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2014チャンピオン/RI4Aエンジン開発ドライバー 中嶋一貴
with RI4Aエンジン開発エンジニア 佐藤真之介
後編(1/2)

後編「エンジニアにちゃんと伝えることが勝利に繋がる」

2014年の全日本選手権スーパーフォーミュラでドライバーズチャンピオンを獲得したTOYOTA Racingの中嶋一貴選手。彼は、今季9レースで8勝を挙げた新エンジン"RI4A"を佐藤真之介エンジニアと共に開発してきたドライバーでもあります。このインタビューでは、好成績を産みだした両者に今季を振り返ってもらいます。後編ではチャンピオンが決定した最終戦鈴鹿、今季のエンジン開発について、そして2015年シーズンに向けてなどを語っていただきました。

仕事を忘れさせた最終戦の熾烈なポールポジション争い

--チャンピオンが決まる最終戦鈴鹿。レース1の予選となったQ1では、ポールポジションがチームメイトのロッテラー選手、予選2位に中嶋選手となりましたが、なんと2人が同タイムという驚きの結果でしたね。

中嶋僕は失敗して、同タイムだったんですよ(笑)。だからちょっと複雑でした。

佐藤あれは仕事を忘れて、ファンの目で見てしまいましたね。「同タイムかよ、すげぇ!」って思わず笑っちゃいました。アンドレ(ロッテラー選手)が第4戦もてぎを欠場して、この前のSUGOは1周もせずレースを終えていて、それだけに最終戦には気合いを入れてきていたし、中嶋選手からも言葉にはしない闘志を感じていた。それを知っていただけにね。ただ、中嶋選手がQ1は失敗したとは聞いていたので、順当に行けばQ3は(1番に)来るだろうなと思っていました。

中嶋朝のフリー走行でアンドレに近いタイムなら、予選は同じか前に行けるという感触はありました。それをQ1が終わった時点で確認できた。Q2は『通れば良い』くらいの気持ちで行ったら、意外とタイムが伸びなくて『あれ?』って(苦笑)。そこは気持ちを切り替えてQ3に臨みました。そして、狙い通り(ポールポジション獲得)。クルマも本当に良かったですし、セットアップの微調整も上手くいって。自分の手応え通りのタイムとポジションが得られました。それができたので、Q1(レース1のスターティンググリッド)の2番手も良しとしようと思いました。フロントロウならスタートが良ければ前に行けると。自分としては良い予選でしたね。

最終戦 鈴鹿の予選Q1で中嶋一貴選手とアンドレ・ロッテラー選手が同タイムをマーク

--決勝は朝から雨で、今年初めてスタートからのレインコンディションでした。エンジンで雨のレース用というのはあるのですか?

佐藤ドライバビリティの部分で、よりソフトな感じにしたマップ(パワー設定プログラムのデータ)を準備はしています。それを使うかはドライバーの好みですね。

中嶋僕は使ってないですね。もちろん、雨の状況に合わせてクルマのセットは変えます。でもドライで良いエンジンは、ウェットでも良いですから。
僕にしてみれば、それよりスタートでした。今年はウェットスタートが一度もなかったから、佐藤さんに『(クラッチの)合わせ方をどうしたらいいでしょう?』って聞きました。とにかくウェットスタートのデータも経験もない。『どうしよう?』という気分ではありました。
タイトルのライバルであるJP(ジョアオ・パオロ・デ・オリベイラ選手)は今年スタートが一貫して良くて、実際のスタートでも2列目から飛び出してきましたよね。僕としてはいろいろなパターンを考えていて、その中にJPが前に出た場合もあって、「ああ、やっぱり...」と。でも「2レース通して決めればいいや」ともレース前に話し合っていたし、焦ることはありませんでした。この時、JPがウェットで速かったので、レース2が終わるまでプレッシャーはありました。

--最後のレースとなったレース2にはどう臨みましたか?

中嶋セットを少し変えましたし、タイヤもウォームアップの中でレインタイヤの新品も試たり、少し使ったものに戻してみたりと。結果を考えれば、試行錯誤した甲斐はありましたね。レース1でスタートの経験も得ましたし、それでレース2は良いスタートが切れました。

--中嶋選手が好スタートを切ったのを見て、佐藤さんのお気持ちは?

佐藤中嶋選手がスタートを決めた段階で、(最後までこのまま)行くんだろうなと考えていました。去年はアンドレが最終戦を欠場したこともあって、タイトルを逃しました。彼が出てれば、また違った結果になったと思ってますから。正直、今年チャンピオンを取り返せて、やっとホッとしたという気持ちのが大きかったですね。それと、SUGOだけ優勝を逃しているので、それが悔しいなぁと。
僕の仕事は、RI4Aエンジンを設計した皆さん、製造を担当した皆さん、それぞれから託されたエンジンをチームと一緒に上手く使って結果を出すこと。ハードが良いのは分かり切った中で、責任を果たしたという感覚なんです。その使命が果たせたという気持ちでした。

--レース2は雨の中、見事なポール・トゥ・ウィン。中嶋選手はチャンピオンを掴みましたね。

中嶋僕としては、RI4Aエンジンに携わった全員に感謝を言いたいです。やはり良いエンジンを使わせてもらったことで、チャンピオンになれた。レースはドライバーだけで勝てるものでは絶対ないので、エンジンもクルマも、そしてチーム体制も、人も物も全部トータルで良くないと勝てないのです。そのベースとしていいエンジンが必要です、今年は特にアドバンテージになりました。ただ、このいいエンジンを使うチーム、ドライバーがいっぱいいるので、ここからは僕らががんばんないとね(笑)。でも、その大前提としてその舞台に上がれる(同じ条件)かどうかで違うので、ここが一番大きな点でしたね。

ポールトゥウィンで2014年のチャンピオンを決め、ガッツポーズする中嶋一貴選手