レーシングドライバー木下隆之のクルマ連載コラム クルマ・スキ・トモニ

人とクルマの、ともすれば手の平から溢れてしまいそうな素敵な思いを、丁寧にすくい取りながら綴っていくつもりです。人とクルマは、いつまでも素敵な関係でありたい。そんなGAZOOが抱く熱く溢れる思いが伝わりますように…。
レーシングドライバー 木下隆之氏


10Lap 「和の車名?」

どうやら最近、漢字が街に氾濫しているようである。

日本語の基本形である漢字に、はやりもすたりもないように思うのだが、このところ“新漢字文化”ともいいたくなるような現象を強く意識するのである。特にそれは、名前に難解な文字をあてる傾向で顕著のよう。旧仮名を当てはめると、独特の深みや情緒が滲み出る。それが好感されているというのだ。

女優の宮﨑あおいが使っているは「崎」ではなく「﨑」。歌手の幸田來未は「来」ではなく「來」だ。なるほど、旧仮名づかいをあてると、歴史や伝統の重みがふわりと加わるからア~ラフシギ。読書離れが囁かれている若者が難解な漢字にこだわり、新漢字文化の発信源になっているというのだから、世の中、わからんものだわい!

と思ってみると、もともと古くから旧仮名づかい派のおじさんもいる。俳優の三國連太郎は「国」ではなく「國」。演歌歌手の髙田まもるも「高」ではなく「髙」だ。「沢」ではなく「澤」にこだわる橋澤さんも少なくないし、「辺」ではなく「邊」の渡邊さんも多い。ご丁寧なことに、ワタナベさんの場合は「邊」のワタナベさんと「邉」のワタナベさんがいるから厄介だ。(ルーペで見てくださいよ。微妙に違うのですよ!)「渡辺で統一してくれると楽なんスけど・・・!」などとは、対象が尊重すべき人名だけにむげにも言えず、「邊」や「邉」に変換されるまで、ひたすらATOKを叩きまくるのである。

歌手の「つのだ☆ひろ」、モータースポーツジャーナリストの「はた☆なおゆき」はその対極。先輩の萩原秀輝さんは「ハギワラ」ではなく「ハギハラ」ですと煩わしそうにいつも訂正していたっけ(関係ないか!)。

先日、4歳になる娘が通う幼稚園の名簿が届いてビックリした。いやはや、難解な漢字をものの見事に当てはめた名前の洪水である。

「海人→かいと」「岳斗→がくと」「純真→すなお」「向日葵→ひまわり」と続くのだが、このあたりはまだまだ初級レベル。音訓駆使すればいずれ正解に行き当たる。両親が子供に託した熱い思いも理解できる。

ただ、「大陸→せかい」「七星來→きらら」「力虎→りとら」「日天→そら」となると、ほとんど宝塚歌劇団・月組の世界。このあたりから読み方が怪しくなってくるのだ。

さらには「陽風→はるか」「恋愛→れいら」へと続くのだが、「愛泉→あみ」「冠輝→れある」となるともう、連想ゲームの達人でもなければ音読不可能であろう。正真正銘外国籍の「カルロス君」も「リアム君」も名前はまったく目立たずに溶け込んでしまうというパワフルさだ。

それでもこの程度はまだまだウルトラB難度技。「天使→あんじゅ」「可愛姫→かわひめ」「悠來颯→つばさ」「晏結虹→あゆな」などはもう塚原光男のムーンサルトレベル。金田一春彦先生でもスラスラとはいくめぇ、という超ウルトラC難度である。

もっとも僕のまわりでは、その手の命名は昔からあった。

「星琉華→せりか」「聖麗那→せれな」「心愛→ころな」とクルマスキスキ星人達のご子息は、こんなことになっているのである。「星波→せな」「亜怜司→あれじ」は熱狂的なモータースポーツファン。F1日本グランプリは木曜日から皆勤賞という強者。さすがに「馬」と「豚」で「馬豚→ばとん」もいないし、「亜流気瑠諏訪利→あるげるすあり」だとか「杯度歩絵流人→はいどふぇると」も見たことないけれど(どこかにいるかもしれないけど・・・)、両親のクルマスキスキDNAが100%受け継がれること必至。クルマスキとして悪い気はしないものです!

ちなみに、業界の重鎮であり、クルマスキ星人でもある北畠主悦カメラマンの三人の子供は凄い。上から順番に「蘭知亜→らんちあ」「瑠乃→るの」「亜瑠葉→あるは」である。そりゃもう将来は、LANCIA、RENAULT、Alfa Romeoをガレージにずらりと並べるしかないわな、という気合いの入れよう。
しかも親の心を深く理解したいい子に育っているようで、揃いも揃ってクルマスキだ。蘭知亜くんはWebデザイナーで、ポルシェ・ボクスターを転がしている。亜瑠葉はアーティストとして活躍中、スズキ・スイフトで駆け回る日々。

なかでも最高なのは瑠乃。親の職業をついでカメラマンになっただけでなく、その名の由来になったルノーがお気に入り。それも半端なルノーじゃない。ルノー・アルピーヌ・ル・マンで颯爽と駆け回るのだ。親の思いが子供に通じたのである。

はたして「星琉華→せりか」「聖麗那→せれな」「心愛→ころな」達は、北畠家のように素直に育っているのか?「星波→せな」「亜怜司→あれじ」はまだF1には乗ってないようだけど、クルマスキのDNAを託されたご子息の今が、大いに気になりますな!

キノシタの近況

限定100台で発売を開始した「iQ GAZOO Racing tuned by MN」が、すぐさま完売したそうな!「何台売れるんだろうねぇ?」なんて心配していたのに、僕の予想を上回る人気である。1.3リッターのエンジンも魅力的だが、そいつはマニュアル仕様。シフトレバーをコキコキしながら走りたいって人、まだまだ多いんだなあ。嬉しいかぎりです。
www.cardome.com/keys/

【編集部より】

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