●シーズン序盤のトヨタの強さに周囲は驚いたと思いますか?
「新車発表はお披露目用のスペックのクルマで行ったわけだが、これは昨年のクルマとかなり似通っていた。これについてはかなり何度もコメントしている。オーストラリアGPでは空力のアップデートを行うことがわかっていたため、あれは意図的なものだった。パフォーマンスが大きく向上することはわかっていたからね。シーズン前のテストも、路面を再舗装したバルセロナを除けば、全般的に満足がいく出来だった。燃料搭載量を考慮すれば、われわれのクルマは大丈夫だと私は思っていた。シーズン終盤までに2~3番目に速いクルマにするのが目標だと私はコメントしたが、あれは“ずいぶんと馬鹿げた考えだ”なんて言われたね。だが私には自信があった。開幕戦の予選はウェットになったが、われわれはフトントローに並ぶことができた。ヤルノはタイヤの摩耗の問題を抱えていたが、最初のスティントではかなりの速さがあった。周囲はあの結果を単なる偶然と見なしていたが、われわれはあのときの速さにクルマの実際の性能が現れていると考えていた。だからマレーシアとバーレーンでいい方向に転がって、2度も2位になれたときも驚きはしなかったね」
●今シーズンの展開をどう評価していますか?
「シーズン序盤ではルノーにコンマ3~4秒遅れていたが、マクラーレンのパフォーマンスが振るわなかったのでその恩恵を受けていた。シーズンのあの段階ではレースごとに必ず空力のアップデートを行ったし、開発はコンスタントに続いていた。文字通り一歩ずつ、クルマを軽くしていったんだ。シーズン中盤になるといくつかのレースでリアの安定性に悩まされることになったが、開発を続けたお陰でその問題も改善できたし、シーズン終盤の5~6戦では安定した走りができた。だからシーズン序盤はよかったがその後は他のチームのような開発ができていなかったという批判は公正ではないと思う。シーズンの終わり近くになるまで、われわれは常に3番手を競っていたと思うしね。おそらくわれわれはシーズンの最初と同じように、最後になってもルノ-からコンマ3~4秒遅れの位置にいたと思う。だからわれわれがずるずると後退していったとは考えていない」
●シーズン序盤の勢いを保てなかったのはなぜだと思いますか?
「確かに取り逃したレースもいくつかある。モナコではかなり上位を狙えるはずだったが、ラルフが予選でアクシデントを起こし、それが次に走るヤルノにも影響してしまった。あそこではおそらく表彰台を穫れたと思う。ニュルブルクリンクでもヤルノは表彰台に上がれたはずだが、規定の時間内にクルマをスタートさせることができなかった。そしてカナダでもブレーキトラブルが見舞われるまで、ヤルノは表彰台圏内を走っていた。ハンガリーでは3位と4位になり、雨のスパでも再び速さを発揮することができた。ただし戦略的に誤った方を選択してしまった。私もある程度の満足は感じているが、ただし失ったチャンスについては残念に思っている。インディアナポリスでの一件もあったし、すべてうまく合わさればコンストラクターズ選手権で3位になれたはずだからね。そうなっていれば、私はもっと満足していただろう。とはいえ、全体的に見れば、今年最も飛躍したチームはわれわれのはずだし、いい仕事をしたと思う。それにシーズンが終わる前にBスペックを投入できたわけだから、われわれは来年に向けていいポジションにつけていると思う」
●TF105Bのフロントサスペンションにはどんな狙いが秘められているのでしょう?
「確かにTF105Bには以前と異なるフロントサスペンションが採用されているが、あれを採用したのは風洞試験で予想を上回る大きなパフォーマンスの向上が確認できたからだ。技術的にはあれを実現するのはかなり難しかったし、私としては来年の1月にリスクを犯すのも避けたかった。その段階でトラブルを抱えてしまうと、シーズン開幕までには遅すぎて修正できなくなるからね。TF105に装着してみることにしたのはそういった理由があったからだ。そのせいでいろいろと妥協しなければならなかったが、基本的にあのクルマはテストカーなんだ。どんなことであれ2回目にやるときには、1回目よりもいい仕事ができるものだ。最初の段階で問題点はすべて発見できているわけだからね。あのプランを推し進めていたのはそういった考えがあったからだし、もしかしたら最後の数レースに投入できるかもしれないとも考えていた。ああいったタイプのフロントサスペンションには技術的に難しい要素がいくつかある。空力的には改善するはずだが、その代償としてメカニカル・グリップが犠牲になることもある。最初のテストでは2つ~3つほど問題が見つかったが、あれは本当にいい方向へ進む一歩となった。おそらくそれはわれわれの事前の予想以上だったと思う。それにテスト禁止期間が始まる前に、あのクルマをレースで走らせて、そこからさまざまなことを学ぶのは理にかなったことだったしね」
●ドライバーのパフォーマンスには満足していますか?
「しているよ。ラルフは自分の予選のパフォーマンスに関してかなり手厳しかったが、それでもかなりのポイントを稼いでくれた。ヤルノは予選で素晴らしかったし、安定したクルマをわれわれが用意できたときにはレースでも最高だった。モナコやニュルブルクリンク、それにカナダで失った表彰台のチャンスのことを、彼は本当に悔しがっているようだ」
●あなたは以前にも2人と仕事をしたことがありますよね。彼らのパフォーマンスはあなたの予想通りでしたか?
「2人とも以前のパフォーマンスを上回っていたよ。ヤルノはかつて私と仕事をしていたときよりも間違いなくいいドライバーになったし、ラルフも同じく成熟したね。2人とも才能は相変わらずだが、以前よりもドライバーとして完成されてきたと思う」 |