スーパー耐久2013
スーパー耐久とは -身近なクルマでサーキット最速を競うモータースポーツ-
過去、富士スピードウェイでは、1988年まで『WEC in JAPAN』の名を冠し、『世界耐久選手権』の1戦として、グループCカーと呼ばれるスポーツカーによる耐久レースが開催されており、それとともに国内では『全日本耐久選手権』が開催されていた。しかし、それを源流とする『全日本スポーツプロトタイプカー耐久選手権』は、1992年にその幕を閉じることとなった。
それと前後するように、『N1耐久ラウンドシリーズ』を前身とする、『スーパー耐久シリーズ』が1991年にその歩みをスタートさせた。その名の通り、2~3名のドライバーが長距離(時間)を走る“耐久”形式のレースによって争われ、かつては北海道での“十勝24時間レース”がシリーズに組み込まれるなど、国内屈指の耐久シリーズとしての歴史を持っている。
本年の『スーパー耐久シリーズ』は、エンジン排気量や駆動方式によって、6つのクラスに分けられており、購入可能な“FIA GT3規定車両”によって争われる「GT3」クラスを筆頭に、ヴィッツやデミオ、フィットなど、いわゆる“コンパクトカー”がメインとなる「ST-5」クラスまで、幅広い層の参加者が参戦することが可能となっている。またタイヤは横浜ゴム社製のみが使用され、ドライコンディションではスリックタイヤと呼ばれる溝なしのレーシングタイヤが使用される。
F1を筆頭とする「フォーミュラカー」に対して、市販量産車ベースのレーシングカーは「ツーリングカー(通称「ハコ(箱)車」)と呼ばれる。このツーリングカーの最高峰は、国内では一般的には『スーパーGT』を指すが、『スーパーGT』車両は、実際にはカウルの中は完全なレース専用設計であり、「皮をかぶったフォーミュラカー」とさえいわれる。そういった意味では、『スーパー耐久シリーズ』こそが“ハコ”レースの最高峰ともいえるだろう。
エンジン、車体共にメーカー系ワークスなどが一から製作する『スーパーGT』と違い、『スーパー耐久シリーズ』は市販量産車ベースであり、車体、エンジンは一般車両そのものであるほか、改造範囲なども制限されているため、極端な言い方をすると、規定に沿って車両を製作すれば、この前まで街中を走っていた車両でレースに参戦することが出来る。そのため“プライベーター”といわれるチームが、自ら車両を製作し、参戦する形が主流となっている。このあたりが『スーパー耐久シリーズ』が親しみを持って“草レース”と呼ばれる所以となっている。
このことは、『スーパー耐久シリーズ』の「誰にでも参加出来るレース」というコンセプトを具現化しており、スーパーGTがプロフェッショナルなレースの頂点とすると、『スーパー耐久シリーズ』は、まさしく「参加型レース(“草の根レース”)」の頂点といえる。ヴィッツレースやその他ワンメイクレースなどで腕を磨いて来たアマチュアドライバーが、次に目指すのがこの『スーパー耐久シリーズ』と考えるのは自然な流れである。
参戦ドライバーの顔ぶれは、国内外で活躍したトップドライバーからアマチュアドライバーまで多彩なキャリアのドライバーが参戦しており、憧れのプロドライバーと同じフィールドで走れることに喜びを見出すアマチュアドライバーも少なからずいることであろう。当然観戦する側にとっては、有名なドライバーが参戦し、その走りを見られることは歓迎出来ることである。
そしてレース車両に使われているエアロパーツや機能部品などは、一般に購入することが出来る部品が数多く装着されており、それは自身の乗っているクルマをスーパー耐久車両に近い仕様にすることが可能であることを意味する。クルマ好きにとっては、サーキットは自車にフィードバック出来るノウハウ満載のレーシングカーが集まる場であり、クルマの楽しみを増幅させるための情報収集のフィールドでもあるのだ。
また、「クルマやレースをよく知らない」人にとっても、サーキットで色とりどりにカラーリングが施された車種バラエティ豊富なレーシングカー数十台が、目の前を走る光景は例えれば“車の運動会”であり、レーシングカーならではの迫力あるサウンドとあいまって、サーキットに一歩足を踏み入れれば、そこは日常から隔離された楽しみあふれる特別な空間となっていることだろう。
そして、サーキットごとに行われる地域の特色を活かした催しなども、サーキットに足を運ぶ楽しみの1つで、家族連れでもみんなで楽しむことが出来る。もちろん“レース通”という人にとっても、各クラスそれぞれに繰り広げられるポジション争いや、耐久レースならではのピット戦略など見どころは満載だ。ちなみに2012年の開幕戦では、メルセデスベンツやBMW、ポルシェといったヨーロッパの名車をはじめ19車種43台のエントリーを集めている。
2013年シリーズは、8か所のサーキットで開催が予定されており、昨年トヨタ自動車から発売された待望のスポーツカー『86』は、今年は去年以上の参戦台数が見込まれている。
レースを観たことがない人も、クルマ好きの人も、本格的なレース参戦を目指す人も、『スーパー耐久シリーズ』の“迫力”と“楽しさ”を体験しに、まずはサーキットに行くことからはじめてみよう!