特集 > 2005年特集 > グッドウッド・フェスティバル > 3.時代を駆け抜けたドライバーが語る“あの頃”と“今”
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toyota-f1.comインタビュー
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片山右京――
「モータースポーツが教えてくれたこと―夢の実現のために」
コックピットに座ると瞬時に感覚が蘇る。  

● 右京さんをはじめとするF1ドライバーにあこがれて、将来F1を目指したいと思っている少年はたくさんいると思います。その夢を本当に実現するためには、いったいどうしたらいいのか、右京さんからアドバイスをいただければと思います。
「いや、それは実は簡単で、とにかくあきらめないことなんですよ。よく子どもたちに言うんですけど、最初から自転車が乗れた人ってひとりもいないじゃないですか? 逆上がりだって跳び箱だって水泳だってみんな一生懸命練習してできるようになったよね、って言ってあげるんです。でもなぜか大人になると、お金がないとかコネがないとか歳だからとか、何かをやる前に先にもう言い訳を用意しちゃっているんですよね。それで夢を失ってしまうんです。それに会社がつぶれたらどうしようとかクビになったり、お金がなくなったらどうしようといった恐怖とか、あれが欲しいこれが欲しいという欲求とか、とにかくお金だけが成功の価値観になったりして、その結果、自分の挑戦とか夢をなくしていっちゃうわけですよね。でもそれはみんなウソで、子どものころに抱いていた夢というのは絶対になくならない。つまり、大事なこととか答えというのは自分の中にあるものなんですよね。だからあきらめない、夢を追い続けることを止めない、ということが大切なんです。そのためにはもちろんある程度ストイックに鍛錬しなければならないこともあるわけだけど、でもそれができれば世の中のたいていのことは実は大したことじゃないんだよ、と言いたいですね。歩き続ければエベレストの頂上だって辿り着くし――F1だって高校の進路指導の先生に“俺はF1に乗ります”って言ったら本当に乗れたしね。いろんなことは自分がやればできる、それなのにみんなはただそれをやらない、っていうね。だからそういった部分で流されずに、自分なりの幸せの物差しや価値観を持つことだろうね。それから頭で考えすぎないことも大切。映画を見て感動したり音楽を聴いて鳥肌が立ったりするでしょ? そういった自分のセンサーを上手に使っていると自分にとっての幸せがどこにあるかがわかるからね。だからそれに従っていけば、子どものころにやりたかったこととか純粋な気持ちっていうのはずっと維持できる。そうすれば夢に近づけるはずなんですよね」

原動力は“好きだ”ということ、そして“夢を持つ”こと
● 右京さんは登山はもちろんのこと、いろいろなレースやラリーに出たりして、ものすごい行動力だと思います。そういう風にご自分を駆り立てているものというのは何なのでしょうか?
「まず、個人として挑戦することが好きだということだね。それに自分にもまだ夢があり、まだその夢の途中だから努力もできる。若い頃は彼女に振られたり大学受験に落ちたりしたことを逆にバネにしてがんばっていたこともありますよ。今は両親のいない子どもたちとか、病気の子どもたちを励ます活動をやっていて――日本だとチャリティが売名行為のように思われる部分もあるけどね――そういった子どもたちに言っているのは、“人生に失敗なんてない。仮にあったとしても結果よりももっと大切なことがあるんだ”と伝えています。そこで挑戦することが大事なんだということを知ってもらいたいですよね」

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● では右京さんの今の夢は?
「2つあるんです。ひとつはみんながもっと優しくなれること――そのためにはすごく強くならなければならないんだけどね。当たり前のことなんだけど、階段で前の人が転んだら支えてあげるとか、横断歩道でお年寄りが困っていたら手を貸してあげるとか、目が見えない人が困っていたら声をかけてあげるとか――そういった意味で人に優しくなれることだね。そういったことが広まれば、モータースポーツにしても、街の中で練習して事故を起こして迷惑をかけるとか、そういったことは起こらなくなるはずだし――人との関わり合いの中でお互いに優しくなれればいい、そういったことに力を注いでいきたいですね。これが環境問題を含めた“エコ”の部分だとするなら、もうひとつはもっと“エゴ”の部分の夢だね。誰かが褒めてくれるわけでもないし、金メダルをもらえるわけでもなく、純粋に自分のためなんだけど――厳冬期に無酸素で世界で一番高いところに昇りたいとか、8000メートル級の14座をすべて登頂成功した日本人がいないので、それを実現したいとか――子どものころからずっと抱いてきた夢だけど、これをなんとか成し遂げてみたいですね」

● 最後に、右京さんにとってモータースポーツとは何でしょう?
「それは僕のね……、存在証明かな。日本でチャンピオンになって世界に行ったとき、“世界は全然違うんだ”というほどの大きな世界を見せてもらえた。小さなことで言えば、それこそモナコに住んで年収数億で税金はいらなくてクルマもたくさん持って、っていう世界を実現できたけど、でもそれ以上に重要な意味があったのは、セナやマンセル、シューマッハーと一緒にF1を走ることができたこと。相模原のちっぽけな田舎で育って肥だめに落ちて一週間くさかった自分がね、根性でがんばって歯を食いしばって闘えば、何か光明が見えてくる世界なんだという、そういうものを見せてくれたもの――ある意味で僕にとっての人生の教育システムだった。みんなが真摯な態度で目標に向かっていたしね。僕は凡人だったけど、あるとき“神風”と呼ばれてセナやシューマッハーについていこうと思った自分を誇りに思う。F1レーサーとしての秒針は止まっているけど、自分の中にある火は全然消えていない。だからまだまだこれからも、がんばりますよ」

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CONTENTS

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2.グッドウッドで蘇ったトヨタの名車たち 詳細..
4.F1を通じて伝えたい“走り続けるトヨタの意志” 詳細..