レーシングドライバー木下隆之のクルマ連載コラム クルマ・スキ・トモニ

人とクルマの、ともすれば手の平から溢れてしまいそうな素敵な思いを、丁寧にすくい取りながら綴っていくつもりです。人とクルマは、いつまでも素敵な関係でありたい。そんなGAZOOが抱く熱く溢れる思いが伝わりますように…。
レーシングドライバー 木下隆之氏


25Lap 洒落が効いていますねぇ…ランボ殿

商品の性能を直球で説明されるより、スバッとえぐるような広告の方が強く印象に残るものだ。
「燃費性能は7%アップ」
「販売価格を抑えました」
「クラストップの走行性能を実現」
 ありきたりの言葉じゃ、あまり響かない。

古い話なので、昭和のど真ん中の人にしか記憶に残ってないと思うけれど、
「となりのクルマが小さく見えますぅ」
のCMは今でも語り継がれている。

1971年に日産が1200ccのB110型サニーをデビューさせた時のCMだ。当時、熾烈な販売バトルを繰り広げていたカローラが1100ccだったことを皮肉ったわけだ。ぼくはまだ子供だったから、リアルタイムでの記憶はない。だが後々にまで語り継がれるその名CMには、思わず溜飲を下げたものだ。

また、この名コピーも伝説になりつつある。
 時代は、1960年代半ばのいざなぎ景気の真っ盛り。カラーテレビ、クーラーに並んでクルマが新・三種の神器として数えられた頃、王冠をかぶった孤高の存在だったクラウンは、庶民の気持ちをこう代弁したのである。
「いつかはクラウン」
お見事!

ちょっと話はそれるけれど、ランボルギーニのカレンダーはイカしてる。

ライバルに皮肉る挑戦的なものでもなく、ただスペックを並べただけの不粋なものでもない。もともと「ライバルの存在なし」と言い切るランボルギーニらしさ満点なのだ。それでいてイタリア流のシャレが効いている。

壁に堂々と映える大判サイズなのだが、1枚に写真が1カット。そこに1行か2行のフレーズが記されているだけ。だがそれが、おもわず膝を打ちたくなるようにパンチが効いているのである。

4月にもなってカレンダーネタというのもマヌケな話だが、実は僕の回りにもたくさん「ランボカレ」のファンがいて、それじゃ紹介するかなとなったワケ。

たとえば2007年のカレンダーはどうかというと…。


「RARELY SEEN ON THE ROAD. UNTIL YOU BUY IT.(あなたが買わなければ、お目にかかることがないのよ♡)」

ガヤルドの迫力満点のフォルムを俯瞰で見せつけておいて、「RARELY SEEN ON THE ROAD. UNTIL YOU BUY IT.(あなたが買わなければ、お目にかかることがないのよ♡)」

なんて文字が添えられている。


「USUALLY IT IS CALLED NON- RETRACTABLE LANDING GEAR. WE JUST SAY TIRES.(ムルシエラゴは格納不可の着陸装置を備えています。それをみなさんは”タイヤ”と呼んでますけどね…)」

一方では、航空母艦のデッキにムルシエラゴが着陸したばかりのシーンを演出しておいて、「USUALLY IT IS CALLED NON- RETRACTABLE LANDING GEAR. WE JUST SAY TIRES.(ムルシエラゴは格納不可の着陸装置を備えています。それをみなさんは“タイヤ”と呼んでますけどね…)」

と迫るのだ。


「TO SHOW OFF, SIMPLY SAY: TOP SPEED - 340 KM/H. TO PROVE YOUR SENSE OF UNDERSTATEMENT, CONVERT INTO: MACH 0.28.(簡単に言えば、最高速度は340km/hです。控えめに言うならばそれは、マッハ0.28ですけどね♡)


ブレーキ性能の優秀性をザクッとアピールする一方で、速さを語ることも忘れない。そりゃそうだ。最高速度にこだわるのがランボルギーニの哲学なのだから…。

やはり同様に航空母艦で離陸の瞬間を待つムルシエラゴが、今か今かと発進に備えるジェット戦闘機の脇に並ぶ。そしてこうだ!
「TO SHOW OFF, SIMPLY SAY: TOP SPEED - 340 KM/H. TO PROVE YOUR SENSE OF UNDERSTATEMENT, CONVERT INTO: MACH 0.28.(簡単に言えば、『最高速度は340km/hです』
控えめに言うならばそれは、『マッハ0.28ですけどね♡』)」

ヤラレたって感じである。


「NO FLAMETHROWER. BUT BE ASSURED - IT IS A FIGHTER. 「けして戦闘機などではありません。ですが、負けないでしょうね。なぜならムルシエラゴも戦士には違いないわけですから…」

さらには、ジェット戦闘機と加速競争を演じながら、
「NO FLAMETHROWER. BUT BE ASSURED - IT IS A FIGHTER. (決して戦闘機などではありません。ですが、負けないでしょうね。なぜならムルシエラゴも戦士には違いないわけですから…)」

鼻息が荒いのである。


「WELCOME TO SANT’AGATA BOLOGNESE. HOME OF LAMBORGHINI.(ようこそサンタアガタへ、ここはランボルギーニの街なのよ♡)」

ただ一方で、ホノボノと親しみやすさを演出することにもそつがない。リビングで遊ぶ二人の女の子の手には、ぬいぐるみでもなければママゴトセットでもなくムルシエラゴのオモチャが握られているのだ。

そしてメッセージはこう。

「WELCOME TO SANT’AGATA BOLOGNESE. HOME OF LAMBORGHINI.(ようこそサンタアガタへ、ここはランボルギーニの街なのよ♡)」

サンタアガタはランボルギーニの本社があるところ。フェラーリで言えばマラネロ、ポルシェであればシュツッツガルト、GMならばデトロイトってあたりか…。そう、直訳するならば(ここで生まれた人は皆、ランボルギーニで育つんですよ♡)といったところだ。



「望遠鏡で確認してから渡らないと危険ですよ」というわけだ。思わずニヤリとさせられてしまうわけである。

中でも僕がお気に入りなのがこれ。

のどかな丘陵地帯に伸びる細い道。手前には横断歩道。その左右に望遠鏡がある。左側におばさんが立っており、レンズを覗き込んでいる。「望遠鏡で確認してから渡らないと危険ですよ」というわけだ。思わずニヤリとさせられてしまうわけである。

実は、2008年版も2009年版もそのシリーズで展開されている。2010年もなかなかシュールなのです。それはまた次回に…。

キノシタの近況

さてさて、いよいよニュルブルクリンク24時間が開幕です。5月14日が予選で、15日の午後に24時間レースのスタートが切られる。このコラムがアップされる頃には…。キノシタもやる時にはやるのである。応援よろしく…。
www.cardome.com/keys/

【編集部より】
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