トヨタ・レーシング インサイドストーリー〜2012年WEC富士の激闘を振り返る〜
ライバルにとっても特別な富士
中嶋一貴は、日本をよく知るライバルを迎え撃つ
そして、2度目となるホームコースでの戦いを前に、中嶋は特別気負うこともなくライバルを迎え撃つつもりだ。
「プレッシャーはないです。アウディのドライバーで日本でもレースをしているアンドレ(ロッテラー)やロイック(デュバル)とは、世間話をするんですが(笑)、彼らの中でも富士のレースはかなりのウェイトを占めているようですね」
敵地で勝利してこそ真の覇者と言わんばかりの意気込みのようだが、中嶋も「そう思われている以上、絶対に負けたくない」と気を吐く。
一方で、外国人のチームスタッフにとっても心待ちの日本訪問にもなる。「とても楽しみにしていますね。なかでも日本の牛肉を食べること。今から『YAKINIKU』って騒いでいますよ(笑)」と、村田が内情を明かせば、中嶋も「ドライバーも一緒(笑)。彼らの頭の中には"焼き肉"しかないですよ。去年は5日間御殿場にいて、4回も焼き肉に行きました。もうすでに今年も何回かその話をしています」と、チームメイトのグルメぶりを思い出して笑う。
日本でのレースの評判の高さを語る村田久武
また、村田は今年も日本でWECを戦うことの喜びを口にする。「総論になりますが、FIA(国際レースを統括する国際自動車連盟)やACO(ル・マン24時間の主催者)などオーガナイザー(大会運営者)と話をすると、日本でのレースの評価ってものすごく高いんです。彼らは日本のファンはレースのことを良く知っていると言ってました」とした上で、「僕らは富士に来て下さるファンの方々に『皆さんの応援はすばらしいし、レベルの高いレースを見ているんですよ』ということをお伝えできればいいなと思っています」と健闘を約束する。
「僕らは負けるつもりでレースをやってるわけではないし、実際明らかに効果があったアイテムがいくつもあります。なので、もう少し結果が出るのを待っててください」
プライドを懸け富士連覇に挑む
富士へのカウントダウンはすでに始まっている
村田が言うように、富士へのカウントダウンは、もうすでに始まっている。
「どんなレースになるかは正直やってみないとわからない。でも去年は自信を持っておもしろいレースだったと言えるので、今年もアウディと激しいレースができるはず。プライドをかけて熱いレースをお見せしたい」
そう中嶋が宣言すれば、村田は「ぜひサーキットでクルマが奏でる音を聴きながら、チームの戦略を見ながら、レースを楽しんで欲しい」とライブならではの魅力を説く。
「最後に、ゴールして喜びを爆発させているチームを見てもらえば、臨場感が湧いてくると思います。せっかく僕らも日本に帰ってくるので、一緒に感動を分かち合えたらと思いますね」と、村田はこのインタビューを締めた。
6時間先のゴールを目指し、いくつものドラマが繰り広げられるであろうWEC第6戦「富士6時間レース」。10月18日(金)練習走行、19日(土)公式予選、20日(日)決勝の3日間で開催される中、トヨタ・レーシングとTS030 HYBRIDは、大会2連覇に挑む。
目次ページ
- 第1回:母国レースで感じた喜びとプレッシャー(2013年9月11日公開)
- 第2回:ライバルと繰り広げた熾烈な駆け引き(2013年9月18日公開)
- 第3回:劇的な勝利。そして2013年の富士へ(2013年9月25日公開)
- 5. 予定外のカードを切ったライバル
- 6. ライバルにとっても特別な富士