若者のクルマ離れなんてどこ吹く風!

スーパー耐久シリーズ2012の第3戦SUGO3時間レースが、5月20日(日)快晴のスポーツランド菅生(宮城県柴田郡村田町)にて、“復興元年の幕開けを飾れ”の勢いを感じるフレーズのもと開催された。折から仙台市内は“青葉祭り”が開催中で大変な賑わい。仙台近郊の同サーキットにも、“クルマ好き”のお客様が多数来場された。

ヨーロッパの山間部を思わせる難コースのSUGOで、コースアウトが頻発し大激戦となった3時間の決勝レースは、1号車のメルセデス(PETRONAS SYNTIUM SLS AMG GT3 、谷口/ Hairuman/ Aug組)の3連勝で幕を閉じた。

今回は、小さい頃に宿ったクルマ好きマインドを今もなお育て続け、熱いハートを持つクルマ好きの若者や、地元復興のために手作りで貢献しようと願う若者から、筆者がパワーをもらったエピソードをご紹介する。

  • いよいよ3時間耐久レースがスタート いよいよ3時間耐久レースがスタート
  • 24号車のピットで学ぶ日産自動車大学校の学生たち 24号車のピットで学ぶ日産自動車大学校の学生たち
  • ホスピタリティで学ぶ日産自動車大学校の学生たち ホスピタリティで学ぶ日産自動車大学校の学生たち

「現場最前線で学ぶ」(GT3/24号車/スリーボンド日産自動車大学校GT-R)

今回よりGT3クラスに本格参戦している、24号車スリーボンド日産自動車大学校GT-R。そのピットやホスピタリティには、たくさんの学生が忙しく働いている。日産自動車大学校横浜校から19名、栃木校から39名の学生が、レースの現場で“学ぶ”ことを教育のプログラムの一環として参加している。参加者は希望者からの選抜メンバー。学業もおろそかにしてはならないという事で、成績優秀であることも選抜の条件とのことだ。

横浜校の学生を軸に、全国の日産自動車大学校の学生が順番に参加するが、学生同士の引き継ぎも行い、チーム側とも連携を取って人員配置されている。

学生たちは、緊張の表情を浮かべながらも、ベテランメカニックやエンジニアの指導に、真剣に耳を傾けていた。

GT3クラスに今回より本格参戦した24号車スリーボンド日産自動車大学校GT-R
GT3クラスに今回より本格参戦した24号車スリーボンド日産自動車大学校GT-R

「クルマ好きにしてくれた自動車メーカーへ恩返しをしたい」(GT3/24号車/スリーボンド日産自動車大学校GT-R)

学生チームのリーダーを勤める杉本君は、現在4年生。自動車メーカーに就職が内定している。

ピット内では、プロのメカニックに混じり、彼のキビキビした動きが目に留まる。ピットの中は常に刺激的で、耐火スーツを自分も着ることで、責任を感じ身の引き締まる思いとのこと。与えられた仕事を1つクリアすると、また1つ課題が増えると、遣り甲斐を見出していた。

小さい頃からクルマが大好きで、ハコスカなどが好きだった父親の影響で日産車の大ファン。将来の夢は、「自分をクルマ好きにしてくれたメーカーへの恩返しの意味で、自分がクルマ好きになったのと同様に、今の子どもたちが好きになってくれるクルマ作りに従事したい」と語る。大変礼儀正しく、将来の夢に着実に近づいている杉本君を応援したい。

学生のリーダーとして頑張る杉本君
学生のリーダーとして頑張る杉本君

「お客様へのおもてなしを学ぶ」(GT3/24号車/スリーボンド日産自動車大学校GT-R)

同プロジェクトで、レースマネージメントを学ぶ寺川君は現在3年生、クルマの整備を覚えるために、同校に入学。今回は、学生ではそう簡単に得ることのできない貴重なレース体験をしたいと参加した。

レースに参戦するチームにとって、ドライバー、メカニックのみならず、広報、プロモーション、スポンサーのおもてなし等の「レースマネージメント」も重要な仕事である。寺川君のチームは、座学でレースマネージメント全体を学び、現場ではホスピタリティの設営から、スポンサーゲストの受け入れ、食事のサーブまで何でもこなす。大事なスポンサーゲストをもてなす場所で、緊張もするが、それを表に出さないようにしていると笑顔で語る。

前回の研修に参加したメンバーから、「わからない事はすぐ聞く、気がついた事はすぐやる、曖昧な気持ちで作業をせず、判断できない事は聞いて確信を持ってから作業する」と、大人顔負けのアドバイスを受けたそうだ。すでに自動車ディーラーに内定が決まっているが、今回の経験で、何かレースにも携われたらと新たな意欲も出たようだ。

ピットウォークでは、クルマ好きの学生獲得の為に、学校案内を額に汗して配布していた。

ピットウォークで学校案内を配布する寺川君
ピットウォークで学校案内を配布する寺川君

「何事も全力で!クルマのために生きてます!」(ST-5/55号車/姫神ガジェット吉田山JMC VITZ)

VITZでST-5クラスに参戦する咲川選手は、現在スーパー耐久唯一の女性ドライバー。3年間のドリフト経験から、レースへ転向したキャリアを持つ彼女は、自分の貯金をはたいて、2009年マーチカップへシリーズ参戦した話だけでも脱帽だ。ドリフトからレースへの転向は、女性初。昨年のスーパー耐久最終戦で、ST-4クラスへスポット参戦。今季はST-5クラスでVITZを駆り、念願のシリーズ参戦を果たした。もちろん営業も自ら行い、少しずつ彼女を応援する人も増えてきていることに日々感謝している。ひとりでレースを始め、険しい道を駆け上がって来たので、「根性はあります!恥もミスも覚悟!」と語る。

スーパー耐久で、女性の年間エントリーはここ10年間いなかったとのこと。バイトで参戦資金を稼ぎ、モデル業もこなすが、何を我慢してでも、すべてを節約してでもレースに出たい!いくつになっても乗り続けたいと語る。サーキットで、彼女に会うのが楽しみの1つになった。ぜひ、応援していきたい!

スーパー耐久紅一点、咲川めり選手
スーパー耐久紅一点、咲川めり選手

「地元から元気を!」地元で復興支援活動を行う“ガーネット宮城”

スポーツランド菅生のお膝元、宮城県柴田郡村田町の地元の方々により、復興市が開催された。地場野菜や地元名産品などの物産の販売を行っていたが、その中で、“ガーネット宮城”という復興支援活動を行う団体も出展。ハワイアングッズの販売や募金活動を行っていた。

自称“宮城県復興大使”を名乗る代表の澁谷さんは、震災直後の昨年4月1日から支援活動を開始したそうだ。支援物資やボランティア団体のコーディネート、生活支援の為の内職の企画、仮設住宅でのコミュニティの形成など、被災者の手となり足となり、心のケアまでもフォローしている。震災後、時間が経過するに連れ、周囲の関心が低くなって来ている事を大変危惧していたが、彼女は、精力的に変わらず支援を続けている。そんな彼女からも元気をもらった菅生だった。

○ガーネットみやぎホームページ http://garnet-m.com/

復興市で手作りグッズの販売と募金活動
復興市で手作りグッズの販売と募金活動

スーパー耐久第3戦 SUGO3時間耐久レース結果

今大会は今シーズン最多の45台がエントリー。13時40分スタートの決勝レース(出走43台)は、オープニングラップで数台がクラッシュし、セイフティ・カーが導入されるなど、波乱の展開となった。

何度もトップが入れ替わる大混戦は、1号車メルセデスPETRONAS SYNTIUM SLS AMG GT3(谷口/ Hairuman/ Aug組)が、スピンアウトによりいったんは後退したものの、レース終盤の粘りの走りでトップに立ち、見事3連勝を飾った。

苦しい展開を乗り越えて3連勝を飾った、#1PETRONAS SYNTIUM SLS AMG GT3(谷口/ Hairuman/ Aug組)

総合順位

順位 クラス Car No. 車両 ドライバー
1位 GT3 1 PETRONAS SYNTIUM SLS AMG GT3 谷口信輝/F. Hairuman/D. Aug
2位 GT3 16 ケーズフロンティア BMW Z4 GT3 阿部翼/横溝直輝/西田裕正
3位 ST1 3 ENDLESS ADVAN 380RS-C 峰尾恭輔/谷口行規/高木真一

各クラス優勝

クラス Car No. 車両 ドライバー
GT3 1 PETRONAS SYNTIUM SLS AMG GT3 谷口信輝/F. Hairuman/D. Aug
ST-1 3 ENDLESS ADVAN 380RS-C 峰尾恭輔/谷口行規/高木真一
ST-2 20 RSオガワADVANランサー 大橋正澄 /阪口良平/花岡翔太
ST-3 14 岡部自動車マイロード協伸計測RX-7 小松一臣/杉林健一/増田芳信
ST-4 38 TRACY SPORTS S2000 藤村政樹/藤田竜樹/筒井克彦
ST-5 36 エンドレス アドバン トラスト ヴィッツ 添田正/岩谷昇/井尻薫