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WEC富士をさらに楽しむ基礎知識

WEC富士をさらに楽しむ基礎知識

ハイブリッドならではレースの楽しみ方

回生/力行(リキコウ)を行う"ブレーキングポイント"

ブレーキングポイントでエネルギーの回生を行うTS030 HYBRID
ブレーキングポイントでエネルギーの回生を行うTS030 HYBRID
WECが開催される各サーキットでは、ハイブリッド車のためのブレーキングゾーンが設定され、それぞれのブレーキングポイントの間でエネルギーの回生/力行を行うことが可能となる。これはハイブリッド車がWECに初参加した第2戦スパ6時間からされた施行されている規定で、スパでは5カ所、ル・マンでは7カ所が定められた。富士では4カ所が設定される。ゾーンの設定に当たっては、ブレーキングが充分強力に行われる場所であることが考慮される。



富士でのブレーキングポイントは、第1コーナー・ヘアピン・ダンロップコーナー・最終コーナーに設定された。
富士でのブレーキングポイントは、第1コーナー・ヘアピン・
ダンロップコーナー・最終コーナーに設定された。
ところで、レギュレーションでは、ブレーキングとは2Gを超える車両の減速をいい、1秒以内のブレーキングは考慮に入れないとされている。また、ハイブリッド・システムのサイズと開発費用を抑えるという目的から、ふたつのブレーキングポイント間での力行エネルギーは500kjを超えてはならないという規定も導入されている。
さらに、エネルギーの回生/力行は前輪または後輪によって行われなければならないことが技術規則で定められているが、前輪でこれが行われる場合、その力行が行われるのは車両が120km/h以上で走行している時でなければならない。エネルギーが後輪で回生される場合にはこの速度制限はない。

電気モーターのみで発進する"EVスタート"

エンジンとギアボックスの間、アルミ合金製ミッションケースに内蔵されたデンソー製モーター
エンジンとギアボックスの間、アルミ合金製ミッションケースに
内蔵されたデンソー製モーター
TS030 HYBRID のハイブリッドシステムはTHS-R (TOYOTA Hybrid System - Racing)と呼ばれ、3.4ℓ V8NAガソリンエンジンに、 220kW(約300馬力)を発揮するデンソー製モーターを組み合わせている。このモーターはエンジンとギアボックスの間、アルミ合金製ミッションケースに内蔵されていて、その回転はギアボックスを介して後輪に伝えられる。加速時にはこのふたつのパワーが組み合わされ、ライバルチームのドライバーが驚嘆する加速性能を生むのである。また、このモーターはスターターとしても使われており、スターターモーターとそのためのバッテリーは搭載されていない。
ピットインして作業を終え、コースに復帰する際には通常どの車両も爆音をとどろかせてピットを後にする。ところがTS030 HYBRIDは市販のハイブリッド車と同様、モーターの音しか発しない。エンジンは停止したまま、モーターの力で発進するからだ。他の競技車両が走行中のプラクティスやレース中ではよほど近くにいなければこの音は聞こえない。まさに音もなく走り出す。 音もなく走りだすTS030 HYBRID。ピットイン時には各車の音にも注目して欲しい。
音もなく走りだすTS030 HYBRID。
ピットイン時には各車の音にも注目して欲しい。
ストレートでは300km/hを優に越える最高速度をマークするレーシングカーの発進としては驚くほかない。エンジンがそのパワーを最も発揮できるのは中速域から高速域であるのに対し、モーターは起動した瞬間からパワーを発揮できる。トヨタのハイブリッドシステムの特徴はエンジンとモーターを効率的に使い分けること。これは市販車から派生した技術が数多く採り入れられているTHS-Rも同じだ。いわば市販ハイブリッド車技術の延長線上にあるのがTHS-Rといえよう。
電気モーターで発進した後、TS030 HYBRIDは市販ハイブリッド車のようにエンジンが始動し、音は3.4ℓ V8NAガソリン・レーシングエンジンのエキゾーストノートに変わる。

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