行方に大きく影響するステージともなった。
[ JN6クラス ] 新井敏弘がトップを一度も譲らぬ快走
JN6クラスは、金曜日のSS1を制した新井敏弘/竹下紀子組(スバル・インプレッサ)が、土曜日の林道ステージでも好走を見せ、確実に後続とのリードを広げていく。その新井を追いかけたのが、ディフェンディングチャンピオンの勝田範彦/足立さやか組(スバル・インプレッサ)だ。SS3でベストタイムを奪い、一時はトップの新井に2.8秒差まで迫る。だが、その後は新井が勝田とのタイム差を15.2秒差にまで広げ、初日を折り返す。
一方、2連勝中の奴田原文雄/佐藤忠宜組(三菱ランサーエボリューションⅩ)は、路面の掃除役となった1ループ目のタイムが伸び悩み28.4秒差の3番手。2日目に入ってもタイムが伸び悩み、今回は3位でラリーを終えた。新井と勝田に絞られた優勝争いは、2日目に入っても新井のペースは落ちず、最終的には勝田に22.3秒の差を付けた新井が今季初優勝を飾った。
[ JN5クラス ] 鎌田卓麻がシリーズトップに浮上
今年は第3戦まで毎回ウイナーが変わる激戦区となっているJN5クラスは、初日のSS3でトップに立った鎌田卓麻/市野諮組(スバルBRZ)が、その後は一度もトップを譲ることなく、今季初優勝を挙げた。第3戦終了時では、シリーズポイントトップの川名賢と同ポイントながらも未勝利のためシリーズ2位だった鎌田は、今回の優勝でシリーズポイントでも単独トップに浮上した。
2位には、筒井克彦/石田裕一組(三菱ミラージュ)が、今季初表彰台となる入賞。また、初日のSS2でサスペンションを痛め、ペースを上げることができなかった川名賢/永山総一郎(トヨタ86)が2日目に挽回。SS15で山口貴利/山田真記子組(ダイハツ・ブーンX4)を捉え、3位に入賞した。
[ JN3クラス ] 天野智之が開幕戦から4戦連続優勝
今年は開幕から2位に大差をつけて3連勝を挙げている天野智之/井上裕紀子組(トヨタ・ヴィッツG's RS)だが、今回のラリーは石川昌平/竹原静香組(トヨタ・ヴィッツRS)がSS3でトップに立つ健闘を見せる展開となった。
その後、SS4では天野が再びトップを奪い返すが、初日のSS6を終えて天野と石川の差は2.0秒と石川が善戦。優勝争いは天野と石川の2台のヴィッツRSに絞られたが、SS7以降にペースを上げた天野が、3本のSSで22.5秒まで差を広げ初日を折り返す。
2日目は、石川が序盤にサスペンションを痛め天野の独走を許したものの、2位のポジションをしっかりとキープ。初日トップの天野は、最後まで手綱を緩めず今季負け知らずの4連勝を飾った。
[ JN2クラス ] 上位陣を次々とアクシデントが襲う
JN2クラスは、洞爺湖周辺をホームコースとする田中伸幸/藤田めぐみ組(スズキ・スイフトスポーツ)が、初日からライバルを圧倒する速さで独走する展開となった。
だが、2日目のSS13でドライブシャフトを折損してコース上にストップ。ギャラリーステージのSS13はスーパーSSのため、規定により3分のペナルティを受けて再出走することができたが、ポジションを3位まで落としてしまう。
このアクシデントにより高橋悟志/箕作裕子組(トヨタ・ヴィッツRS)がトップに浮上。その高橋を寺川和紘/石川美代子組(マツダ・デミオ)が追う展開となったが、SS15を走り終えて2.9秒差まで追い上げていた寺川がまさかのリタイア。高橋がそのまま逃げ切り今季初優勝を遂げ、田中は2位に入賞するという結果となった。
[ JN1クラス ] 宇田圭佑が念願の洞爺初制覇
JN1クラスは、第2戦で優勝した宇田圭佑/石川恭啓組(マツダ・デミオ)が、初日で築いたリードを2日目も守り切り、今季2勝目を挙げた。
大学生時代を北海道・室蘭市で過ごした宇田にとって、洞爺湖周辺はラリーの腕を鍛えた場でもあり、いわば「第二の故郷」とも呼べる場所だ。そのためこの大会での優勝を目指してきた宇田だが、過去5年間はリタイア続きという結果だった。特に昨年と一昨年は、トップを快走しながらのリタイア。その悔しさを晴らす優勝となった。
また、2位には中西昌人/美野友紀組(ダイハツ・ストーリアX4)が入賞。シリーズポイントでは、今回リタイアに終わった鷲尾俊一/佐竹尚子組(ダイハツ・ストーリア)を抜き中西がトップに立った。
次世代ドライバーの活躍
JN6クラスの新井敏弘、JN5クラスの鎌田卓麻、JN2クラスの高橋悟志という、今季の活躍が期待されながらも第3戦まで未勝利だった選手たちが優勝を遂げる結果となった第4戦。この結果により、中盤戦以降のシリーズチャンピオン争いが混沌となることは必至だが、そのなかで次世代を担う若手ドライバーたちの健闘が光る一戦ともなった。
ラックGR86を駆り、第3戦でJN5クラス初優勝を遂げた川名賢は、SS2でいきなりサスペンションを痛めるとともにタイヤがバーストしてしまい、ラリー序盤で優勝争いから脱落してしまった。だが、「順位が落ちても、集中力が途切れることはありませんでした。逆に、練習で86をどう走らせたら速いのかという方向性が見えてきたので、その走りを試してみて、少しでも順位を上げようと気持ちを切り替えました」という川名は、初日のSS9でこの日初のベストタイムをマーク。さらに2日目は8本のSS中5本のSSでベストタイムという速さを披露。惜しくもデイトップポイントは鎌田に3.3秒届かず逃したが、この粘りが3位入賞の原動力となったのは確かだ。「特にデイ2で5本ベストタイムを奪えたのは、自信に繋がりました」という川名。中盤戦以降、巻き返しに期待がかかる価値ある3位入賞だった。
一方、JN3クラスの石川昌平も、初日の序盤戦は天野智之と互角の勝負を展開した。「去年のデータと比べると、自分自身のタイムは上がっている。石川選手が確実に速くなってきていると思う」と天野。石川も、「自分でも昨年よりも乗れていると思います」と、自分自身のドライビングテクニックの進化を実感している。
20代で全日本ラリーJN2チャンピオンを獲得し、30歳になった今年はJN5クラスに参戦する川名。22歳で全日本デビューを果たし、ヴィッツRSに乗り2年目の石川。中盤戦以降、彼ら次世代ドライバーの活躍が、タイトル争いにどう影響してくるか、注目のシーズンとなりそうだ。
クラス別順位結果(上位3クルー)
1位 |
ドライバー/コ・ドライバー 新井 敏弘/竹下紀子 |
---|---|
スバル・インプレッサ | |
2位 |
ドライバー/コ・ドライバー 勝田 範彦/足立 さやか |
スバル・インプレッサ | |
3位 |
ドライバー/コ・ドライバー 奴田原 文雄/佐藤 忠宜 |
三菱ランサーエボリューションⅩ |
1位 |
ドライバー/コ・ドライバー 鎌田 卓麻/市野 諮 |
---|---|
スバルBRZ | |
2位 |
ドライバー/コ・ドライバー 筒井 克彦/石田 裕一 |
トヨタ86 | |
3位 |
ドライバー/コ・ドライバー 川名 賢/永山 聡一郎 |
トヨタ86 |
1位 |
ドライバー/コ・ドライバー 天野 智之/井上 裕紀子 |
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トヨタ・ヴィッツRS G's | |
2位 |
ドライバー/コ・ドライバー 石川 昌平/竹原 静香 |
トヨタ・ヴィッツRS | |
3位 |
ドライバー/コ・ドライバー 岡田 孝一/漆戸 あゆみ |
マツダ・デミオ |
1位 |
ドライバー/コ・ドライバー 高橋 悟志/箕作 裕子 |
---|---|
トヨタ・ヴィッツRS | |
2位 |
ドライバー/コ・ドライバー 田中 伸幸/藤田 めぐみ |
スズキ・スイフトスポーツ | |
3居 |
ドライバー/コ・ドライバー 二ツ川 英明/遠藤 誠 |
スズキ・スイフトスポーツ |
1位 |
ドライバー/コ・ドライバー 宇田 圭佑/石川 恭啓 |
---|---|
マツダ・デミオ | |
2位 |
ドライバー/コ・ドライバー 中西 昌人/美野 友紀 |
ダイハツ・ストーリアX4 | |
3位 |
ドライバー/コ・ドライバー 川村 貴宣/中西 貴晃 |
ダイハツ・ストーリアX4 |
※JN4はクラス不成立
全日本ラリー選手権のクラス区分はこちらを参照ください。