メニュー

Kamui's Race Diary 2015
スーパーフォーミュラ 第7戦(最終戦)鈴鹿

Kamui's Race Diary 2015 スーパーフォーミュラ 第7戦(最終戦)鈴鹿

今年の僕たちはずっと、あとちょっと届かないままだった。
それは僕自身のシーズンを通しての悔しさです。

 最終戦の鈴鹿は特別な2レース制ということで、僕自身初めての1日2レースなので、すごく楽しみにしていました。おかげさまで、レース1で表彰台を獲得できました。本当は予選でポールポジションを獲って、日曜日は2レースとも勝って、気分良くシーズンを終わらせたかったんですが、そう簡単ではなかったですね。みなさまの期待とは違う結果になってしまい申し訳ないですが、寒い雨のなかでもサーキットでは本当にたくさんのご声援をいただきありがとうございました。

 今回、持ち込んだクルマは前回のSUGOとほぼ同じセッティングでした。予選前のフリー走行では燃料を積んだ状態でのクルマを確認しながら、SUGOの結果をふまえて試したいセッティングをトライ。その後ダウンフォースレベルを確認したり、足回りのセッティングを変えてみたりしたのですが、15番手というタイム以上に、いまいちクルマが速くなくて、違和感がある状況でした。結局、走行後タイヤが作動温度領域に入っていないことが原因と判明しました。僕たちは第2戦以降全レースでQ3に進んでいたのですが、その反面、フリー走行で試せる新品タイヤをもっていないから、かなり走り込んだ中古タイヤに頼るしかない状況で、いま振り返ると、もう朝の時点から予選での雲行きが怪しかったですね。
 ともかく日曜日が雨という予報だったので、ひとつでも上の順位を狙って予選に向かいました。
 レース1のグリッドが決まる予選Q1、最初のアタックは中古タイヤで16番手。じつはこの時点で正直諦め状態でした。結局なにをやっても1分40秒台を切ることができなかったんです。
 ところが、新品タイヤを履いた次のアタックで、なんと2秒もタイムが上がって1分38秒台の4番手。正直2秒違うと、もうまったく別の世界なんです。もしフリー走行からこのグリップで走り始めることができていれば、クルマを作り込んでトップと戦えていたのに、残念な4番手でした。
 とくにスタート順位に関係ないQ2は、無難に走ったら2番手だったので、もしかしたらレース2のポールを狙えるかもとQ3は攻めたけれど、結局5番手でした。なぜか右リヤタイヤだけうまく熱が入っていませんでした。それにホンダ勢がすごくタイムを挙げてきたので、いずれにせよポールは難しかったと思いますが、なんとも中途半端な予選になってしまいました。

 日曜日は予報通りの雨。ただもしスタンディングスタートになったらチャンスがあると思っていました。雨のスタートってすごく難しいんです。ちょっとでもホイールスピンをさせるともうダメなので、まずはレース1の決勝前の8分間のフォームアップで、とにかくスタート練習だけをしていました。
 ところがグリッドウオーク中にセーフティーカースタートが決定。スタートからずっと4番手を走行していましたが、残り5周ぐらいで雨足が強くなってまた水しぶきで前が見えなくなったんです。そうしたらダンロップコーナーで水しぶきのなかをパーツが飛んだのが見えたんで、とにかくアクセルを抜いて通り抜けると3番手のクルマがクラッシュしていて、3位が転がり込んできました。クルマとしてはウエットのグリップ感は悪くないし、レース1のペースを見ても勝負はできることが分かっていたので、レース2もスタートに懸けていました。
 レース1と同じようにウオームアップでスタート練習をして、そして実際に希望していたスタンディングスタートになったのですが、まさかのハプニングが待っていました。
 スタートに向けてブレーキを温めたところ、フロントブレーキからスモークが出ていて、スタートシグナルが4つまで点灯したところで、僕のクルマがこのままスタートしたら危険と判断されてスタートやりなおし。さらにその原因を作ったということで最後尾に回されてしまいました。雨のなかの最後尾スタートはとにかく前が見えないし何もできない状況なので、さすがにこれはショックでした。
 でも大勢のファンの方が応援してくれているし、特にレース2では、わざわざ僕の地元尼崎の応援団が、阪神電車の尼崎駅から近鉄電車の白子駅まで貸し切りの直通電車を用意して鈴鹿に来てくれたので、なんとか走らないとアカンはと思ってレースをスタートしました。情けない走りをしたら彼らからどんな文句言われるかわかりませんから(笑)
 レース序盤はとにかく水しぶきでまったく見えなくて、ちょっと落ち着いてきてから何台か抜いてきました。ありがたいことにレース後、スタンドの応援団のみなさんから「ナイスファイト」とか「かっこよかった」と声をかけてくれました。決して理想としていた展開ではなかったけれど、ある意味レース2はスタートのハプニングからチェッカーまで、エンターテイメントとしては楽しんでもらえたと思います。ただ、レースは思い出を残すだけじゃダメで、きちんと結果も残さないといけない。ファンのみなさまの期待にも応える結果を残せなかったことは非常に申し訳ないと感じています。
 今年1年を通して感じたことは、スーパーフォーミュラはすごくシビアな戦いをしていて、まあこんなもんやろ、といったレベルでは絶対ポールは獲れないし、勝つこともできない。ドライバー、チーム、エンジニア、クルマ、すべてのピースが完璧に揃って初めてトップを狙える。今年の僕たちはずっと、あとちょっと届かないままだった。それは僕自身のシーズンを通しての悔しさです。この悔しさはきちんと結果で晴らしたいと思っています。

 レース後、シーズンフィナーレイベントで、ルーキーオブザーイヤー賞をいただきました。29歳になってルーキーとして賞をいただけるとは思っていませんでした。びっくりしたと同時にじつはちょっと嬉しかったです。JRP、チームルマン、トヨタ自動車ならびに多くの関係者のみなさまありがとうございました。
 また、最後にあらためて今年一年を通して応援してくれたファンのみなさまにも本当に感謝しています。冬のテストから最終戦の鈴鹿まで、どんなお天気でも行く先々でびっくりするぐらい沢山のかたがガレージ裏で待っていてくれたり、ピットウオークのサイン会でも沢山の人が並んでくれて、うれしかったです。これからも応援よろしくお願いいたします。

  • 山田 健二エンジニアと話す小林可夢偉
  • ピット作業中のNo.8 KYGNUS SUNOCO Team LeMans
  • 決勝レースを走行中のNo.8 KYGNUS SUNOCO Team LeMans
  • Race1で表彰台を獲得した小林可夢偉
  • ルーキーオブザーイヤー賞に輝いた小林可夢偉