Lesson3 ラリーを練習しよう

2015.09.25 TRDラリーチャレンジ2015

ラリーのルールについて

リエゾン(SSとSSの間の移動区間)も、競技進行中

リエゾン(SSとSSの間の移動区間)も、競技進行中

ラリーにおいて、全開走行でタイムを競うスペシャルステージ(SS)と並んで重要なのがリエゾン区間。SSとSSの間の移動区間のことですが、その区間も競技中となります。リエゾンはロードマップと呼ばれる地図のルートに従って走りますが、その移動には目標時間が設定されています。そのタイムをチェックするのがタイムコントロール(TC)と呼ばれるポイントで、定められた時間にTCにいるオフィシャルにタイムカードを提出し、チェックしてもらいます。

コマ図を見ながら、クイズを解くようにルートを進む

コマ図を見ながら、クイズを解くようにルートを進む

ロードマップには必要最小限の道路情報のみがクイズのように記されており、コ・ドライバーがそれを解読してドライバーに進路を伝えます。ロードマップには積算距離と区間距離という距離が表記されている欄があります。積算距離はTCを通過してからのトータルの距離。区間距離はロードマップに記された分岐ポイントごとの距離となります。ラリーコンピューターやトリップメーターを使用し、距離とポイントを確認しながら進めていきます。

※コマ図
コマ図を見ながら、クイズを解くようにルートを進む
コマ図とは、大会の主催者から渡される、スタート地点からの距離とルート上の情報をかんたんな図を使って示したものです。

TCは時間厳守!

コマ図を見ながら、クイズを解くようにルートを進む

設定された時間内にTCに到着出来ない場合はペナルティが科されることとなります。到着が遅くなった場合はもちろんですが、早くTCに着きすぎてもペナルティとなるので注意しましょう。一般的なラリーでは、遅着は1分毎に10秒の加算。早着においては1分毎にプラス1分と、重いペナルティが科されます。法定速度で走ってちょうど良い時間に設定されているので、安全運転で進みましょう。SSで頑張って削ったタイムがTCペナルティで水の泡…なんてことにならないよう。

ペースノートってどうやって作るの?

ラリーを戦うために最も重要なツールとも言える「ペースノート」。ドライバーとコ・ドライバーがタッグを組んで戦うラリーならではのものです。見通しの悪いコースなどで、このカーブはどこまで続くのか、そしてその先には何があるのか…そういった情報を記したノートになります。ラリーでは競技前日や当日の早朝に、競技で使用するSSの試走が行われます。レッキと呼ばれるその試走を行いながらペースノートを作成していきます。

ペースノートの作り方は様々ですが、レッキをしながら注意すべきポイントでドライバーが言った言葉をコ・ドライバーがメモしていく方法が一般的です。その際、コーナーの大きさの他に「はじめは緩やかだけど、後半キツい」や「イン側に寄せすぎると危険」、「このコーナーは直線で抜けられる」など、様々な路面情報をメモしていきます。後で確認できるように、走行中のシーンを車内に取り付けた固定カメラで録画する選手も多いです。

レッキ終了後、メモした内容をペースノートに清書していきます。コーナーの大きさなどは、その大きさを数段階(主に1〜8段階)に分け、旋回半径が小さいタイトなコーナーを少ない数字、コーナーが大きくなるにつれて大きな数字で記します。数字を書いたテープを、角度に合わせてステアリングに貼ると分かりやすくなります。ペースノートはSSを全開アタック中に読むものなので、大きめの文字で余裕を持って書いたほうが使いやすいです。

ペースノートを使いやすくするために、様々な記号を使うと便利です。例えば、右コーナーはR、左はL。長いコーナーではLg(ロング)、さらに長ければVLg(ベリーロング)。コーナーの出口が緩ければ<(オープン)、逆にきつくなる場合は>(タイトゥン)など、路面状況に合わせた表現が無数に存在します。自分達だけのオリジナル記号で書いてもいいですが、一般的に使われる記号はラリー選手の共通言語とも言えますので、ぜひ覚えましょう。

◆◆ コーナ等道路状況に関する項目 ◆◆
記号 呼び方 意味
1~10 いち~じゅう コーナの大きさ(数字が大きいほど緩い)
エル 左コーナ
アール 右コーナ
ショート 短いコーナ コーナの後に小文字でつける
ロング 長いコーナー
V・ ベリーロング より長いコーナー
VV・ ベリーベリーロング かなり長いコーナー
オープン コーナの出口が緩やかになっている
タイトゥン コーナの出口がきつくなっている
V> ベリータイトゥン コーナの出口がかなりきつくなっている
VV> ベリーベリータイトゥン コーナの出口が非常にきつくなっている
クレスト 先の見えないUP, DOWN
から 次のコーナが即ある場合
グレ グレーチング グレーチングのギャップ
Jump ジャンプ ジャンプ
keep in キープ イン 道路の内側を通ること
keep out キープ アウト 道路の外側を通ること
Slow スロー 減速しないと曲がれない場合
Slip スリップ 先のコーナが滑りやすい場合
narrow ナロー 道幅が狭くなる
ハシ
◆◆ 距離に関する項目 ◆◆
記号 呼び方 意味
アンド 10~20
Z ゼン 20~30
30 さんじゅう 30~50
50 ごじゅう 50~80
80 はちじゅう 80~100
100 ひゃく 100~150
150 ひゃくごじゅう 150~200
200 にひゃく 200以上

ペースノートの読み方について

  • ストレートは前のコーナと合わせ続けて読むこと
  • コーナ進入前には次のコーナを読むこと
  • アンダーラインはコーナ間が短いので続けてまたは早く読むこと
  • C(クレスト)の後は続けて読むこと

複合コーナ表現例

  • R5>
  • L3<
  • R4<>

トップドライバーの走りから学ぼう

足立さやか塾長・勝田範彦選手の走行をチェックしよう

では、実際の走行を見てみましょう。
映像では、塾長がノート(記号)を読み上げると白い文字のテロップが表示され、その後コーナーに差し掛かった時点で文字が赤くなりますので、タイミングをチェックしてみてください。
ドライバーは、コ・ドライバーの的確な指示を聞きながらドライビングを組み立てていきます。ラリーは、両者の間に強い信頼関係があって成立しているのです。

勝田範彦選手・足立さやか塾長の走行ムービー

足立さやか塾長コラム

今までのラリーで最も悔しかったこと~2014年シリーズ第8戦ハイランドマスター(高山)~
第7戦ラリー北海道で思わぬコースオフから9位という成績に終わってしまったため、シリーズチャンピオン争いでは、厳しい戦況に追いやられていた。

残り2戦(Rd.8/Rd.9)とも満点優勝(Day1、Day2両日1位、総合優勝であること)、さらにライバルである奴田原/佐藤組が6位以下になることが逆転への条件だった。分かりやすく言うと、自力優勝が出来ない状況だった。

それでも、自分たちがやる事は明確だった。とにかく両日勝つ事・・・Day1は誰にもベストタイムを譲ることなく、1位で折り返した。
まず半分クリアー。

その日の最終サービスで奴田原/佐藤組のサービステントは慌ただしかった。
規定時間に間に合わず、ペナルティーを受けたため、Day1の結果は6位だった。

神様は私たちを見放していなかった。

Day2も惑わされる事無く、すべてのSSでベストタイム。Day2も1位。自分たちに課せられた条件はクリアーした。
あとは奴田原/佐藤組が6位以下でフィニッシュしてくれること。結果を待った・・・
しかし、敵もあっぱれ(見事)5位でフィニッシュ。
これで2014年シリーズチャンピオンは決定となり、4年間守り続けてきた総合チャンピオンの座を明け渡すことになった。
想像はできていても良いような条件であったはずなのに、一度も想像していなかったのだと思う。
あんなに悔しくて、言葉が一つも発することができなかった事はなかった。
苦し紛れに、当たり障りのないような事は言えていたのに、何を聞かれても、言葉が出てこなかった事はなかった。
今までのラリーで最も充実感・達成感を感じた瞬間~2013年シリーズ第7戦ラリー北海道(北海道)~
2013年までラリー北海道では総SS距離が230㎞を超えていました。今でこそ200㎞を切っていますが、今も昔も日本最大のラリーには変わりません。
このラリー北海道で勝てたことは、長年の夢の達成でもあり、大きな自信にもなりました。

SSは全部で18本。奴田原/佐藤組ランサーと一騎打ちになり、SS17まで終わって残り1本2.5㎞を11秒差で負けていました。
普通に考えたら勝てるはずもない。でも、227.5㎞を奴田原/佐藤組ランサーと戦えたことにとても満足していて、最後の1本も最後まで全力で戦って終わりにしたかった。
ただ、その思いで2.5㎞を走った。
走り終わった後に奇跡が起きた。
奴田原/佐藤組のタイヤがパンク、リム落ちまでしていたため、スローダウン。11秒差をひっくり返し、1秒差で勝利を手にすることができた。
ポディウムに上がるまで信じられなかった。最終SSを11秒負けていることで、手を抜いて流して走っていれば、1秒勝てる事はなかった。
最後まで全力で走って良かった。あきらめないで良かった。
230㎞走ってもたった1秒で勝負が決まる。1秒を230㎞で割るとどんな距離になるのでしょうか?目に見えるのでしょうか?
この感動は生涯忘れないと思う。

※ラリー界の先輩であり、ライバルである奴田原文雄選手、佐藤忠宣選手に敬意を表します。