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2014年スーパーフォーミュラ新型エンジン
開発チーム インタビュー

レースを通じて、市販車の性能に直結する技術を開発する

第1回 環境性能とパワーを両立したエンジンへ(1/2)

2014年、スーパーフォーミュラはシャシーとエンジンが一新される。中でも、エンジンはこれまでのV型8気筒自然吸気から、直列4気筒直噴ターボへとまったく新しい仕様へと変更された。この新型エンジンには単なる規定変更に留まらないさまざまな意義が隠されているといわれる。今回は、この仕様の意味を解説。そして次回からは、トヨタ東富士研究所で新型エンジンの開発に知恵と汗を絞るエンジニア4人に、現在の開発状況や来季の目標などを語ってもらう。

なぜ今ターボなのか?

 2013年7月、日本のモータースポーツ界にひとつの節目が訪れるかもしれない。7月10日、全日本選手権スーパーフォーミュラシリーズを運営する日本レースプロモーション(JRP)は、2014年度より用いる新型車両SF14を公開した。これにより来季のトップフォーミュラレースはその様相を大きく変えることになるが、ただ単に「シャシーとエンジンが新しくなる」とだけ受け取っては時代に取り残されてしまうかもしれない。


 シャシーは、これまでのオリジナリティ溢れるスタイルからヨーロッパスタンダードの姿に切り替わり確かに目を引かれるが、新しいSF14の真髄はシャシーではなく、そこに搭載されるエンジンにある。1986年に国内トップ・フォーミュラカーレースとしてF3000シリーズが始まって以来、そこで用いられてきたのは排気量こそ3000ccから3400ccへ増えたものの、基本は自然吸気V型8気筒エンジンであった。だがSF14が搭載するのはコンパクトな排気量2000cc、直列4気筒ターボ過給エンジンなのだ。

「ターボ?」と違和感を憶えるファンも少なくはあるまい。80年代から90年代にかけてターボチャージャーは、小さな排気量のエンジンから大きなパワーを引き出すための工夫として、レーシングカーのみならず市販車にも多用された。実際、ターボカーは高性能車扱いされた。だがターボカーは、その後高性能を発揮するが燃費が悪い無駄の多いクルマとして存在感を失っていった。「高性能を得るためには燃費が悪いのは当然」という時代は終わり。「燃費が悪くては高性能には意味はない」という時代が訪れて、ターボカーは公道から、そしてサーキットから姿を消していったのである。

 今回公開されたSF14が搭載しているターボ過給エンジンは、かつてサーキットで暴れ回った「燃費無視のパワー優先ターボエンジン」ではない。SF14用エンジン開発に際して掲げられたテーマは、「環境性能、燃費性能とパワーを両立したエンジン」であった。SF14が搭載するのは、かつてのターボエンジンとはまったく異なるターボエンジンなのだ。

 とは言ってもターボ過給の基本的な仕組みは変わらない。通常は大気中に排出してしまう排気でタービンを回し、その動力でコンプレッサーを回して、吸気のために取り入れる大気を加圧し、エンジンのシリンダーに押し込む。かつての発想、すなわち燃料をターボチャージャーで強引に押し込んで燃焼させれば燃費は悪いだろうがその分パワーも出るだろうという発想はわかりやすい。それなのに、なぜ今、同じターボ過給の仕組みを使いながら燃費の良いターボエンジンが作れるのだろうか。