クルマ「味探し」の旅 第2回:日本を代表する食品・飲料メーカーの「味づくり責任者」との味づくり懇談会 各界のマイスターに極意を学ぶ

クルマのカタログには必ず最後に「主要諸元表」という項目がある。全長、全幅、ホイルベースといった寸法や、重量、さらには総排気量、圧縮比、最高出力、最大トルクなどエンジンに関するものなどさまざまなデータが掲載されている。これらはクルマの基本性能を決めるものであり、それによってクルマの性格が形成される。また、「装備一覧表」には走行性能や安全性能、快適性、操縦性をもたらすさまざまな装備が掲載されている。エアコンやパワーステアリング、ナビゲーションなどがそれにあたる。
これらの基本性能や装備、機能は一般に"スペック"と呼ばれる。そして、料理にたとえるならば、スペックはあくまで素材である。料理がそうであるように、素材をレシピに従って調理すれば、料理が完成する訳ではない。大切なのは"味"つけである。
GAZOO.comでは、「料理と同じく、クルマも味付けが大切」というトヨタのマスターテストドライバー・成瀬弘さんの考えに共感し、成瀬さんとともに、「クルマの理想の味」を探す旅に出ることになった。
そこで企画したのが日清食品とサントリーという日本を代表する食品・飲料メーカーの味づくり責任者のみなさんをお招きして2008年7月に東京で開催した「第1回 味づくり懇談会」である。出席いただいた各社の味づくり責任者のみなさんは、マスコミにも度々登場されているたいへんご高名な方々であった。
トヨタ自動車からは成瀬弘さんと第一車両実験部 部長の坂井生知さんが参加。「人間の感覚と機械で計測できる数値との違い」や「技術の伝承や後輩の育成方法」、さらには「消費成熟化におけるモノづくりのあり方」についてなどが話題に上り、約2時間半にわたって熱心な意見交換が行われた。
インスタント食品、ウイスキー、ビール、コーヒー、そしてクルマと作っているものこそ違え、それぞれが各社のモノ作りの顔として最前線で陣頭指揮をとっている責任者(マイスター)のみなさんである。"味づくり"という点ではお互いに共通することが多く、議論は大いに盛り上がり、たいへん有意義なものとなった。
また、日清食品、サントリーの両社とも、トヨタ自動車と同様に、大量生産を前提としたモノづくり、味づくりに取り組んでいるメーカーである。同時に国内マーケットだけでなくグローバルにそれを展開している企業でもある。それゆえ、両社の味づくりの責任者のみなさんと同じ議論のテーブルに座り、「味づくり、モノづくりへの繊細なこだわり」や「技術の伝承(人づくり)」などについて、直接、意見交換できたことは、私たちGAZOO.comにとって、たいへん参考になり、また、自分たちの取り組みを再確認するよい機会となった。「私たちがやろうとしていることは間違っていなかった」。この懇談会を経て、私たちや成瀬さんは、たいへん勇気づけられたのであった。

日清食品株式会社
中央研究部 食品開発部
シーズニングマイスター
吉村昭博さん»プロフィールはこちら

サントリー株式会社
ブレンダー室
チーフブレンダー
輿水精一さん»プロフィールはこちら

サントリー株式会社
ビール事業部 商品開発研究部
技術顧問
山本隆三さん»プロフィールはこちら

トヨタ自動車株式会社
マスターテストドライバー
成瀬 弘さん»プロフィールはこちら

サントリー株式会社
食品生産開発本部
飲料開発設計部長
高橋賢藏さん»プロフィールはこちら

トヨタ自動車株式会社
第1車両実験部長
坂井生知さん»プロフィールはこちら

[2008年7月 取材]