永遠と続く真っすぐのダートロード
一言で“ダート”と言っていたが、オーストラリアでは本当にさまざまな種類のダートロードがある。白くて硬い路面、赤土の柔らかい路面、小石が浮いた路面、そしてロードトラックの走行によって荒れた路面。グリップが高い場所もあれば、砂利で滑りやすい場所もある。さらにDip(小さな丘)やCrest(くぼみ)によって勾配も刻一刻と変化する。その度にステアリングから伝わるインフォメーションが異なってくる。チーム3の走行は始まったばかりだが、“気づき”の連続。アリススプリングスからキングスキャニオンに向かうオフロードは、コルゲーション(波状路)の激しい数百kmと続く真っすぐの道だった。テストコースではなかなか体感できない距離とサーフェスである。クルマのふらつきや激しい上下入力によって疲労が溜まっていく。室内ではインストルメントパネルのビビリ音が大きく、助手席との会話も聞き取りにくい。休憩中にタイヤをチェックしてみると、ホイールの内側には埃が堆積しているという。これも振動の原因のひとつ。埃や泥が溜まらない工夫が必要とされる。どのようにすればもっと“楽に運転できるクルマ”ができるのか、メンバーは長距離のダート走行によって、自身の体で感じている。
エアコンディションの使い方
オーストラリア内陸部は、40℃近くまで気温が上がる。必然、エアコンは必要不可欠なツール。しかし、砂埃が激しく舞い上がるダートロードを走行する場合、フレッシュモード(外気導入)がいいか? それともリサーキュレーションモード(内気循環)がいいのか? 現地のスタッフを含めたミーティングの結果、フレッシュモードを使用し、キャビン内の圧力を上げて、ダストが侵入しにくくする方がベターということだった。しかし、翌日フレッシュモードで走行してみると、たった1日の走行で、エアコン付近はもちろんナビのモニター、ドライバーのサングラスにもダストが付着してしまった。チーム3のスタート地点からフレッシュモードで走り続けていた5号車には、大量のダストがフィルターに堆積していた。つまり定期的なエアコンフィルターチェックとメンテナンスが必要とされる状況。ユーザーの手間にならないように、またメンテナンスコストを抑えるためにも、細かい粒子を通さないフィルターの開発、または構造の改善が必要とされる事実を突きつけられていた。
州ごとに変わる道
オーストラリアでは、財政の関係もあり、各州で道路の作り方が異なる。舗装路のほとんどはビッツマン舗装だが、ノーザンテリトリー州からサウスオーストラリア州に入った途端、急に道が悪くなりバネ上が動きはじめ、ブルブルと振動も大きくなっていった。カント(路面の内側と外側の勾配)が強く、車両が流れるのを抑えるために大きめの舵角が必要で、あおりも大きく上下左右に揺すられる。広大なオーストラリア大陸では、同じ舗装工法を使ったとしてもエリアによって石の大きさ、種類、そして地盤の硬い、柔らかいなどの違いでクルマに与える影響が違ってくる。オンロードとオフロードの多様な路面を走っていると、ランクル70の性能の高さが際立つ。ランクル70は、実際に使われる環境によって鍛え上げられたクルマ。州を跨いで路面が変化する度に、ドライバーたちはその差異を敏感に感じとっていく。受け取ったその感覚が、クルマ作りへと反映されていく。