'08 - '10

LFA, an evolved vehicle through Nürburgring.
- LFAを鍛えたのはニュルブルクリンクだった -

2015.03.30 ニュルブルクリンクへの挑戦2015

10年以上の開発期間を経て登場したLFAは2009年の東京モーターショーで発表、限定500台を生産・販売した。生産終了後もレクサス「F」を象徴するモデルであると共に、開発で得られた知見は、その後のトヨタ/レクサスのクルマ作りに大きな影響を与えている。
500psオーバーのV10エンジン、トランスアクスル方式のFR、カーボンモノコックのボディなど、これまでトヨタ/レクサスが経験したことのない領域のモデルを開発する上で選んだテストステージが、ニュルブルクリンク・ノルドシュライフェ(以下ニュル)であった。
このページでは、ニュルへの挑戦がどのように車両開発へつながっていたのか、過酷なレースへの参戦を振り返りながら紹介する。

2008年 first history クルマを熟成させるために試作車でレースに出る

Nürburgring2008

2008年、ニュル24時間耐久レースSP8クラスに「LF-A」をエントリー。このモデルが2005/2007年のデトロイトショーで発表されたコンセプトカー「LF-A」であることは周知の事実であった。このLF-Aによるニュル24時間への参戦目的は、プロモーションでも話題作りでもなく純粋な開発テストであった。
他のモデルは本格的なレースマシンに改造されているが、LF-Aはレギュレーションに合わせた安全装備、スリックタイヤに合わせたサスペンションと補強を施した程度のモディファイだった。レース用の軽量化は一切行なわれていない上に、データ取り用の計測機を満載(プラス200kg)、レースを戦うマシンとしては重量級だった。

Nürburgring2008 予選は総合28位(SP8クラス5位)と健闘したものの、決勝はオイルクーラーからのオイル漏れやリアハブボルトの破損などのトラブルにより150台中121位という結果に終わったが、テストコースでは解らない数多くの知見が生まれた。ちなみに、スリックタイヤに合わせて補強されたボディは、操安フィーリングの面でも非常に効果は高く、後の生産モデルにフィードバックされた。

LEXUS LF-A 14号車 総合121位・SP8クラス7位(106周)

2009年 second history 2カーエントリーで多くの経験をフィードバック

Nürburgring2009

LF-Aは2009年のニュル24時間にもエントリー。今回も開発テストとしての参戦であるが、今年はより多くの経験をフィードバックさせることを目的に2カー(14/15号車)エントリーとした。更にドライバーはレーシングドライバーに加えて、LF-Aの開発陣頭指揮を取る成瀬弘と“モリゾウ”こと豊田章男が加わった。モリゾウ選手は「私はレースをしているのではなく、評価の一環として走っています。プロドライバーと一般のお客様の間に私が入ることで、より“いいクルマ作り”を目指していきたい」と語った。車両は昨年の参戦で得た経験やノウハウを活かしバージョンアップを施した。今回もレースカーのような軽量化は行わず、スタビリティ向上のための「空力性能」と「ボディ剛性の更なる向上」を実施していた。

Nürburgring2009 予選は15号車が総合23位(SP8クラス2位)、14号車が総合24位(SP8クラス3位)を獲得するも、決勝は15号車が駆動系のトラブルの後にエンジンがストップしリタイヤ、14号車はレース後半に電装系トラブルにより長時間のピットストップとなり、総合87位(クラス4位)で幕を閉じた。戦闘力は確実にアップしていたものの、トラブルや煮詰めの甘さ、マシンの作り込みにもまだまだ改善の余地があることをニュルは教えてくれた。悔しさは残ったが、クルマを進化させる上では大きな収穫だった。

LEXUS LF-A 14号車 総合87位・SP8クラス4位(114周) / LEXUS LF-A 15号車 リタイア(106周)

2010年 third history 「クルマ」と「人」を鍛え、そして成長した

Nürburgring2010

2009年の東京モーターショーで市販モデル「LFA」が正式発表され、車名はLF-AからLFAに変更された。昨年と同じく2カー体制だが、昨年よりもボリューム感を増したエアロパーツがプラスされたエクステリアは、タイヤの仕様変更に加えトレッドのワイド化に取り組んだ結果である。ただ、エンジンやトランスミッションはノーマルと、あくまでも量産車ベース、開発テストと言うスタンスはこれまでと変わらない。 目まぐるしく変わるコンディションの中で行なわれた予選はクラッシュもあったものの、50号車が総合25位(SP8クラス1位)、51号車は総合28位(SP8クラス2位)と、量産車ベースのLFAは格上のクラスとなるFIA-GT3マシンに迫るタイムを刻んだ。過去のニュル24時間参戦の経験が成果に表れた瞬間でもあった。

Nürburgring2010 決勝は、50号車は序盤ブレーキトラブルを抱え順位を大きく後退させたものの、メカニックの頑張りとドライバーの追い上げで、深夜の時間帯にはクラス2位までアップ。翌朝にはクラストップへ躍り出た。その一方で51号車は他車との接触によるバンパー交換に加えて、レース開始8時間後にオイルに異物が混入するというトラブルに見舞われた。通常ならばここでリタイヤを決断するが、「マシンをゴールに送り届けたい…」というチームの想いから、エンジン交換を決行し夜を徹しての作業により復活した。結果は50号車が総合18位でSP8クラス優勝、51号車は規定周回数に及ばず完走扱いにならなかった。成績だけ見れば“明暗”を分けた2台であったが、この経験は「クルマの進化」と「人の進化」にも大きく影響したであろう。

LEXUS LFA 50号車 総合18位・SP8クラス優勝(142周) / LEXUS LFA 51号車 完走扱いならず(67周)