最近「開かずの踏切」が少なくなったなぁ…と思って調べたら、どうやら国が、「開かずの踏切対策」をはじめて数年が経つらしい。歩行者にとっても、自動車にとっても、遮断機の前で長々と待たされることほど辛いものはない。特にそれって、通勤や帰宅のような、ちょっと急いでいる時におこるから、よけいにイライラがつのる。対策が進んで、実に喜ばしいのである。
「開かずの踏切対策」は、なかなか開こうとしない遮断機に辛抱できなくなった歩行者の強行突破が減らないことで、発足したという。駅近くでは電車が減速することも多く、遮断時間が長い。だったらとばかりに駅構内を無料で開放。突っ切ってもいいとした。歩行者には手厚い配慮だ。東京都の西武線で実施された。
ちなみに「開かずの踏切」の定義は、ピーク時の遮断時間が、1時間あたり40分以上あることとされている。1時間に40分といえば、頭がクラクラするような数字である。ピーク時とはつまり出勤帰宅時間があてはまるのだろう。つまり、1分でも惜しい早朝の通勤時間に進路を遮断されるのである。そのイライラ感はピークに達する。
そのための経済損失は1兆5000億円だともいう。線路の地下化や立体交差などに建設費を費やしても惜しくはない数字である。
いやはや、昔はずいぶんと「開かずの踏切」に苦労させられたものだ。学生時代の僕は100%クルマ通学だった。早朝の授業に間に合うためには、通勤ラッシュに飛び込まざるを得ず、たびたび遅刻をしたものだ。クルマのグローブボックスに電車の時刻表を常備していたのは、開かずの踏切を避けるためである。遅刻を「開かずの踏切」のせいにして、たびたび叱られたっけ!単位不足で卒業が危ぶまれたのは、「開かずの踏切」のせいだと、いまだに確信している。
ただしその一方で、「開かずの踏切」ならぬ「くぐりの踏切」が僕の卒業を手助けしたくれたのも事実。それは、東京・山手線の田町駅と品川駅のほぼ中間地点にそれはある。
ビルとビルの狭間にひっそりと隠れるようにしてあるから、知る人ぞ知る穴場ルート。利用するのはほとんどがタクシーか近所の人に限られる。それゆえに渋滞知らずであり、迂回ルートとして重宝したのだ。
ただし、問題がある。実に天井が低く、高さはおよそ1.5mである。つまり、背を丸めなければ横断できない低さだ。であるから、車高の高いクルマは通行不可。タクシーの行灯が、ときより天井を擦るほどの低さなのである。
しかもロウソクのように頼りない照明がところどころ灯っているだけなので薄暗く、地下道のごとくジメジメしている。ほとんど鍾乳洞に潜り込んだかのような気分にさせられるのだ。
トンネルと呼ぶのははばかられる。下から見上げると、むき出しの線路の向こうに青い空が見えるという恐ろしさであり、通過する電車の腹の底を拝めるのだから、やはりトンネルというよりガード下といった雰囲気。
そして長い。新幹線と山手線と京浜東北線、東海道線、横須賀線、総武線快速、成田エキスプレスの上下線が敷かれる線路の束だから、そうとうに長い。横断するのに700mほど走らされるのである。
これが地上の踏切だったら、ほとんど踏切の用を成さないであろうという遮断時間になっただろう。駅に近く、線路が多く、通勤ダイヤが過密で、しかも、ところどころに電車の車庫として機能しているというのだから、「開かずの踏切」発生のメカニズムからすれば、これほど遮断条件がそろう場所も珍しい。
クルマが通る道は一方通行路で幅も狭いのだが、入り口をくぐる瞬間には、ほとんどのドライバーが首をすくめ、頭頂部をヒャッとさせられる。初心者は、入り口でいったん停止して、天井との隙間を確かめる。だがそれは、恐怖の序章でしかすぎない。入り口は1.8mほどの高さがあるのだが、その奥に恐怖ポイントが待ち構えているのだ。
意を決してズンズンと500mほど進んでいくと、中間地点あたりでさらに30cmほど天井が低くなる。一方通行ゆえにもう引き返すことなどできず、覚悟を決めて進むしかないのである。路面は荒れているからクルマがはねる。そのたびに、背筋が寒くなる。出口がまた最後の難関で、だめ押しと言わんばかりにさらに低くなるという意地悪さなのだ。天井を見ると、過去に何台ものクルマがチョップドルーフになった痕跡がある。入ったはいいけど引くに引けずにルーフを擦った犠牲者は少なくないだろう。
いやはやもうここは、通勤のための裏ルートというより、ちょっとしたアトラクションのような趣がある。初めて訪れた人は誰もが入り口の手前で躊躇するし、突き進んでいくうちに誰もが「ウッヒョー」と喜び叫んだり、「こわっ」と体を硬くするのだ。管轄がJRなのか行政なのかは知らないけれど、なかなかどうして洒落が効いている。そこを改修する様子はいっこうにないし、それはそれで保存するつもりらしい。
もし東京見物に訪れたら、一度はその「くぐりの踏切」にトライしてみて欲しい。ディズニーランドのアトラクションより、確実にスリルが味わえる。
だって擦らない保証など、どこにもないのだから…。
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HV(ハイブリッドスペシャリスト)目指して、プリウス生活にドップリ。しかも最近、PHV(プラグイン・ハイブリッド)を入手。究極のエコランにトライしています。PHVを入手してからまだ2週間ですが、まだガソリンを3リッターしか消費してません。自宅充電可能で近所移動には夢のような乗り物ですな。近日中に、報告しますね。
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【編集部より】
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