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本格レース漫画「眠らぬ虎」の裏側に迫る 第1回(2/2)
中嶋一貴選手を見て、この人なら主人公に描けると感じました

中嶋一貴選手を見て、この人ならマンガ「眠らぬ虎」の主人公に描けると感じました

中嶋選手に"ギャップ萌え"を感じました(笑)村上もとか

ピット取材は難航されたようですが、ル・マン参戦ドライバー、例えば中嶋一貴選手にはお話を聞けたんですよね?

村上 実は、最初、中嶋選手にあいさつしないで、傍らで他のジャーナリストとの会話を黙って聞いていたんです。もちろん、改めてお話を聞く機会には名乗りましたけどね。この時は、しっかり観察させてもらいました。すると「この人、おもしろいな」と感じて、どんどん興味がわいてきたんです。サーキットでのレーシングドライバーって、ピリピリして自分の世界に入っちゃうというのがこれまでのイメージでした。
それが中嶋選手は、何気なしに座っていて、スマホいじってたり、ホント気軽な感じで軽食サービスのパンをつまんで食べてたり、最初はトヨタの若い社員さんかと思ったくらい(笑)。
でも、それを見ていたら「この人なら(漫画の主人公に)描けるな」って思ったんですよ。僕が思い描いていたビッグレースに出るトップドライバーというイメージを、全部見事に破ってくれるような人でした。これはマンガとして絵になる人だと思いました。

千葉 ベタな言い方ですが、中嶋選手ってその辺にいてもおかしくない今風の若者で、自然体なんです。最初の印象はいわゆる"戦っている男"に見えなかった。それが逆に新鮮でした。
でも、ヘルメットを被るとキリッとする。資料に使っている間近で撮った写真でも感じましたが、シールドの隙間から覗く目に"凄み"を感じるんですよね。実際の顔は見えないのですが、戦闘状態に入っているあろう中嶋選手には"戦っている男"が感じられる。『彼があのホスピタリティにいた青年なのか?』って...。

千葉きよかず先生曰く、「その辺にいてもおかしくない今風の若者」の中嶋一貴選手

村上 ある種の"ギャップ萌え"だよね(笑)。

千葉 その通りですね(笑)。

千葉きよかず先生曰く、「戦っている男」が感じられる中嶋一貴選手

ハイブリッドカーのエンジン音をどう描き分けるか難しいです千葉きよかず

さて、実際のレースは波乱の展開でしたが、どうお感じになりましたか?

村上 昨年のル・マン前はTS040 HYBRIDがシルバーストン、スパ・フランコルシャンと連勝して、凄く強いと感じていました。トヨタの方が「今年はル・マンで勝ちますよ」と言うもんですし、ル・マンに来ても速くて、中嶋選手がポールポジション獲ってしまうし、「なんか(ドラマがなくて)漫画にならないなぁ」って思っていて、今描いている「眠らぬ虎」とは全然違うストーリーを考えていたくらいでした(苦笑)。
レース中、これはもう行けるだろうとちょっとひと眠りして起きたら、アクシデント(トップの7号車がトラブルでストップ)と聞いて...。トヨタさんには申し訳ないですが、やはり「レースってドラマチックだなぁ」って。今年は本当にトヨタが速くて、僕もみんなも勝って当然と思っていたのに、やはりル・マンは"特別な場所"なんですね。
そして「この悔しさを持って来年また挑戦する」とイメージしたとき、「眠らぬ虎」を描けると手応えがありました。本当にトヨタさんには申し訳ないですが(苦笑)。

千葉 「赤いペガサスII・翔(1998-90年)」を描いた時に、鈴鹿でF1を取材したんですが、音が凄かったんです。耳がおかしくなるくらい。まだV12、V10とか自然吸気エンジンがガンガン走っていた時代ですから。
それがレースだと思っていましたから、ル・マンに行ってまず音が違うと思いました。TS040 HYBRIDをはじめトップクラスが、皆ハイブリットですからね、速いクルマだけど静かなんです。『グワッ』という凶暴な音ではなく、重い感じの音で速いというのは新鮮でした。

村上 そう、確かに音と匂いが違いますね。下のGTクラスのがうるさかったけど、僕はこちらの音に懐かしさも感じましたね。

千葉 その静かなハイブリッドカーですが、トヨタ、アウディ、ポルシェと排気量やターボの有無、ディーゼルとガソリンとエンジンの形態は違うから、微妙にみんな音が違うんです。ここが凄くおもしろかったですね。

ル・マンには様々なカテゴリのレース車両があり、音が異なっている

村上 漫画だとそれを擬音や描き文字で表現しなきゃいけないね。

千葉F1の時はみんな「ギャギャギャーン!」で良かったけど...。

村上 そう描いたら嘘だよね(笑)。

千葉 「ブーン!」も『ウ』に濁点か、『ブ』なのかって。

村上 しかもハイブリッド感を盛り込まなきゃ(笑)。

千葉 だから、作中にコルベット(GTクラスのV8エンジン)を描くときは「ギャーン!」でいいから楽ですね(笑)。

「眠らぬ虎」スペシャル、次回の第2回は村上もとか先生、千葉きよかず先生のインタビュー後編としておふたりのマンガとモータースポーツの原点、そして「眠らぬ虎」今後の見どころなどを語っていただきます。続いての第3回は「眠らぬ虎」の制作現場に訪問。第2回の生原稿やまだ制作が始まったばかりの第3回(!?)の原稿など見逃せないシーンが続出です。お楽しみに!

<眠らぬ虎情報>

ル・マン24時間レース コミック「眠らぬ虎」が連載されている「グランドジャンプPREMIUM」は全国書店、コンビニエンス、ネット書店でただいま3月号(第2回掲載号)が発売中です。「眠らぬ虎」第1回が掲載の1月号はネット書店でバックナンバーとしてご注文いただけます。また、グランドジャンプ公式ウェブサイト GJ.WEB(http://grandjump.shueisha.co.jp/)では第1回が試し読みできます。


目次ページ

  1. 第1回:中嶋一貴選手を見て、この人なら主人公に描けると感じました(2015年3月12日公開)
    1. 1. ル・マンはメーカーごとに空気感が違う
    2. 2. 中嶋選手に"ギャップ萌え"を感じました(笑)

  2. 第2回:"眠らぬ虎"は描いている僕らもおもしろい(2015年3月19日公開)
    1. 3. 僕の作風はモータースポーツマンガで作られたんです
    2. 4. 村上先生とマンガが描きたくて、ありったけの絵を送りました

  3. 第3回:マンガ"眠らぬ虎"ができるまで(2015年3月26日公開)
    1. 5. 人間ドラマが詰まっているクルマは描き応えがあります