スーパー耐久2013
GAZOO Racing 86、S耐初優勝!!(ST4)残り10分、秒差のマッチレースを制す!!スーパー耐久シリーズ2013 第5戦 スーパー耐久レースin岡山 2013年8月31日(土)・9月1日(日) 岡山国際サーキット
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「残り10分、セーフティカー(SC)この周で(ピットロードに)入るよ」。チーム無線を通した三塚監督の声に、GAZOO Racing SPIRITのピットの空気が凍りついた!
86号車GAZOO Racing TOYOTA86(影山正彦/井口卓人/蒲生尚弥)は、アンカーを務める蒲生選手の力強い走りでST4クラストップを走行中に、残り20分で雨がまた強くなりSCに。すぐ後ろにはライバルの93号車S2000、52号車86が、ぴったりとつけている。「このまま(SCが入ったまま、トップで)チェッカーを受けさせてくれ」。ベテランメカのつぶやきは、ピットにいる全員の思いだっただろう。しかしSCは解除され、残り10分、6Lapの超スプリントレースが始まった。トップを逃げる86号車蒲生選手の進路を、周回遅れの車両がふさぐ。52号車86を駆る大ベテランの大井選手が、93号車S2000をパスし、86号車との差は1秒を切る。息詰まる10分間が過ぎ、0.785秒差でST4クラストップチェッカーを受けたのは、86号車蒲生尚弥選手。GAZOO Racingにとって、スーパー耐久シリーズ初優勝を飾った瞬間だった!
前戦富士ラウンドで序盤トップを快走し、注目を浴びた86号車GAZOO Racing TOYOTA86。インターバルは3週間と短かったが、その間に鈴鹿で行われたスーパーGT第5戦ではSUBARU BRZ R&D SPORTを駆った井口選手が優勝。さらにOKINAWA-IMP SLSに乗った蒲生選手が2位。GAZOO Racingの若手ドライバー2人は5万人の大観衆の前で表彰台に上がっている。前週タイで行われた6時間耐久レースでもクラス優勝(総合2位)「ひょっとして今週末も」という思いは膨らんでいた。しかし、本当にその瞬間が訪れるとは……。
予選3番手、好位置からのスタートをトップバターの井口選手が決める。先行車のスピンに巻き込まれることなく、第2集団(ST4/ST5クラス)2番手に浮上。1回目のSC解除後、ピットインし、影山選手に交代。5位でコースに復帰するも、タイヤ内圧の問題によりバランスに苦しむ。ここで三塚監督は、早めにピットに入れてタイヤを交換し、最後のスティントを蒲生選手に託す作戦を採った。蒲生選手はこの日午前中に行われたGAZOO Racing 86/BRZ Race決勝において、開幕以来3連勝中の山野直也選手を抑えて初優勝を遂げた。この日最速の“86使い”にすべてを賭けたのだ。この作戦はズバリ的中し、蒲生選手はグングン順位を上げる。そして残り40分、93号車SKR ENGINEERING S2000(浜野彰彦/中村嘉宏)を捉え、トップに浮上。そして蒲生選手トップのまま3回目のSCが入り、「このままチェッカーで終了か」という空気が流れかけたところで冒頭の場面になるのである。
「神様、仏様、蒲生様」(影山選手)。「蒲生選手に感謝」(井口選手)。両ドライバーの正直な気持ちだ。当の蒲生選手本人は「クルマが速いことはわかっていたので、あとはミスなく走り切るだけでした」と謙虚だが、約1年前、ここ岡山国際サーキットでデビューしたGAZOO Racing SPIRITの86とメンバー1人1人が成長した結果、今日の勝利を掴んだのである。
天気予報を何回チェックしても「西日本中心に大雨」という情報のみ。練習走行の金曜日、パドックでは土曜日のスケジュールがすべてキャンセルになるとか、決勝レース自体の開催が危ういとか、いろいろな噂が飛び交う。土曜日の予選は、なんとかドライで行うことができたが、何1つ確実な情報のないまま決勝レースに突入した。
各車グリッドに向けてコースインした瞬間に降り出す雨。文字通り、誰にも先の読めない展開となった。
スタートはポールポジションの81号車GTNET ADVAN NISSAN GT-Rがトップで1コーナーに進入。28号車PETRONAS SYNTIUM SLS AMG GT3(Fariqe Hairuman/片岡龍也)、1号車PETRONAS SYNTIUM SLS AMG GT3(Melvin Moh/谷口信輝)とSLS勢が続く。このままGT3勢が順当にトップを走ると思われたが、いきなり番狂わせが起きた。ヘビーウエットでの4WDの優位性を発揮した、ST-2の20号車RSオガワADVANランサー(大橋正澄/阪口良平/花岡翔太)がGT3勢をパスし、総合トップに踊り出たのだ。まさに水を得た魚状態の20号車ランエボ。その後、6号車新菱オート☆DIXCELエボIX(冨桝朋広/菊地靖)が先頭に立ちトップの座をキープ。これには場内も大興奮。路面が乾きはじめ、徐々に後退するが、レース前半の主役は2台のランエボだった。
レース中盤、スタートから2時間を経過した時点の順位は28号車SLS、ジワジワと後方から追い上げて来た32号車KRMケーズフロンティアGT3R(飯田太陽/高木真一/Takashi)、24号車スリーボンド日産自動車大学校GT-R(藤井誠暢/佐々木大樹/GAMISAN)と続く。
チェッカーまで残り20分。再び雨脚が強くなる。ホームストレート上には停止車両もあり、この日3回目となるSCが入る。誰もがこのままチェッカーかと思った残り10分、SCが解除となり、残り6周の超スプリントレースに。結局、28号車SLSがそのまま逃げ切り、第2戦インジェ以来の総合優勝となった。2位は24号車GT-R、3位は1号車SLS。序盤をリードしたランエボ勢は20号車がST-2優勝。そして既報の通り、15台が参戦した激戦のST4クラスでは、86号車GAZOO Racing TOYOTA86(影山正彦/井口卓人/蒲生尚弥)が、スーパー耐久シリーズ参戦から12ヶ月を経て、初優勝を飾っている。
S2000、インテグラ勢力に86が加わって、参戦台数が1番多いST4クラスのトップ争いが激しさを増している。現在、第2戦インジェ、第4戦富士を制した41号車TRACY SPORTS ings S2000(植松忠雄/井入宏之)がランキングトップで、それを他のマシンが追っている。どのチームも打倒41号車S2000を掲げて岡山入りしており、中でも95号車リジカラS2000(松井猛敏/中島保典/市嶋樹)と、116号車W.S.ENGINEERING+CF亜衣(吉田靖之/清水康友/杉原直弥)は、必勝を期して水曜日から走り込みを行った。第2戦もてぎで41号車S2000を鮮やかに抜き去り、ウィナーとなった58号車ウィンマックスTEINワコーズKRP☆DC5(小林康一/関豊/木下淳)もトップへの返り咲きを狙う。
予選は95号車S2000が赤旗提示前にクリアラップをとり、トップに。まずは41号車に先制パンチを浴びせた。41号車S2000が2番手につける。「ライバルにマークされている雰囲気をすごく感じます」と41号車、植松選手のコメント。3位に付ける86号車86を交え、ガチンコの決勝レースが予想された。
明けて決勝レース。第2集団(ST4/ST5クラス)スタート直後1コーナーで、なんと95号車S2000がスピン。その後もセーフティカー(SC)導入によるピットのタイミングなどで、順位はめまぐるしく入れ替わる。代わって93号車SKR ENGINEERING S2000(浜野彰彦/中村嘉宏)がレース後半に浮上し、一時はトップに。93号車は86号車、52号車の2台の86に続き、クラス3位で表彰台に上り、ホンダ勢の意地を見せた。
41号車S2000はクラス12位、95号車S2000は同13位でレースを終えたが、どちらもしぶとく完走するところはさすがレース巧者。
次戦はホンダのホームコース鈴鹿で、86勢との手に汗握るバトルを期待したい。
GAZOO Racing 86を筆頭に、ここ岡山では86勢各チームが元気だ。大小さまざまなコーナーが存在するコースレイアウトが低重心を誇る86にマッチしているようで、コーナーではシャープな動きを見せる。
前戦富士ラウンドで5位を獲得した13号車ENDLESS DIJON ADVAN SAYAMA(Takamori博士/村田信博)の村田選手は「どのコーナーでも速い。1周をロスなくまとめることができれば、いいタイムを出すことができると思います。決勝はチームの総合力でしっかり帳尻を合わせたいと思います」と語る。米国NASCARや数々の国内レースでも経験豊かな両ドライバーを擁する52号車埼玉トヨペットGB with Revo(大井貴之/服部茂章)の大井選手も、86のハンドリングに好感触の様子。10年以上もS耐参戦を継続しており、今年インテグラから86にスイッチした18号車コスモソニック・FK・ings・FT86(浅野武夫/中島佑弥/森正行)の浅野選手(監督兼任)も「条件次第ではインテグラに勝てると思います。去年走らせていたからわかります」と非常にポジティブ。シリーズで1番86にマッチしているコースと言っても過言ではないだろう。予選は86号車の3番手を筆頭に、13号車が9番手で、その後ろ10番手に52号車、11番手に18号車と続き、中盤からの追い上げを狙う。
決勝で魅せたのは52号車86。大井選手と服部選手というベテランコンビで、ST-4のダンゴを抜け出していく。残り2時間を過ぎたところで、3番手まで浮上。最後の10分間のスプリントバトルで前を行く93号車SKR ENGINEERING(浜野彰彦/中村嘉宏)をパスし、クラストップの86号車86とその差1秒を切るバトルを経て、見事2位でチェッカーを受け、うれしい初表彰台を獲得した。
言うまでもなく、スーパー耐久レース初の86によるワンツーフィニッシュ。86のエントラント同士で底上げし、ポテンシャルアップを図るというGAZOO Racingの想いの実現に一歩近づいた。
前戦、富士ラウンドで17号車DIXCELアラゴスタ・NOPROデミオ(野上敏彦/小原健一/谷川達也)が初優勝を果たし、パドックのちょっとした話題に。というのは耐久レースでレシプロエンジンを搭載したマツダ車が優勝したのは、今回が初めてだからだ。17号車デミオのドライバーを務める野上選手は「前戦はチームワークの勝利です。耐久レースに精通したドライバー&スタッフがそれぞれいい仕事をし、作戦通りに走ることができました。ライバルのトラブルにも助けられましたね」と振り返る。
実質的な国内開幕戦となった第3戦は、36号車エンドレスアドバントラストヴィッツ(後藤比東至/井尻薫/木村正治)が制したが、2位は第3戦、第4戦ともに19号車BRP☆HYPER ECU C72制動屋J'Sフィット(奥村浩一/古宮正信/松田智也)。この3車種はそれぞれのキャラクターこそ違うものの、実力は非常に拮抗しており、どのチームが優勝してもおかしくない状況になっている。36号車ヴィッツのドライバーを務める後藤選手は「フィットはエンジンがパワフルで燃費がよく、デミオは軽さに優れるようです」とライバルを分析。トータルバランスで優れるヴィッツで第2戦以来の勝利を狙う。一方、19号車フィットをドライブする奥村選手は「前戦は他クラスのマシンとの接触により順位を落としてしまい、悔しい思いをしました。今回は勝ちたいです」と胸の内を熱く語る。
決勝は奥村選手の言葉通り、予選1位からスタートした19号車フィットがコンスタントな走りで17号車デミオを抑えてトップチェッカー。36号車ヴィッツが3位と、これまでのウィナーが表彰台を分け合った格好だ、ST-5クラスの混戦は、シリーズ終盤に向けてますます激しくなりそうだ。
グランドスタンド裏のイベント広場では、GAZOO Racingブースが出展。今回はGAZOO Racing 86/BRZ Race&Vitz Raceとの併催ということもあり、GAZOO Ladyも応援に駆け付け、表彰台でのフォトセッションなどのファンサービスに応じるなど、華やかな雰囲気に。イベント広場特設ステージではGAZOO Racingドライバー(影山選手/井口選手/蒲生選手)によるトークショーも行われ、スーパーGT第5戦鈴鹿1000km、GT300クラスで優勝した井口選手はもちろん、同レースで2位に入った地元岡山出身、蒲生選手もフレンドリーなトークを披露し、集まったファンたちを喜ばせていた。
31日(土)の予選終了後には、GAZOO Racingのサーキット走行体験イベント「ワクドキ!ちょっとサーキットを走ろう!」が本コース上で行われた。本イベントは、安全&気軽にサーキットドライブを楽しんでもらうために、GAZOO Racingが全国のサーキットで開催しているもの。リーズナブルな料金(走行体験3000円、同乗者1000円、1名のみ)かつ、軽装な装備で乗れるということもあり、人気のコンテンツとなっているのだ。朝9時の受け付け開始と同時に86(MT)の枠はあっという間に埋まるほどの人気で、昼頃にはほぼ満員御礼状態。今回はGAZOO Racingのドライバー3人(影山正彦選手/井口卓人選手/蒲生尚弥選手)による先導走行も行われ、走行終了後は参加者たちの笑顔がピットロードに溢れた。
秋の恒例、「TOYOTA GAZOO Racing FESTIVAL2013」(11月10日、富士スピードウェイ)がいよいよ近づいてきた。今年のテーマは「みんなのクルマ大募集!!」。主役は文字通り、これを読んでいるクルマ好きのみなさん。なんとTGRF史上初となる入場無料での開催が決まった。
来場者の投票によりコンテスト優秀車を決める「愛車自慢コンテスト」(展示のみ1500円、パレードランに参加する場合は3000円、9月27日〆切)や、広い富士スピードウェイの本コース上を86/BRZで埋め尽くす「世界最大級の86/BRZパレードラン」(1台3000円、10月4日〆切)、トヨタ車以外の参加もウェルカムの「オーナーズクラブミーティング」(1500円。パレードランに参加する場合は3000円。10月10日〆切)などが主な内容。
お楽しみのレーシングカーによるデモランも行われるそうなので、当日は友人や家族お誘い合わせの上、富士に集合!クルマ好きの笑顔で会場を埋め尽くそう。
TGRFの各コンテンツの詳細、申し込み方法はウェブサイトを確認しよう。
TGRF2013公式サイト http://www.tgrf.jp/
次戦は9月22日、WTCC(世界ツーリングカー選手権)と併催で行われる第6戦鈴鹿。世界有数のテクニカルかつ高速が求められるサーキットである鈴鹿で、40分×3ヒートの超スプリント・バトル!今回とは全く性質の違う戦略が求められる。トップでチェッカーを受け、その存在を世界にアピールするのはどのチームだ?
総合優勝
順位 | Car No. | 車両 | ドライバー |
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1位 | 28 | PETORONAS SYNTIUM SLS AMG GT3 | Fariqe Hairuman/片岡龍也 |
2位 | 24 | スリーボンド 日産自動車大学校GT-R | 藤井誠暢/佐々木大樹/GAMISAN |
3位 | 1 | PETORONAS SYNTIUM SLS AMG GT3 | Melvin Moh/谷口信輝 |
各クラス優勝
クラス | Car No. | 車両 | ドライバー |
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GT3 | 28 | PETORONAS SYNTIUM SLS AMG GT3 | Fariqe Hairuman/片岡龍也 |
ST-1 | 9 | Faust Racing BMW Z4 | 堀 主和ロバート/佐藤茂/山野直也 |
ST-2 | 20 | RSオガワADVANランサー | 大橋正澄/阪口良平/花岡翔太 |
ST-3 | 34 | assetテクノZ34 | 佐々木雅弘/前嶋秀司/安田裕信 |
ST-4 | 86 | GAZOO Racing TOYOTA86 | 影山正彦/井口卓人/蒲生尚弥 |
ST-5 | 19 | BRP☆HYPER ECU C72制動屋J'Sフィット | 奥村浩一/古宮正信/松田智也 |
GAZOO Racing SPIRITレース結果
ST-4 優勝
ST-4 | 86 | GAZOO Racing TOYOTA 86 | 影山正彦/井口卓人/蒲生尚弥 |
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