メニュー

2014年スーパーフォーミュラ新型エンジン
開発チーム インタビュー

誰もが経験のないエンジンを作れることは、エンジニアとして胸が躍りました

第2回 ゼロからスタートした新エンジンの開発(1/2)

2014年から使用される直4ターボエンジン。これは現行のV8自然吸気の延長線にないまったく新しい技術が必要になる。開発に当たるトヨタ東富士研究所のエンジニア4人が、ぶつかった課題はなんだったのか、そしてどう挑み、何を得たのだろうか?

開発し尽くされた現行のエンジン

2013年7月10日、新開発されたレーシングエンジンを搭載したSF14が初めての実走テストを行った
2013年7月10日、新開発されたレーシングエンジンを搭載した
SF14が初めての実走テストを行った
 2014年の全日本選手権スーパーフォーミュラシリーズ及びSUPER GTシリーズに向け、新開発されたレーシングエンジンが7月10日、初めての実走テストを行った。両シリーズとも、2014年度車両規則を全面的に改定した。今回開発されたエンジンはその新車両規定に沿って開発されたものである。
 開発スタッフの一人、宮川淳は言う。「いちエンジニアの立場で言うと、これだけがらりとレギュレーションが変わるのは初めてのことでした。これまでもレーシングエンジンを扱ってきましたが、すでにかなりの完成度があって、開発はやりつくされていました。でも今度の新しいエンジンはゼロから作るエンジンなので、仕事をすればするだけ成果が出てきます。エンジニアとしては楽しい仕事です」
 新しい車両規則では、エンジンは環境性能とパワーを両立させることを求められる。これは、少しでもパワーを追求して開発されてきた旧来のレーシングエンジンにとっては新しいテーマである。

テーマは「環境性能とパワーを両立」

田中淳哉
田中淳哉
 佐藤真之介は言う。「かつて自分はF1エンジンの開発に関わっていましたが、そのときには2万回転回す技術ってすごいなと自分で思っていました。でもいざ冷静になってみると、自動車のエンジンにとって2万回転回す技術が本当に必要なのだろうかと考えるようにもなりました。さらにリーマンショックがあって、レース部門は会社にとって無駄ではないかと言われるようにもなりました。でも、今回のエンジンは、未来の量産エンジンに直接役立つ技術を開発する仕事なんだと胸を張って語れます。それが嬉しいです」

 これは、今回のエンジン開発に関わる技術者に共通する思いだろう。かつてモータースポーツは、量産車の技術を進化させるために実験場として位置づけられていた。しかしあまりにも先鋭化したレース技術は量産車の技術からかけ離れてしまい、量産車との関係は希薄になっていた。だが今回の「環境性能とパワーを両立させる」というテーマは、モータースポーツ技術と量産技術の関係を変えることになる。

宮島直希
宮島直希
 田中淳哉も「量産車の課題である燃費を良くする技術が求められます。量産開発では、ほぼできあがっているものを小改良したり、そこからわずかでもコストを下げるというところに開発の重点が置かれます。でもレースの場合は短時間のうちに企画から始めていちから全部自分たちで作れるので思い切った挑戦ができます。こうしてレースエンジン開発を通して得た知見を量産部署にも展開できるはずなので、非常にやりがいのある仕事です」と言う。
 新しいエンジンは排気量2000cc、直列4気筒、直噴ターボ過給という基本コンセプトに基づいて開発された。宮島直希は言う。「直噴だとか過給だとか、周囲の人たちもほとんど経験のないレーシングエンジンを作れるというのはチャレンジングだしエンジニアとして楽しい仕事だなと胸躍りました」