メニュー

ル・マンへ挑むレーシングハイブリッド開発ストーリー
トヨタ自動車 ハイブリッド プロジェクトリーダー 村田久武

第2回 途方もない数値目標と厳しい社会情勢に挑んだ開発陣(2/2)

昨年のル・マンで突きつけられた大きな衝撃

TS030 HYBRIDのデビューレースとなったル・マン24時間レースでは、大きな衝撃を受けた
 2012年、トヨタ自動車はレーシングハイブリッドシステムを搭載した車両を開発し、ル・マン24時間レースへ参加することを正式に表明した。丸6年にわたる村田たちの努力の成果がいよいよサーキットの上で疾走することになったのだ。
「ル・マン挑戦が正式に決まったときには勝てるつもりでいました。そこまでシステムは完成に近づいていると思ったし、シミュレーションでも勝つ見通しはついていたんです。でもシミュレーションではレースは勝てませんでした」
 2012年のル・マン24時間レースに出走したトヨタTS030 HYBRIDは、予選から速さを見せ、決勝でも序盤は順調に2、3位を走行。一端は首位にも立った。だが、アクシデントとトラブルにより、結局2台ともリタイアを喫した。絶対に壊れないと思っていた自分の担当したパワートレインがリタイアの原因になったことは、村田にとって大きな衝撃だった。
 村田たちの開発したレーシングハイブリッドシステムを搭載するTS030 HYBRIDは、明らかに"速い"クルマであった。その意味で、当初目標とした"6倍"の目標は達成できたのだ。しかしル・マン24時間で勝つためには速さとともに"強さ"が求められる。村田はそのことを改めて思い知ったのだった。

悔しい結果に終わった2012年のル・マン24時間。そこで止まることなく、今年のル・マンに向け、そしてその先へとレーシングハイブリッドは進化を続ける。最終回では、村田ハイブリッドプロジェクトリーダーが描く、レーシングハイブリッドの目標、夢を紹介する。(05.16掲載)