―昨年は完走、クラス6位という結果でした。ルーキーコンビとしては上出来では。
フランス人のメカニックが冗談で言うんです。「マサ(現地での寺田さんのニックネーム)、完走すると思わなかったよって(笑)」。ゴールした時にチーフメカのフィリップ・シャロワも目がウルウルしてましたよ。チームみんなが喜んでくれてとても嬉しかったですね。
―2号車は1号車のサポートということですが、具体的にはどんなことをされているんですか。
簡単に説明すると、アフリカで開催されていた時代は、スペアパーツを積んだトラックが競技車の後ろを追いかけていたんです。ただ、南米に移ってからは、仮に競技用トラックで追いかけたとしても角度が付きすぎて危険なんです。2号車にはスペアパーツを積んであり、1号車と2号車は同じクルマですから、1号車に不具合が生じたら2号車のパーツを移植したりするんです。
―そのための2号車ということですね。
たとえば、1号車で万が一、機械的な不具合があったら先にパーツを外して停まっていてもらうんです。そして、私たちが30分か1時間、遅れて到着する。それからパーツを交換して1号車はレースへと復帰するわけです。レース中はメカニックなどは車両に触れられませんが、競技者同士は助け合えますから。だからこそ、2号車は生き延びないといけないんです。
―砂漠でのパーツ交換など、メカニックが乗っていないので作業は大変そうですね。
えぇ。1号車と2号車のドライバーとナビゲーター、合計4名も今年はフランスや日本でメカニカルトレーニングを行い万全の準備をしています。
―ナビゲーターの経験もある寺田さんからみて、田中さんはどんなナビゲーターだと感じますか。
アランのようなベテランナビゲーターでも、間違いは起こしてしまうそうです。では、間違えた後をどうするのかが重要になる。田中くんはコースを間違えてしまった時の補正が素晴らしいんです。これは天性のものだと感じていますよ。
―次の目標を聞かせて下さい。
2号車として1号車をサポートすることはもちろんですが、去年は1号車とのタイムギャップが大きかったので、もうちょっとタイムを詰めたいですね。今年のファラオでもそうですが、ある程度、硬い路面を走ることに関しては監督にも、認めてもらえるレベルまではレンジが狭まっているんです。ただ、砂丘に入ると1号車との差がドーンと開いちゃうんです。ここはドライバーの経験差が出るんです。僕はチリの砂丘はまだおっかなびっくりなので、その点は克服していきたいですね。
―まもなく本番ですが、チームの状態をどう感じてますか。
チームの雰囲気は最高に良いです。たとえば、私が練習走行していると、三橋くんがわざわざ練習場に来て運転の仕方を教えてくれるんです。普通、同じチームのドライバー同士でもそこまではなかなかありませんから。今はチームがひとつにまとまっていて、素晴らしい状態でチャレンジできると感じています。
―去年が初めてのラリーだったんですよね。
まったくの初めてでした。難しいコース、路面などを見て、おもわず面喰らって思考が一瞬止まることもあり、ナビゲーションが上手くできない時もありましたが、この1年の経験はとても学ぶことが多かったです。
―前回のレース前に比べて余裕が出来ているのでは。
少しはあります。想像できる要素がありますから。行ったことがある都市ですとイメージが湧きますから、ゼロよりは1でも2でも経験があるので、今年はまだ前回より落ち着いていると感じます。
―ゴール地点がチリになるなどコースが新しくなりました。事前にナビゲーターができることはどんなことですか。
私がしていることは、たとえばグーグルアースなどで、石なのか、砂なのかなど路面状況を把握して自分の中でイメージを作っておくことです。実際にもらうルートブックと事前情報を結びつける作業ですね。
―今年のファラオラリーを終えて得たことはどんなことですか。
去年は前日のルート予習に時間をかけましたが、睡眠時間が短くなると集中が続かないことを去年、とてもよくわかりました。ですので、今年のファラオでは予習の時間、睡眠の時間を明確にして挑みました。実践してみると集中力もやはり持続時間が長いんですね。そういう意味では、ルート予習のやり方は確立出来たと思います。
―再び寺田さんとコンビを組んで、2号車を走らせる日が近づいてきましたね。
寺田さんは2号車としての命題である、生き残ることに長けたクルマの走らせ方をしてくれるドライバーです。 ケアの仕方が非常に上手いんですよね。私も1号車をサポートするという2号車の役割を、ナビゲーターとしてしっかりと果たしたいですね。