全日本ラリー第3戦 完走率50%以下のサバイバル
奴田原文雄が雨のステージを制し今季2連勝!
2014年全日本ラリー選手権 第3戦 がんばろう!福島MSCCラリー2014 レポート
3戦連続のウエットコンディション
九州で開幕を迎えた全日本ラリー選手権は第2戦で四国へと渡り、6月6日?8日に開催された第3戦が、今シーズン初の本州での開催となる。福島県東白川郡棚倉町に位置するスポーツリゾートホテル「ルネサンス棚倉」を拠点とするラリーは、第2戦に引き続きグラベル(未舗装路)ステージが舞台となる。
初日のステージは、棚倉町から約60km東に移動したいわき市周辺に設定。同市内のリゾート施設「スパリゾートハワイアンズ」にはリモートサービスが設けられ、フラガールの華麗なフラダンスで選手を送り出すセレモニアルスタートも行われた。また、棚倉町周辺にステージが設定された2日目は、昨年までラリーパークが設けられていた鹿角平観光牧場にギャラリーSSが新設され、多くのラリーファンが来場。広大な牧草地のアクセス道を豪快に攻めるラリーカーの走りを満喫した。
舞台となる福島県南部は、例年より1週間早い6月5日に梅雨入りが発表され、初日、2日目ともあいにくのウエットコンディション。サスペンションや駆動系に負担がかかりやすいうねりのある路面状況に加え、滑りやすい泥まじりの路面が選手を苦しめ、2日間合わせて52台中の28台がデイ離脱またはリタイアというサバイバル戦となった。
[ JN6クラス ] 奴田原文雄が初日のリードを守る
JN6クラスは、第2戦を制した奴田原文雄/佐藤忠宜組(三菱ランサーエボリューションⅩ)が初日のSS1からベストタイムを重ね、SS3を終えた時点で2番手の新井敏弘/竹下紀子組(スバル・インプレッサ)に11.1秒、3番手の勝田範彦/足立さやか組(スバル・インプレッサ)に23.1秒の大量リードを築き上げる。
一方、「路面にタイヤが合っていなかった」と言う新井は、SS3終了後のサービスでフロントタイヤをウエット用に交換。この作戦が功を奏し、SS4で奴田原との差を一気に4.3秒差まで短縮。さらにSS5では奴田原を逆転し、3.5秒差のトップへと躍り出る。だが、続くSS6で、スタート直後に新井のマシンにミッショントラブルが発生し、ここでストップ。トップに立ちながらも無念のデイ離脱となってしまった。新井のデイ離脱により再びトップに返り咲いた奴田原は、2番手に浮上した勝田に対し27.4秒までタイム差を広げ、初日を折り返す。
ハイスピードステージで構成された2日目は、2番手の勝田が奴田原との差を詰めてくるが、奴田原が初日のマージンを守り切って優勝。第2戦に続き2連勝を遂げるとともに、昨年に続き同ラリー2連覇を達成した。2位には勝田、3位には炭山裕矢/保井隆宏組(スバル・インプレッサ)が入賞した。
[ JN5クラス ] 13台中10台がリタイアという荒れた展開に
開幕戦優勝の山口清司/島津雅彦組(トヨタ・カローラレビン)、第2戦優勝の松原久/和田善明組(ダイハツ・ブーンX4)がレッキ中のトラブルでリタイア、シリーズランキングトップの鎌田卓麻/市野諮組(スバルBRZ)が初日のSS1でマシントラブルに見舞われデイ離脱と、ラリー序盤から波乱の展開となったJN5クラス。その後も、SS1で2番手に付けていた木下聡/佐瀬拓野組(ホンダ・シビック)、3番手の筒井克彦/石田裕一組(三菱ミラージュ)、4番手の石田雅之/遠山裕美子組(トヨタ86)がSS3までにマシントラブルやコースアウトで戦線離脱してしまうという異例のサバイバル戦となった。
さらに、SS5では、2番手の川名賢/永山総一郎組(トヨタ86)に50秒以上の差を付けトップを快走していた上原利宏/郷右近孝雄組(ホンダ・シビック)までもが、駆動系トラブルのためリタイアという展開に。「路面コンディションが厳しかったので、最後までマシンを労りながら走りました」と言う川名が、しっかりと走り切り今季初優勝。クラス完走わずか3台という厳しいラリーを、クレバーな走りで制した。
[ JN3クラス ] 天野智之が土付かずの3連勝
開幕戦と第2戦を圧倒的な速さで制した天野智之/井上裕紀子組(トヨタ・ヴィッツG's RS)が、この第3戦でもライバルを圧倒する走りを見せた。初日、2番手の唐釜真一郎/松浦俊明組(マツダ・デミオ)に1分以上の差をつけて折り返した天野は、2日目に入っても手綱を緩めず、3連勝を達成した。
また、最終SSを2番手でフィニッシュした唐釜は、最終TCのルネサンス棚倉へ戻る途中にクラッチトラブルが発生し、リエゾン区間でストップ。結局、最終TCまで戻ることができず、まさかのリタイアとなってしまった。その結果、2位は石川昌平/石川恭啓組(トヨタ・ヴィッツRS)、3位には全日本初出場の猪俣寿洋/前島俊彦組(スズキ・スイフト)という20代ドライバーがそれぞれ入賞した。
[ JN2クラス ] 高速ステージで田中伸幸が逆転
改造範囲が最も狭い1600cc以下のRPN車両を対象としたJN2クラスは、開幕戦以来2戦ぶりにクラス成立となった。グラベルラリーとしては初めてのクラス成立となる今回は、ターマックラリーの開幕戦と同様に田中伸幸/藤田めぐみ組(スズキ・スイフト)と高橋悟志/箕作裕子組(トヨタ・ヴィッツRS)が激しいバトルを展開した。
ツイスティなコーナーが多いSSを中心に構成された初日は、高橋が一時は17.8秒のリードを築くが、初日の最終ステージとなるSS8でエンジンハーネスの一部が切断するというアクシデントに見舞われ、約10秒のタイムロスを喫してしまう。それでも6.7秒差のトップで折り返すが、高速ステージを中心に構成されている2日目に田中が逆襲。SS10で高橋を逆転した田中は、最終的には18.0秒差までタイム差を広げ、今季2勝目となる逆転優勝を奪った。
[ JN1クラス ] 中西昌人が今季初優勝を遂げる
中西昌人/美野友紀組(ダイハツ・ストーリアX4)と鷲尾俊一/佐竹尚子組(ダイハツ・ストーリアX4)とのベテラン対決となったJN1クラスは、初日のSS1とSS2で鷲尾がベストタイム、SS3で中西がベストタイムと激しい攻防を展開するが、SS5で鷲尾がバーストし、そこで一気に50秒近くタイムロスしてしまう。
2日目は、中西のマシンにクラッチトラブルが襲うが、なんとか最後まで走り切り今季初優勝を獲得。「第2戦はトップ争いを展開しながらエンジントラブルのためリタイアしてしまいました。今回はその時のリベンジを果たすことができました」と中西。一方、ターマックラリーをマツダRX-8、グラベルラリーをダイハツ・ストーリアX4で戦う鷲尾は、3戦連続となる2位でフィニッシュ。シリーズポイントトップの座を守り切った。
ラックGR86が待望の今季初優勝
クラス13台中10台がリタイアするという大荒れの展開となったJN5クラスで、ラックGR86を駆る昨年のJN2クラスチャンピオンの川名賢が、ついに86での全日本初優勝を遂げた。
「決してドライバーの速さで勝ったわけではなく、いわゆる“タナボタ優勝”であることは間違いないと思うのですが、それでもやっぱり優勝することができてうれしいですね。なによりも、こういったチャンスをしっかりと結果に結びつけることができたことが一番うれしい。マシントラブルが続出した荒れた展開のラリーでしたが、そのなかで86をしっかりと整備していただいたメカニックの皆さんに感謝したいと思います。今回の優勝は、チーム力の優勝でもあると思います」と、優勝を喜ぶ川名。JN5クラスでの初優勝は、大きな自信にも繋がったという。
「86を、昨年僕が乗っていたヴィッツRSのように自由自在にコントロールするためには、正直もう少し時間がかかると思います。そういった面では、今回のラリーはウエット路面のなかに滑りやすい路面、轍ができやすい路面、バンピーな路面など様々な路面があったので、ドライビングのスキルアップになったことは確かです。第2戦の久万高原ラリーの時よりも、積極的にマシンをコントロールすることができましたね。特に2日目の高速ステージでのフィーリングが良く、高速ステージが多い第4戦の洞爺が今から楽しみです」と川名。「今度はタナボタではなく、ドライバー自身の速さで優勝したい」という次の目標に向け、更なるスキルアップを図っている。
クラス別順位結果(上位3クルー)
1位 |
ドライバー/コ・ドライバー 奴田原 文雄/佐藤 忠宜 |
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三菱ランサーエボリューションⅩ | |
2位 |
ドライバー/コ・ドライバー 勝田 範彦/足立 さやか |
スバル・インプレッサ | |
3位 |
ドライバー/コ・ドライバー 炭山 裕矢/保井 隆宏 |
スバル・インプレッサ |
1位 |
ドライバー/コ・ドライバー 川名 賢/永山 聡一郎 |
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トヨタ・86 | |
2位 |
ドライバー/コ・ドライバー 木村 謙治/矢柳 静一郎 |
スバル・インプレッサ | |
3位 |
ドライバー/コ・ドライバー 二瓶 崇/伊藤 尚吾 |
ホンダ・インテグラ |
1位 |
ドライバー/コ・ドライバー 天野 智之/井上 裕紀子 |
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トヨタ・ヴィッツRS G's | |
2位 |
ドライバー/コ・ドライバー 石川 昌平/石川 恭啓 |
トヨタ・ヴィッツRS | |
3位 |
ドライバー/コ・ドライバー 猪股 寿洋/前島 俊彦 |
スズキ・スイフト |
1位 |
ドライバー/コ・ドライバー 田中 伸幸/藤田 めぐみ |
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スズキ・スイフト | |
2位 |
ドライバー/コ・ドライバー 高橋 悟志/箕作 裕子子 |
トヨタ・ヴィッツRS | |
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1位 |
ドライバー/コ・ドライバー 中西 昌人/美野 友紀 |
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ダイハツ・ストーリアX4 | |
2位 |
ドライバー/コ・ドライバー 鷲尾 俊一/佐竹 尚子 |
ダイハツ・ストーリアX4 | |
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※JN4はクラス不成立
全日本ラリー選手権のクラス区分はこちらを参照ください。