全日本ラリー史上最速のターマックバトル
今季2勝目の勝田範彦がシリーズトップに浮上
2014年全日本ラリー選手権 第5戦 モントレー 2014 in 群馬 レポート
渋川市から嬬恋村に舞台を移し開催
全9戦で戦われる全日本ラリー選手権は、後半戦突入となる第5戦を迎えた。2012年に9年ぶりに全日本ラリーの1戦として復活を果たしたこのラリーは、開催地を群馬県渋川市から同県の嬬恋村に移して開催される。ラリーの拠点は、軽井沢と草津温泉の中間に位置するパルコール嬬恋リゾートホテル。浅間、白根、万座を望む雄大なパノラマを背景に、すべてのスペシャルステージ(SS)が一新された。
なかでも、標高1200mに位置する2車線の観光道路を封鎖して使用する「パノラマライン」は、ステージの平均速度が130km/hに迫り、歴代の全日本ラリーのなかで最も速度域が高いSSとなった。また、HQやサービス、ギャラリーステージが集約されたパルコール嬬恋リゾートホテルでは、自動車メーカーやパーツメーカーなどの出展ブースやデモカーが並ぶラリーパークを開催。ステージでは有名ドライバーによるトークショーが行われたほか、特設ステージではデモンストレーションランも行われ、会場を訪れた多くのモータースポーツファンが1日中イベントを楽しんだ。
[ JN6クラス ] 突然の大雨が勝負の明暗を分ける
JN6クラスは、SS1でシリーズトップの奴田原文雄/佐藤忠宜組(三菱ランサーエボリューションⅩ)がベストタイムをマークしたが、続くSS2で勝田範彦/足立さやか組(スバル・インプレッサ)が奴田原を逆転。その後は勝田がトップの座を一度も明け渡すことなく快走し、2位の奴田原に8.2秒、3位の新井に10.2秒の差をつけて初日を折り返した。
2日目に入ると、奴田原がSS12でベストタイムを奪い、勝田との差を6.2秒に縮めるが、反撃もここまで。SS14が始まる直前に突然土砂降りの雨が降り出し、ステージはあっという間にヘビーウェットコンディションに。この豪雨の影響で奴田原と新井が相次いでコースオフしてリタイアという大波乱の展開となった。
結局、このステージを慎重に走り切った勝田が逃げ切り今季2勝目をマーク。シリーズポイントもリタイアに終わった奴田原を抜きトップとなった。また、上位陣のリタイアにより吉澤哲也/井手上達也(三菱ランサーエボリューションⅩ)、高山仁/河野洋志(スバル・インプレッサ)、牟田周平/星野元(スバル・インプレッサ)ら若手ドライバーが上位に浮上したが、SS15で吉澤を捉えた高山が2位、吉澤が3位表彰台を掴んだ。
[ JN5クラス ] 鎌田卓麻が第4戦に続き2連勝
SS1は第4戦洞爺を制した鎌田卓麻/市野諮(スバルBRZ)が、SS2は第3戦福島を制した川名賢/永山総一郎(トヨタ86)がそれぞれベストタイムを奪ったJN5クラスは、その後SS3、4を連取した鎌田がトップを快走。結局初日は11本中8本のSSでベストタイムをマークし、川名とのタイム差を22秒まで拡大する。
2日目は6本中2本のSSでベストタイムを奪うだけに留まった鎌田だが、それでも2位との差を確実に広げ、第4戦に続き2連勝を飾った。2位には、2日間にわたりコンスタントに好タイムをマークした川名が入賞。3位にはトヨタ86の曽根崇仁/桝谷知彦組が入賞し、86&BRZ勢が表彰台を独占した。
[ JN4クラス ] 平塚忠博が開幕戦のリベンジを果たす
開幕戦の唐津以来、今季2回目のクラス成立となったJN4クラスは、開幕戦と同様に若手竹内源樹/加勢直毅組(スバルBRZ)と平塚忠博/鈴木裕組(スバルBRZ)の若手VSベテラン対決となった。
SS1と2は若手の竹内が連取するものの、今回のラリーで最も平均スピードが高いSS3で平塚が逆転してトップに浮上。その後も竹内を確実に引き離し、開幕戦のリベンジとなる今季初優勝を奪った。
また、2012年、13年のTRDラリーチャレンジでクラス2チャンピオンを獲得した戸塚和幸が、渡邊晴子とコンビを組み全日本に初挑戦。初めて乗るトヨタ86を巧みに操り、デビュー戦で3位に入賞する健闘を見せた。
[ JN3クラス ] 天野智之が辛くも逃げ切り5連勝
開幕戦の唐津以来4連勝を飾っている天野智之/井上裕紀子組(トヨタ・ヴィッツRS G's)だが、第5戦は思わぬ伏兵が現れた。今回が全日本ラリーのデビュー戦となる内藤学武/小藤桂一組(トヨタ・ヴィッツRS)が、天野と0.1秒を争うバトルを展開。初日は、SS5を終えた時点でトップの天野と2位の内藤との差が1.9秒差。SS7では内藤が初のベストタイムを奪い、天野を0.8秒上まわるトップに躍り出る。
だが、天野もすぐさまSS8で逆襲。ここで再びトップを奪い返した天野が2日目に入ってもトップの座を守り切り、開幕戦から続く5連勝を達成した。また、2日目の最終SSまで内藤が2位の差を死守していたが、その最終SSで岡田孝一/石川美代子組(マツダ・デミオ)が内藤を0.3秒逆転して2位に入賞。内藤が3位表彰台を獲得した。
[ JN2クラス ] ベテランの田中伸幸が今季3勝目をマーク
改造範囲が最も狭い1600cc以下のRPN車両を対象としたJN2クラスは、今季4戦目のクラス成立となった第4戦洞爺で優勝した高橋悟志/箕作裕子組(トヨタ・ヴィッツRS)がこのラウンドをスキップ。ここまで2勝を挙げている田中伸幸/藤田めぐみ組(スズキ・スイフトスポーツ)と、今季初登場の濱岡卓也/美細津正組(プロトン・サトリアネオ)との勝負となった。
「第4戦洞爺でドライブシャフトを折ってしまったので、今回は駆動系に負担をかけないようにスムースに走るように心がけました」という田中が、安定したペースでラリーをリード。17本中16本のSSでベストタイムを奪い、今季3勝目を獲得した。
[ JN1クラス ] RX-8の中村晃規が今季2勝目
マツダRX-8、マツダ・デミオ、ダイハツ・ストーリアX4など、バラエティに富んだ車種が出場するJN1クラスは、開幕戦以来の出場となったRX-8の中村晃規が、2位に2分近い大差を築く圧倒的な速さで今季2勝目を挙げた。
また、2002年全日本ラリー選手権2輪駆動部門Aクラスチャンピオンを獲得した石城健司/露木明浩組が、マツダ・デミオで6年ぶりに全日本に出場。ダイハツ・ストーリアX4の中西昌人/美野友紀組と好バトルを展開したが、「少しずつ昔の勘を取り戻すことができ、最後まで楽しく走ることができました」という石城が、中西に14.7秒差をつけ2位に入賞した。
地元嬬恋村と一体になったイベントにGAZOO Racingも協賛
モントレー in 群馬は、昨年までも地元の自治体と一緒になってラリーを盛り上げるサポートイベントを開催していたが、開催地が嬬恋村に移った今年も、パルコール嬬恋ラリーパークと浅間サーキットで、観戦者が気軽にアクセスできるギャラリーステージを設けるとともに、ブース出展やデモンストレーションランなどを行った。
メイン会場となるパルコール嬬恋ラリーパークでは、スバルや色々な自動車関連パーツメーカーとともに、GAZOO Racingもブースを出展。ラリーファンであれば誰でも懐かしく思い出されるWRCを戦った名車・ST185セリカや、トヨタ86のワンメイクレース車両、LFA、ヴィッツGRMNターボといった話題のマシンを展示。LFAではエンジン始動のパフォーマンスが行われ、甲高いV10サウンドが会場内に轟いた。
また、ラリードライバーの大嶋治夫を伯父に持ち、現在SUPER GT500で活躍中のレーシングドライバー大嶋和也がトヨタ86のステアリングを握りデモンストレーションランを実施。同時に新井敏弘の息子、新井大輝がヴィッツGRMNターボでデモンストレーションランを行い、2台によるパフォーマンス走行が場内を盛り上げた。新井大輝は27日(日)は、モントレー in 群馬と同日開催のTRDラリーチャレンジ in 嬬恋にGAZOO Racingから出場し、注目を浴びた。
そのほか、メインステージではゲストドライバーのトークショーが行われたり、嬬恋村が名産のキャベツを来場者に1日2000個ずつプレゼントするというイベントも行われ、多くの観客がラリーパークを満喫していた。
クラス別順位結果(上位3クルー)
1位 |
ドライバー/コ・ドライバー 勝田 範彦/足立 さやか |
---|---|
スバル・インプレッサ | |
2位 |
ドライバー/コ・ドライバー 高山 仁/河野 洋志 |
スバル・インプレッサ | |
3位 |
ドライバー/コ・ドライバー 吉澤 哲也/井手上 達也 |
三菱ランサーエボリューションⅩ |
1位 |
ドライバー/コ・ドライバー 鎌田 卓麻/市野 諮 |
---|---|
スバルBRZ | |
2位 |
ドライバー/コ・ドライバー 川名 賢/永山 聡一郎 |
トヨタ86 | |
3位 |
ドライバー/コ・ドライバー 曽根 崇仁/桝谷 知彦 |
トヨタ86 |
1位 |
ドライバー/コ・ドライバー 平塚 忠博/鈴木 裕 |
---|---|
スバルBRZ | |
2位 |
ドライバー/コ・ドライバー 竹内 源樹/加勢 直毅 |
スバルBRZ | |
3位 |
ドライバー/コ・ドライバー 戸塚 和幸/渡邉 晴子 |
トヨタ86 |
1位 |
ドライバー/コ・ドライバー 天野 智之/井上 裕紀子 |
---|---|
トヨタ・ヴィッツRS G's | |
2位 |
ドライバー/コ・ドライバー 岡田 孝一/石川 美代子 |
マツダ・デミオ | |
3位 |
ドライバー/コ・ドライバー 内藤 学武/小藤 桂一 |
トヨタ・ヴィッツRS |
1位 |
ドライバー/コ・ドライバー 田中 伸幸/藤田 めぐみ |
---|---|
スズキ・スイフトスポーツ | |
2位 |
ドライバー/コ・ドライバー 濱岡 卓也/美細津 正 |
プロトン・サトリアネオ | |
|
|
1位 |
ドライバー/コ・ドライバー 中村 晃規/古川 智崇 |
---|---|
マツダRX-8 | |
2位 |
ドライバー/コ・ドライバー 石城 健司/露木 明浩 |
マツダ・デミオ | |
3位 |
ドライバー/コ・ドライバー 中西 昌人/美野 友紀 |
ダイハツ・ストーリアX4 |
全日本ラリー選手権のクラス区分はこちらを参照ください。