ナンバー5

ワニの棲む川を渡る

2014.10.08 - 10.19 From Darwin to Alice Springs

世界遺産に登録されているカカドゥ国立公園。パークレンジャーと呼ばれる75名の管理人が、公園の維持に尽力している。外来種の雑草を排除し、観光客向けに道路環境の整備する。動物のバランスを整えるための狩猟を行うこともある。レンジャー達の相棒は、ランクルとハイラックスだった。道なき道を移動することによる車両のダメージは避けては通れない。彼らはラジエーター部分に金網を被せて、必要以上にブッシュを寄せ付けないように工夫を施していた。レンジャー曰く、「電子制御が多くなりすぎると、何かがあった場合に困る。いざというときにその場で直せないと、クルマをけん引して帰るのに数日間も掛ってしまうから」。カカドゥ国立公園内の水深60cmの川を進むことになった。川の脇にはワニ出没注意の看板が掲げてある。最初の一台目が緊張感を持って川を渡る。何が起こるか予測できない。時速10〜15kmで止まらずに進むことが川を渡る際の鉄則。浸水を防ぐには、エンジンルームへ荒波を立てないこと。走っている間はマフラーの排出口から空気が出続けるため止まってはいけない。パークレンジャーは、クルマにシュノーケルを装着すれば水深1mの川も渡れると話していた。ワニは現れなかった。

真っすぐに伸びる隊列。

キャサリンからテナントクリークまでの672km、隊列は一定速度を保ちながら走っていた。アクセルの踏み方もドライバーそれぞれ違い、指先や母指球で微調整する人もいれば、足首で調整しながら踏む人もいる。クルーズコントロール機能を使っているかと思いきや、機能に頼ることなく自分の感覚を研ぎすます為に、誰も使っていなかった。真っ直ぐに伸びる道でも、神経を行き渡せなければ、美しい隊列を組むことはできない。

速度制限で走ることの意味。

「ここが限界か」と、ランクル200のドライバーがつぶやく。メーターを見ると185km/hを指している。STUART HIGHWAYには、無制限速度の区域があり、中央分離帯もガードレールもなく、ただただ長く真っ直ぐ伸びるハイウェイ。全開までアクセルを踏み込むことは、クルマと環境の臨界点を摺り合わせるような実験でもある。休憩の際に、タイヤや車両の状態を確認するとともにドライバーが目頭を押す。体の疲労がいつもより増しているらしい。「通常の速度で走るより燃費も悪くなって、たかだか20〜30分早く目的地に着くだけなのに、最高速度で走れる道があるってことが不思議だな」と、ドライバーの1人が言った。4週間もの日程にも関わらず、体感としてはあっという間にチーム2の目的地、アリス・スプリングスに到着した。

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