華やかなラリーショーと過酷なステージ
4月に九州で開幕を迎え全国を転戦してきた全日本ラリー選手権は、11月1日(土)・11月2日(日)に愛知県新城市で最終戦を迎えた。
昨年、ラリーの拠点を県営新城総合公園に移したこのラリーは、今年も公園内にSS(タイムアタック区間)を設定したほか、国内外のトップドライバーによるデモランやトークショーを間近で観戦できる「ラリースタジアム」、WRCを戦った歴代のラリーカーやGAZOO Racingのニュル24時間耐久レース参戦車両等が並ぶ「GAZOO Racing ラリーガーデン」など、華やかなイベントが多数行われた。
ギャラリーにとっても選手にとっても魅力があるこのラリーは、2日間合わせて4万8000人(主催者発表)が来場。出場台数も同時開催された中部近畿地方選手権、TRDラリーチャレンジを合わせて延べ161台という国内最大規模のラリーとなった。
一方ラリーは、タイトコーナーが延々と連続し毎年リタイア車両が続出する「雁峰北」&「雁峰西」や、国内屈指のハイスピードコースの「作手北」など、タフで過酷なターマック(舗装路)コースが用意され、今年も選手たちのテクニックと精神力を試すサバイバルラリーの様相を呈した。
[ JN6クラス ] リタイア続出のラリーで奴田原文雄が2連覇
JN6クラスは、雨に祟られた初日にいきなり波乱が起きた。
新城ラリーが全日本に昇格した2007年から同ラリーで5度の優勝を誇る勝田範彦/足立さやか組(スバル・インプレッサ)が、SS2「雁峰北」でフロントタイヤが外れるというアクシデントに見舞われデイリタイア。さらにこのSS2のリピートステージとなるSS5では、新井敏弘/竹下紀子組(スバル・インプレッサ)と1秒を争うバトルを展開していた息子の新井大輝/田中直哉組(スバル・インプレッサ)が、リヤサスペンションを破損してしまいデイリタイアという結果に。
初日だけで13台中6台がデイリタイアするというサバイバル戦となったが、そのなかで着々と好タイムを刻みトップを堅守したのが、第8戦で年間チャンピオンを決めた奴田原文雄/佐藤忠宜組(三菱ランサーエボリューションⅩ)だ。初日、タイヤ選択を失敗した新井に対し、SS2を終えた時点で30秒以上のマージンを築き上げた奴田原は、2日目もそのタイム差を守り切り、昨年に続き新城ラリー2連覇を達成した。2位には新井敏弘、3位には2日目のデイトップを奪う力走を見せた高山仁/河野洋志組(スバル・インプレッサ)が入賞した。
[ JN5クラス ] 0.1秒を競う好バトルを川名賢が制す
JN5クラスは、すでに年間チャンピオンを決めている鎌田卓麻/市野諮組(スバルBRZ)がセッティングが合わず苦戦を強いられるなか、川名賢/高橋巧組(トヨタ86)、石田雅之/遠山裕美子組(トヨタ86)、上原利宏/佐瀬拓野組(ホンダ・シビック)の3台が、初日から0.1秒を争う好勝負をみせた。
2日目に入ると、この3台の13秒後方につけていた天野智之/井上裕紀子組(トヨタ・ヴィッツGRMNターボ)が一気にペースを上げ優勝争いに参戦。SSを走り終えるごとにトップが入れ替わるという激しい戦いとなったが、SS11で首位に浮上した川名がわずか1.9秒差で優勝。2位に天野、3位に上原がそれぞれ入賞した。
[ JN4クラス ] 竹内源樹が今季3勝目をマーク
改造範囲が狭いJN4クラスは、第8戦で年間チャンピオンを獲得した竹内源樹/加勢直毅組(スバルBRZ)が序盤からライバルを圧倒。県立新城総合公園に設定されたギャラリーSSではベテランの加納武彦/横手聡志組(スバルBRZ)に3度、林道ステージで1本ベストタイムを奪われるものの、2位に2分31秒7の大差をつけ今季3勝目を挙げた。
一方、加納と山岸健/渡邊晴子組(トヨタ86)による2位争いは、初日に山岸が加納を22.1秒引き離したものの、2日目に入って加納が好タイムを連発。最終SSを残し1.4秒差まで迫ったが、わずか0.7秒逃げ切った山岸が2位に入賞した。
[ JN3クラス ] ベテラン岡田孝一が独走で2連勝
JN3クラスは、第8戦で今季初優勝を飾った岡田孝一/石川美代子組(マツダ・デミオ)が、初日すべてのSSでベストタイムをマークし、2位の石川昌平/竹原静香組(トヨタ・ヴィッツ)に43.6秒の差をつけ折り返す。
「第8戦からマシンセッティングが良くなり、かなり走りやすくなった」という岡田は、2日目もライバルとの差を確実に広げ、今季2勝目とともに2日間ともデイトップを奪う快走でシーズンを締めくくった。
2位には石川が、チームメイト同士の戦いとなった3位争いは、ベテランの唐釜真一郎/松浦俊朗組(マツダ・デミオ)が入賞した。
[ JN1クラス ] 中村晃規がターマックラリー完全制覇
GAZOO RacingがWRCチャンピオン、トミ・マキネン氏を招へい
今年の新城ラリーの目玉は、なんといってもWRCで4年連続ドライバーズチャンピンを獲得したトミ・マキネン氏がゲストとして登場したことだろう。
1964年フィンランド生まれのマキネン氏は、1995年より三菱からフル参戦を果たし、翌1996年~1999年にかけて三菱ランサーエボリューション(グループA)で4度のドライバーズタイトルを獲得。1998年には三菱にマニュファクチャラーズタイトルをもたらした。三菱以外に日産やスバルでもステアリングを握り、日本で最も知名度の高いWRCドライバーのひとりだ。
そんなマキネン氏は、「ラリースタジアム」で、あいにくの雨でマシンコントロールが難しいヘビーウェット状態にもかかわらず、勝田範彦選手のグラベル仕様インプレッサでデモランを行い豪快なドリフト走行を披露。4万8000人の観客を魅了した。また、ステージではトークショーも行われ、WRCでの秘話やドライビングテクニックに関することなど、新城ラリーでしか聞けないトークが繰り広げられた。
さらに、運転トレーニング車両として開発され土曜日のみ展示された「GR 86X(クロス)」でギャラリーステージを走行したほか、「ラリーガーデン」ではサイン会を行い連日長蛇の列ができるなど、2日間とも数多くのイベントが用意された。
「日本のラリーファンと交流を深め、素晴らしい時間を過ごすことができました。これからも日本でもぜひラリー文化を深めていってほしいです」と、トークショーで語っていたマキネン氏。ラリーファンにとって貴重な2日間となった。
クラス別順位結果(上位3クルー)
1位 |
ドライバー/コ・ドライバー 奴田原 文雄/佐藤 忠宜 |
---|---|
三菱ランサーエボリューションⅩ | |
2位 |
ドライバー/コ・ドライバー 新井 敏弘/竹下 紀子 |
スバル・インプレッサ | |
3位 |
ドライバー/コ・ドライバー 高山 仁/河野 洋志 |
スバル・インプレッサ |
1位 |
ドライバー/コ・ドライバー 川名 賢/高橋 巧 |
---|---|
トヨタ86 | |
2位 |
ドライバー/コ・ドライバー 天野 智之/井上 裕紀子 |
トヨタ・ヴィッツGRMNターボ | |
3位 |
ドライバー/コ・ドライバー 上原 利宏/佐瀬 拓野 |
ホンダ・シビックタイプR |
1位 |
ドライバー/コ・ドライバー 竹内 源樹/加勢 直毅 |
---|---|
スバルBRZ | |
2位 |
ドライバー/コ・ドライバー 山岸 健/渡邉 晴子 |
トヨタ86 | |
3位 |
ドライバー/コ・ドライバー 加納 武彦/横手 聡志 |
スバルBRZ |
1位 |
ドライバー/コ・ドライバー 岡田 孝一/漆戸 あゆみ |
---|---|
マツダ・デミオ | |
2位 |
ドライバー/コ・ドライバー 石川 昌平/竹原 静香 |
トヨタ・ヴィッツRS | |
3位 |
ドライバー/コ・ドライバー 唐釜 真一郎/松浦 俊朗 |
マツダ・デミオ |
1位 |
ドライバー/コ・ドライバー 中村 晃規/古川 智崇 |
---|---|
マツダRX-8 | |
2位 |
ドライバー/コ・ドライバー 高篠 孝介/廣嶋 真 |
スズキ・スイフト | |
3位 |
ドライバー/コ・ドライバー 石城 健司/露木 明浩 |
マツダ・デミオ |
※JN2はクラス不成立
全日本ラリー選手権のクラス区分はこちらを参照ください。