ナンバー2

基本性能のためのロングストレート。

2014.09.12 - 09.20 From Ceduna to Perth

世界の8割の道があると言われるオーストラリアとランドクルーザーの関係は深い。乾燥して埃が舞うダートがあり、ワニが暮らすような湿地帯もある。国内向けには生産が中止されていた期間も、オーストラリアからの強い要望に応えて、販売は途切れることなく継続されている。基本設計の変わらない“シンプル”かつ“剛健”なランクルは、果てへと向かえば向かうほど、多く目にするようになる。南オーストラリア州から西オーストラリア州へと入り、ユークラという砂丘の町にも、古いランクルが停まっていた。トヨタの社員たちでさえすぐに年式が分からないほど、古いモデルが今も現役で走っているという。ガソリンスタンドとカフェの機能を併せ持ったモーテル以外、周囲には何もない。そういう“僻地”でこそ、ランドクルーザーは、真価を発揮する。ユークラでは、砂丘を乗り越え、まるで性能を確かめるような走行を行った。

オーストラリアには、世界一真っすぐな道がある。

そして、砂丘の後には、延々と果てしなく続く直線が待っていた。146km一切カーブのない直線は、世界で一番長い直線道路。また、久しぶりのカーブを曲がった後にも、ほとんどカーブは現れない。ゴールドラッシュの街・カルグーリーからパースまでを一気に進む。水を運ぶための600kmのパイプラインと併走するように、ほぼ舵を切らない直線。特有の強い陽射し。ドライバーは常に窓ガラスのUVカットが足りないと眩しそうにぼやいている。プリウスに搭載されている、速度を設定して先行車に追従するクルーズ・コントロール(ACCアダプティブ・クルーズ・コントロール)が、必要な装備とさえ言える道。オーストラリアの人々は、法定速度ピッタリで走る。速度を超えることもほとんどなく、極端に遅いクルマも滅多にいない。淡々とした眠気を誘うようなストレートだが、この長い直線は、プロの評価ドライバーにとっては退屈な道ではなかった。

都会向けのクルマで揺さぶられる身体。

アンジュレーション、轍、路面のアスファルトを構成する石粒の大きさの違いなど、直線でありながらも、微細な変化がクルマを揺する。ただステアリングを軽く持っているだけでは済まされないことが大きな問題だという。真っすぐに走れないのだ。路面から入力される情報を、ステアリングを通じてどれだけ人に伝えるのか。クルマのチューニングは、その方向性を決める作業と言っても過言ではない。例えば、クルマによって、日本ではその反応の良さは大きな利点であり、路面の小さな変化を敏感に察することのできる設定は、心地よいとさえ感じられる。しかし140km以上のロングストレートで、延々と車体が揺さぶられ続けることは不快でしかない。あるいは110km定常で走るクルマで、同じ速度で迫りくる対向車を気にしつつ先行車を追い越す時に、どれほどパンチ力が必要なのか。急加速の必要性は、日本の比ではない。クルマは、誰を向いて作るべきなのか? ラインナップを揃えることでさまざまな要求に応える用意があるとは言え、真っすぐ走るという基本性能はどのクルマにも必須の要件。昔から言われているが、もっともシンプルにして、もっとも難しい課題に、メルボルンからパースまでの3週間で直面した。

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