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強豪「LEXUS TEAM ZENT CERUMO」にみるSUPER GTチーム

第2回 最大の武器はチーム全員の「想い」の総量

やるべき仕事でドライバーの個性も変わる?


 レーシングドライバーは、速く走ることが仕事。これはもう言うまでもないだろうが、実はレースが複雑になってくるにつれ、走ること以外にもドライバーの仕事が増えてきている。マシンをセットアップしていく時に、エンジニアにマシンの状況を的確に伝えることもその一つだが、それはテスト時だけでなくレース本番、決勝を走っている時にも、ドライバーにはそれが要求されるようになってきたのだ。
 SUPER GTのテレビ番組でも興味深く紹介されているが、ピットの監督やエンジニアとドライバーが無線で交信し、マシンの状況やコースコンディションがピットに伝えられるのだ。この無線の交信に関して2人のドライバーは好対照だと言う。
「立川さんは何もしゃべらないくらいだけど、晃平は状況を知りたがる」と村田チーフエンジニア。それぞれの性格でもあるのだろうが、高木監督が言うには「前半のスティントを担当することが多い平手からの情報を参考にして、後半スティント用のタイヤを選んだりする。だから、平手はむしろ無線でしゃべることも重要な仕事なんです」。
 その点で、後半を担当することの多い立川選手は「そのまま行くしかない」と高木監督は続けた。その分、決勝までのセッションでは立川選手のコメントでセットアップが進んでいくこともしばしばだ。

ミーティングをしないチームが1度だけやった大反省会

「うちはチームミーティングをしないのが特徴なんです」と、高木監督は言う。何度も言っているが、レースは、特にSUPER GTは複雑な要素がたくさんあるだけに、各チームは綿密な作戦会議、"ミーティング"をきっちり時間を決めて行っている。そんな中、これは極めて異例な発言だ。
 しかし、それは改めて時間と場所を指定してのミーティングをほとんど行わないだけの話で、普段から監督やチーフエンジニア、ドライバーが顔を合わせるとクルマやレースの話になると言う。
 遠征先のホテルでも思い立ったらそれぞれが互いに部屋を行き合って、クルマやレースの話が弾んでいくそうだ。だから「改めてミーティングする必要はない(高木監督)」のだが、今から3年前、高木監督が就任した年のオフに、ドライバーも含めた全スタッフが集まってのミーティングが行われたと言う。「結果的にも内容的にも散々なシーズンで、反省会の意味もあってチームスタッフ全員を集めました。そして、丸一日掛け、一人一人、忌憚のない意見を言ってもらいました」と高木監督。ここで自分たちの問題点を洗い出し、チームのベクトル(方向性)を一致させたのだ。


 それ以降、LEXUS TEAM ZENT CERUMOは再びトップチームに復活。昨年も最後までチャンピオンを争う速さと強さを見せつけた。ドライバーはもちろんだがチーム監督もチーフエンジニアも、そしてチーフメカニック以下総てのチームスタッフ一人一人が、同じベクトル、もちろんレースで勝利することを目標にがんばっているからこそ、の結果だ。そして、思い立ったらどこでも勝つため、クルマをよくするための"ミーティング"が始まる。だから、改めての時間を決めたミーティングは不要と言えるのだ。

 今回、SUPER GTのチーム体制を紹介するにあたり、LEXUS TEAM ZENT CERUMOを取材した。彼らもそうだが、実力あるチームはそれぞれに自分たちのやり方、個性がある。そして、どれが"正解"というわけではない。
 だからこそ、タイトルを獲るには、やはりチームの総合力がもっと重要なポイントとなるのだろう。その"総合力"を創り出すもの、それはチーム全員の"想い"に他ならないのだろう。


目次ページ

  1. 第1回:SUPER GTチームにおける監督とエンジニアの役割(2013年8月29日公開)
    1. 1. SUPER GTのトップチームであるLEXUS TEAM ZENT CERUMO
    2. 2. 監督は「スタッフを信頼し、決断と責任は僕が引き受ける」
  2. 第2回:最大の武器はチーム全員の「想い」の総量(2013年9月5日公開)
    1. 3. 監督がチームを変え、チームが監督を変える
    2. 4. やるべき仕事でドライバーの個性も変わる?
  3. 第3回:ZENT CERUMO SC430を動かすチームメンバーたち(2013年9月6日公開)
    1. 5. ZENT CERUMO SC430を動かすチームメンバーたち
    2. 6. インサイドフォトギャラリー