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本格レース漫画「眠らぬ虎」の裏側に迫る 第1回(1/2)
中嶋一貴選手を見て、この人なら主人公に描けると感じました

中嶋一貴選手を見て、この人ならマンガ「眠らぬ虎」の主人公に描けると感じました

ル・マンはメーカーごとに空気感が違う千葉きよかず

おふたりは「眠らぬ虎」を描かれる前、2014年のル・マン24時間レースに実際に取材に行かれたそうですね。
まず、ル・マンの印象をお聞かせください。

村上もとか(以下村上) ル・マン24時間レースのことは、1971年に公開されたスティーブ・マックイーン主演の映画「栄光のル・マン」がやはり原点ですね。実は「赤いペガサス(1977-79年)」というF1マンガを書く前に、ル・マンを題材にした読み切りマンガも描いているんです。でも、その時はル・マンに取材に行ってないんですよ(苦笑)。神田の古書店でフランスの書籍やマンガなどの資料を探してきて、それと首っ引きで当時のコースやスタンドを描きました。それから年月が経って、今回"トヨタのル・マン"をテーマに、初めて現地の取材をしたわけです。

公開車検で盛り上がるル・マン市リパブリック広場の様子

現代のル・マン24時間を見られた感想はいかがでしたか?

村上 モータースポーツ漫画からしばらく離れてましたから、久しぶりにサーキットに行って、しかもル・マンですからね。あの独特の雰囲気に感激しましたね。「わー、観覧車だ! 夜もクルマが走ってる!!」って。まるで観光客ですね(笑)。

千葉きよかず(以下千葉) クルマに関しては、ボディの中央後方に板のようなウイングが立ってますね。シャークフィンっていうんですか、あれがレースカーで当たり前になってから車両細部をじっくりと見たのは初めてだったので、ちょっと違和感がありましたね。

村上 そうですね。クルマがこんなにも変わっているんだって思いましたね。クルマもそうですが、僕は観客が凄かったことが印象的でした。ヨーロッパ中から集まってくるんですね。旗立てて、お酒飲んで、ル・マンの1週間を大いに楽しんでいる。こちらの人たちにとってモータースポーツは根付いている文化なんだなと感じました。

千葉 本当に、ル・マンの街ぐるみで盛り上がっている感じがビックリでしたね。

村上 レースのすべてを楽しもうとしてましたね。こういうバックボーンがあるからモータースポーツの歴史が続くんだなと。日本では、僕らが若い頃はクルマへの憧れもあってレースを見ていて、F1ブームというのもありました。
そういった一時的な物ではなく、日本には素晴らしいクルマを作る企業が、いっぱいあるのですから、もっとモータースポーツを楽しむって文化が日本にも根付いて欲しい。今回はトヨタさんの協力もあって機会を得ましたので、我々も微力ながらマンガという力で、またモータースポーツに注目してもらえるようこの作品を描きたい。それと、レースの好きなファンの評価に耐える作品にしたいですね。

ドライバーズパレードで盛り上がるル・マン市サン・ジュリアン・デュマン大聖堂とジャコバン広場

昨年のル・マン、レースの現場としてはいかがでしたか?

村上 ル・マンのピット裏は、各チームにガードマンの様な人がいて、にらみつけるように追い払われて、僕らなどでは覗き込むこともできませんでした(苦笑)。でも、そんな点も、興味深かったですね。

千葉 ピットの雰囲気ですが、トヨタ、アウディ、ポルシェとメーカーごとに空気感というか、カラーが違うと実感しましたね。マンガの作画担当としては、その空気感を表すのが難しそうだなと感じました。

村上 そう、ピット裏のホスピタリティブースの雰囲気も違いましたね。海外メーカーのは2階建て豪華絢爛、シャンパン片手の美女がいて(笑)、まさに社交の場というか。トヨタさんのは質実剛健というか、必要な要素だけきっちりあるというか。でも、僕にはそんな日本的な雰囲気のが馴染むんですよ(笑)。

夜のサルト・サーキット


目次ページ

  1. 第1回:中嶋一貴選手を見て、この人なら主人公に描けると感じました(2015年3月12日公開)
    1. 1. ル・マンはメーカーごとに空気感が違う
    2. 2. 中嶋選手に"ギャップ萌え"を感じました(笑)

  2. 第2回:"眠らぬ虎"は描いている僕らもおもしろい(2015年3月19日公開)
    1. 3. 僕の作風はモータースポーツマンガで作られたんです
    2. 4. 村上先生とマンガが描きたくて、ありったけの絵を送りました

  3. 第3回:マンガ"眠らぬ虎"ができるまで(2015年3月26日公開)
    1. 5. 人間ドラマが詰まっているクルマは描き応えがあります