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ル・マンへ挑むレーシングハイブリッド開発ストーリー
トヨタ自動車 ハイブリッド プロジェクトリーダー 村田久武

第3回 2013年のル・マンへ、そしてその先への挑戦(2/2)

ル・マンの先に見る"走りを楽しむハイブリッド"

村田久武
「今年のル・マン24時間レースには勝つ」と言う村田の心の中には、すでに"ル・マン後"の構想が膨らみつつある。
 元々村田は現状のTS030 HYBRIDに搭載しているものよりもハイブリッドシステムの比率が高い、いわゆる「ストロング・ハイブリッドシステム」を考えていた。ル・マン24時間レースの車両規則の壁があったために現状はモーターを1基しか搭載できず、システムは当初の理想とは離れたものになっている。しかしル・マン24時間レースでは2014年以降は車両規則を大幅に見直す予定なので、より踏み込んだ形でハイブリッドシステムの構築を目指すというのだ。
「自分たちが元々考えていたシステムに近づけられると思っています。他のメーカーもいろいろなものを持ってきて、レースは異種格闘技のようになっていくのでしょうが、自分たちは自動車の進化、進歩に貢献することにこだわって、超過激なストロング・ハイブリッドシステムを持ち込んで戦いたいです」と村田は言う。
 レーシングカーに限らず4輪自動車は、4個のタイヤが路面に接して運動する乗り物である。言い換えれば4個のタイヤと路面の関係に基づいて走り、曲がり、止まるという基本運動が成立する乗り物なのだ。レーシングハイブリッドシステムにおける、エンジン、モーター、ブレーキの協調制御チューニングの延長上に、村田はタイヤの限界を使いこなすことができる新しいハイブリッドシステムの在り方を見ているようだ。
「ハイブリッドシステムは、経済的であるだけではなく、使い方によっては実は非常に楽しいクルマのベースになる、それを実証するつもりです。近い将来、市販車でもそういうクルマを作りたいし作って欲しいと思っているんです」
 村田はこう結んで、2013年のシーズン開幕へ旅立った。

2013年はWECの開幕戦から参戦し、第3戦にあたるル・マン24時間レースに向け着々と準備をすすめる村田ハイブリッドプロジェクトリーダーとTS030 HYBRID。6月19〜23日に行われるル・マンが本当に楽しみだ。今度こそ、嬉しい報告を聞かせてもらいたい。皆さん、応援をよろしくお願いします。