レーシングドライバー木下隆之のクルマ連載コラム ~木下アニキの俺に聞け!~クルマ・スキ・トモニ

人とクルマの、ともすれば手の平から溢れてしまいそうな素敵な思いを、丁寧にすくい取りながら綴っていくつもりです。人とクルマは、いつまでも素敵な関係でありたい。そんなGAZOOが抱く熱く溢れる思いが伝わりますように…。
レーシングドライバー 木下隆之氏


46LAP 日産リーフに乗ってきました! (2011.4.12)

近未来車の走り味は意外にも…。

量産電気自動車としては三菱アイミーブで体験済みだけど、民間人にも手に入れやすい電気自動車として注目モデルだけに興味津々。
 走行中には一切のCO2を排出しない。そこがポイント。だって電気なんだもの。ガソリンタンクはない(当たり前か?)。当面はハイブリット時代が続くだろうけれど、将来的には電気自動車の時代が訪れるであろう世論が多数派だ。ハイブリッド開発で後塵を拝した日産は、ライバルに先手を打つつもりなのだ。
 車両価格は、まだまだお高い。もっとも安いグレードを選んだとしも、376万4250円だ。ただし、2010年補助金制度を利用すると、最大78万円のキャッシュバックが得られる。つまり、実質的には298万4250円となる。ギリギリ300万円を下回ったわけだ。
 車格は、トヨタでいえばカローラ・アクシオサイズ。5人乗りハッチバックであり、大衆車の王道を突き進む。高価なリチウムイオンバッテリーをコンパクトに搭載。エンジンを積んでないとは思えない走りを実現。近未来ヴィークルなのに、未来感をそれほど押し付けることがない。「いますぐに買ってよね!」ってことだろう。

電気消費との戦いでもある…

メーター内には、航続可能距離が常時表示されている。常にそれとニラメッコ。
カーナビでは、現在地点から移動可能範囲を、コンパスで円を書いたように表示してくれる。リーフはともかく、航続距離の短さが課題なのだ。ちなみに、水温計はない(?)
メーター内には、航続可能距離が常時表示されている。常にそれとニラメッコ。
カーナビでは、現在地点から移動可能範囲を、コンパスで円を書いたように表示してくれる。リーフはともかく、航続距離の短さが課題なのだ。ちなみに、水温計はない(?)

実際によく走る。モーターは回転のはじまりから最大トルクを発生する。回転の上昇にほぼ比例してトルクが立ち上がるエンジンとはそもそも特性が異なる。だから、信号からの最初の一歩が速い。プリウスがエンジン+モーター合わせ技で加速するとなかなか俊足なのだが、モーターだけの加速は鈍重だ。その点ではリーフのモーター加速は鋭いといえよう。
 ただし、いい気になっていると、驚くほど速く燃料ならぬ『電費』が悪化する。ガソリンだって同様だけど、電気自動車の場合は特に『電費』に神経質になる必要がある。だってこれ、甘く見積もって計算しても、航続距離は“200km(JC08モード)”にしか達しないのだ。
 しかもそれ、プロドライバーがアクセルペダルを手で触れるように優しく走らせた時の数値。実質的には100kmあたりが行動範囲だ。エアコンを作動すると、メーター上の航続可能距離ががっくりと悪化する。ヘッドライトやワイパーや、オーディオなんかをフル回転させるとさらに電気が減る。「長距離ドライブが不利」ってあたりが今後の課題だ。

ちょっと近所の買い物には…

あえて比較するとなると、プリウス・プラグインハイブリッドのような、エンジンモーター併用が現実的だろうね。プラグイン・ハイブリッドの航続距離は,電気だけで実質的に20kmほど。リーフよりは短距離仕様だが、電気がなくなりゃ、本来のハイブリッドに戻るわけで、それなら長距離も難なくこなす。というより、もともと燃費が驚異的にいいわけだから、近所の買い物は電気だけで移動しておきながら、そのままの足で、東京から九州だって無給油走破可能なのだ。行動範囲の広さではプラグインハイブリッドが断然有利なのだ。
 もっとも、だからってリーフを自動車として否定する気はない。家族で長距離ドライブするための段階はないってこと。とある機関の統計では、日本人のほとんどが日々、十数km圏内の移動ですませているという。ということは、普段の使用では電気自動車も「アリ」ってこと。シティコミューターとして寄り切れば、リーフも「アリ!」なのである。

まるで携帯でも充電する感覚で…

リーフの給電ジャックはフロントにある。パカってフタをあけて差し込むだけ。食事でもしているうちに80%に充電可能だ。いたずら防止の細工もしてあった。
リーフの給電ジャックはフロントにある。パカってフタをあけて差し込むだけ。食事でもしているうちに80%に充電可能だ。いたずら防止の細工もしてあった。

日産では電気自動車の当面の課題である航続距離問題を解消すべく、インフラ整備を進めている。全国の日産ディーラーは2200店舗もあるそうだが、すでに200V普通充電可能な環境を整えずみ。それでも8時間は必要だから、使い勝手は悪い。ディーラーで8時間も滞在するのも時間を持て余すしね。
 その内の約200店舗には、30分で80%の充電ができる急速充電器を設置。それだけで半径40km円で日本全国をカバーするという。計算上、給電ポイントから給電ポイントを飛び石していけば、全国一周旅行も可能ってことだ。タイムロスだらけだけど…。
 実際にキノシタ、高速道路に整備されつつある急速充電器での体験をすませたけれど、まったくもって簡単そのもの。所定の位置に停車して、太いケーブルをガシャリと差し込むだけで充電開始。レストランでそばでもすすっていれば、その隙に80%充電が完了してしまう。まったく楽々だった。

あえてハイブリッドの素晴らしさを実感!

高速道路の給電システムを拝借。青いペイントで誘導される。とても目立つ。給電は無料だった。
高速道路の給電システムを拝借。青いペイントで誘導される。とても目立つ。給電は無料だった。

未曾有の大震災が突き付けた課題は多い。ごくそこにあたりまえのように流れてくると思っていた電気は、あの“原発”に直結していることを実感させたし、ガソリンだってスタンドの地下からドボドボと沸いてくるものではないってことをあらためて知らしめた。
 まったく偶然なのだが、震災の晩の自宅のガレージには、3台のクルマがあった。1台は大排気量のメルセデスSL500、もう1台がハイブリッドのレクサスCT200h、そして電気自動車の日産リーフがあったのだ。
 ガソリン不足が予想されたその日に、大排気量モデルを走らせるのははばかられた。電気自動車もボツ。いくらインフラ整備が進んでいるとはいえ、そもそも電気が届いていないのだから。そこで頼りになったのがCT200hである。移動に重宝しただけでなく、たとえば携帯電話やラジオの電源にもなったのだ。自ら発電システムを搭載しているハイブリッドの強みを実感したわけだ。
 いや、リーフも捨て難い。そもそも環境性能は長けているのだから。いや、メルセデスSL500サウンドと獰猛な加速感も魅力である。いやはや、我が家にやってきたリーフがキノシタになにかを考えさせた。

キノシタの近況

今年もCS GAORA(ガオラ)で『WTCC世界ツーリングカー選手権』の解説をします。実況はピエール北川君。「1コーナーのみなさぁ~ん!」で有名な売れっ子アナウンサーとのコンビです。接触多発、コースアウト必至、世界最高のケンカバトルをご覧あれ!
写真はスタジオのサブ調整室でのカット。『SAVE JAPAN』のTシャツは、ピエールが自宅で急造したもの。ギリで収録に間に合った!
ちなみに、「木下アニキの俺に聞け!」の頂いたコメントは、すべて目を通しています!するどい質問もあって、キノシタも大満足です!言っちゃダメなことなどなど、オフレコで答えちゃいますよ!!
www.cardome.com/keys/

【編集部より】
木下アニキに聞きたいことを大募集いたします。
本コラムの内容に関することはもちろんですが、クルマ・モータースポーツ・カーライフ…等のクルマ情報全般で木下アニキに聞いてみたいことを大募集いたします。“ジミーブログ”にてみなさまのご意見、ご感想をコメント欄にご自由に書き込みください。