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Kamui's Race Diary 2015
スーパーフォーミュラ 第5戦 オートポリス

Kamui's Race Diary 2015 スーパーフォーミュラ 第5戦 オートポリス

僕は失うものはなにもないので、
とにかく勝利を目指して頑張ります。

 今回のオートポリスもいつもどおり金曜日にサーキット入りしました。
 じつは九州に来る前に、チームの御殿場工場でもてぎ戦の振り返りと今回のセッティングの方向性など話しをしてきました。現状、僕たちのクルマはスピードが不足しているのははっきりしています。オートポリスでは走行時間を最大限使うために、今回はいつも以上にさらに大胆にトライしていこうとエンジニアと決めてきました。また、チームミーティングにも参加して、ピット作業などについても話しあうことができ、一致団結してオートポリスに乗り込んできました。

 土曜日朝のフリー走行、走りはじめから以前よりフロントが入るようになったんですが、その一方で、リヤのトラクション不足が深刻でした。アクセルを踏むとトラクションがかからずリヤが横に流れてしまう。この傾向は前回のもてぎでもあったんですが、オートポリスではセクター3でアクセルを踏めず、タイムをロスしていました。セクター1、2に比べてもタイムを失っている分が多く、フリー走行の間に車高や空力を変えたりしながらトラクション改善に費やしていました。

 予選までのインターバルでさらにセッティングを進めておいたのですが、Q1の最初のアタックでもトラクション不足がはっきりしていたので、2回目のアタックに向けてトラクション改善を捨てて現状のいいところを伸ばすクルマの方向性を変えました。それでアタックに入ったんですが、ナレイン(・カーティケヤン)選手のトラフィックにひっかかって、なんとかぎりぎりでタイムを出すことができました。
 Q2に向けたインターバルの間に、Q1の途中では出来なかった作業をして、さらにセッティングを変更。Q3ではそこからさらに足回りを変更して、この週末一番いいクルマにはなったと思います。ただ、ぶっつけ本番な状況だったので、なんとかまとめてタイムを出した状況でした。僕の方が石浦(宏明)選手よりも先にアタックを終えたので、その時点で1番と言われましたが、まだ石浦選手がアタック中とも聞いたので、間違いなく彼が来るやろうな、と思っていたんです。案の定、ポールを持って行かれて、ヘルメットの中でまたかと言ってました。

 総体的にみて予選でもセクター3で負けていました。僕自身まだ走り方が分かっていないので、それだけでコンマ3,4秒は見つけられそうだし、クルマのトラクション不足も重なっていた。予選中に石浦選手のオンボード映像が流れたのですが、ステアリングの修正がまったくなかった。エンジニアにもすぐに無線で「乗りやすそうなクルマですね」と感想を伝えたのですが、僕なんか修正だらけですから。彼らはちょっと次元が違うところにいるのかなという印象です。
 日曜日の決勝レースはフロントロウからのスタートなので、ともかくスタート勝負と決めていました。予選後の会見でもお話させていただいたんですが、とにかく燃料が重い状態だと、普通にやってももてぎと同じような展開にしかならない。だから思い切ってやってみて、今後につながることをトライしようと自分で決めていたんです。
 実際日曜朝、フリー走行を走ってみても、燃料が重いと、石浦選手や(中嶋)一貴選手に勝てるほど速くないというのがはっきりしていました。だから決勝レースの戦略は僕が決めました。具体的には軽い燃料でスタートして、トップに立ち10秒離すというものでした。給油時間が長くなったり、ピットインできるタイミングの幅が非常に狭いということは分かっていましたが、勝つためのアグレッシブな戦略でした。
 実際、スタートのリアクションは悪くなかった、というかデータ的にはチームのレコードぐらいよかった。石浦選手の前に出たので、これは行ったと思いながら1コーナーにターンインしたら一貴選手がいました(苦笑)。ブラインドでまったく見えてなかったので驚きました。あのままステアリング切ってたら間違いなく当たってたのでひくしかなかったです。僕と一貴選手に挟まれた石浦選手は、「たぶん可夢偉には一貴が見えてないだろうな」と思ったそうです。

 ともかくスタートで前に出ることが勝負だったので、2番手になった時点ここで先にピットインでロスする時間を築いておく作戦から、ピットイン後にハイペースで追いかけて逆転を狙う戦略に変わったんですが、29周目にタイヤ交換と給油作業を終えて、自分のペースで走ろうと思ったら、ドライブスルーペナルティで後退していた(アンドレ・)ロッテラー選手に詰まってしまった。彼がピットインするまでの毎ラップ1秒以上ロスしてしまいました。
 スーパーフォーミュラもF1もダウンフォースを効かせて走るクルマだと、けっこう距離があっても前のクルマが乱した空気の流れの影響を受けるのでどうしても近づけない。ペース的に速くても、とにかく抜くことができない。さらにコースのレイアウト的にもいまのフォーミュラだとなかなか抜く場所がないことを痛感しました。最終的なトップとのギャップが9.3秒だったので、もし自分のペースで走れていたらトップ2台には追いついていたとは思います。
 ともかく朝のフリー走行でペース的に負けていたし、普通にいっても勝てないと分かっていたのでチャレンジした結果の3位ですからまあ可もなく不可もなくという結果ですが、富士、もてぎと結果につながっていなかったので、悪い流れを断ち切れたと思います。平川(亮)選手も4位に入ったので、チームとしても今季のベストリザルトを手に入れることができました。
 ここ数戦、同じような展開が続いています。今回もドタバタしながらのこのポジションなので、自分としてはそろそろ走りはじめからいいセッティングで戦いたい。もしかしたら次こそはチャンスがあるかもしれません。残り2戦、僕は失うものはなにもないので、とにかく勝利を目指して頑張ります。

 今回オートポリスで初めてのレースでしたが、沢山のご声援本当にありがとうございました。とくに今回は決勝日が誕生日だったので、現地やSNSでお祝いしてくれたファンのみなさま、トヨタ自動車、チームルマン、そしてスポンサーのみなさまありがとうございました。何回も誕生日をお祝いしていただいたので、一気に年を取りました 笑。ともかく20代最後の年もみなさまに楽しんでもらえるように大暴れしたいと思います。

  • チームミーティングにも参加して、ピット作業などについても話しあう
  • チームエンジニアと話す小林可夢偉
  • ピット作業中のNo.8 KYGNUS SUNOCO Team LeMans
  • 決勝レースを走行中のNo.8 KYGNUS SUNOCO Team LeMans
  • 決勝レースを走行中のNo.8 KYGNUS SUNOCO Team LeMans
  • 3位で表彰台に立つ小林可夢偉