レーシングドライバー木下隆之のクルマ連載コラム ~木下アニキの俺に聞け!~クルマ・スキ・トモニ

人とクルマの、ともすれば手の平から溢れてしまいそうな素敵な思いを、丁寧にすくい取りながら綴っていくつもりです。人とクルマは、いつまでも素敵な関係でありたい。そんなGAZOOが抱く熱く溢れる思いが伝わりますように…。
レーシングドライバー 木下隆之氏


63LAP 新木下式“裏”四字熟語      (2011.12.27)

四字熟語で「2011年」を振り返る

未曾有の東日本大震災、タイの大洪水、欧州金融クラッシュ……。世紀末かと思われるほどの「天災・人災」に見舞われた今年。自動車業界にはさらに超円高という向かい風が加わり、厳しい1年となった。

それでも明るい話題もあった。日本の技術とアイデアは健在で、天災と人災を乗り越える力の所在を確信できたのは嬉しいことだ。

毎年恒例の、木下式“裏”四字熟語で「2011年」を振り返ってみた。

正月気分が開けきらぬ1月、はるか欧州から景気のいい話が飛び込んできた。自動車誕生125周年を祝ったダイムラーが、全世界の社員に特別ボーナスを支給すると発表したのだ。金額がシャレていた。125周年にちなんで、総額1億2500万ユーロ(約140億円)という大金を気前良く、全世界のダイムラー従業員の懐に快く放り投げたのだ。『満額回答』ならぬ【万額快投】である。

46LAPのコラムでもお話させて頂いた日産リーフ。日産の戦略の素早さには感心しました。
46LAPのコラムでもお話させて頂いた日産リーフ。日産の戦略の素早さには感心しました。

日産が沖縄県内のレンタカー各社に、220台のリーフを納入するというニュースが僕を驚かせたのが2月1日。「エコリゾートアイランド沖縄推進事業」の一貫なのだが、ともあれ、電気自動車の普及はまだまだ先の話……と思っていただけに、日産の戦略の素早さには感心した。

脱化石燃料を電気に移し替えるという意味では『電光石化』の早業だ。人生を悟った者は、滅びることがなく永遠に存在することを『電光影裏(でんこうえいり)』というが、航続距離とインフラのバランスがまだ完全ではなく【電化影裏】の対応でもある。

化石燃料の明るい可能性を知らしめたのが、ダイハツの力作「ミラ イース」である。ハイブリッド技術を使わずに「30km/l」という好燃費を実現した。「TNP」「ブルース・ウィリス」のCMがもたらすインパクトも強烈だった。内燃機関に固執するライバルも黙ってはいないはず。次々と新技術を発表。銃弾を激しく撃ち合うようなエコエンジン競争となった。『硝煙弾雨(しょうえんだんう)』というより【少燃断雨】だろう。

※銃弾を撃ち合う激しい戦い。戦闘が激しく繰り広げられるさま。

集配用EVを日本郵政グループの郵便事業会社に納入予定だったゼロスポーツが、破産申請をすることになったのは3月のこと。スバル系のチューニングショップとして設立し、次々に頭角を現し、この業界に『新風怒濤(しんぷうどとう)』のごとく新しい風を吹き込んでくれていたゼロスポーツの淘汰は悲しい出来事だった。

郵便集配車として街を駆け回る予定だった。だが、事業会社と契約決別。「お役所と組んでもろくなことにならない」と、『破産宣告』を予想していたとする声もチラホラ。【破産先刻】とも思える。

※今までと違うやり方で激しい勢いで進めていくさま。

新しく加わった“鳥取県 智頭町”では、2012年2月4日(土)に雪まつりが開催される。
新しく加わった“鳥取県 智頭町”では、2012年2月4日(土)に雪まつりが開催される。

GAZOO.comで展開している「Gazoo mura」が、全国47都道府県を網羅した。鳥取、広島、香川、沖縄の4件を加え、合計58村となった。ドライブ目的地がまた増えたことは嬉しい。次はどのmuraでどんな体験をしようかな?とワクワクした人もいるだろう。『全国網羅』ならぬ【全国ムラ】は快挙である。

なんといっても今年最大の悲劇は、というより日本有史以来最悪の災害となった「東日本大震災」。3月11日が記憶から薄れることはないだろう。『震天動地((しんてんどうち)※1』はともかく、東京電力と政府による人災が日本を奈落の底に落とし込んだ。正気なのかと疑いたくなる弁明を繰り返す『悪人正機(あくにんしょうき)※2』に、【悪人正気】の慈悲をくだす気にはなれない。

これによって自動車メーカーの機能は麻痺した。サプライヤーを含めた工場が被災し『機関麻痺』。『納入遅延』となった。ただし、復興も復帰もおもいのほか早かった。生産開始のことよりも、国内全10社が手をたずさえて復興に全精力を注いだことも美談となった。『十全十美(じゅうぜんじゅうび)※3』とはこのことだろう。

※1 天地をふるい動かすほどの大変な出来事。
※2 浄土真宗の思想で「悪人であると目覚させられた者こそ、阿弥陀仏の救済の対象である」という意味。
※3 完全で全く欠点のないこと。すべてがそろって完全なさま。

F1が開幕。昨年の勢いをさらに増幅させたようなレッドブルの勢いは衰えなし。特にセバスチャン・ベッテルの心中は、『青天白日(せいてんはくじつ)』のごとく晴れ渡っているのだろう。初戦にしてもはや王者を手中に収めたかのような強さだった。レッドブルカラーの青いマシンが天下を獲るのは、【青天確実】であろうと思われた。

※ よく晴れわたった青空と日の光。転じて、心の中が明白で、少しも隠しごとや疑われることがない状態。

日産GT-Rに、『豪華絢爛(ごうかけんらん)』純金グリルを施した中近東仕様が特別に製作された。やはりこの手の優良顧客は、オイルマネーに潤う産油国なのか?

生みの親である水野和敏CPSも、我が子の『才色兼備(さいしょくけんび)』ぶりには目尻が下がることだろう。世界最速にして【最速絢美】なのである。

キノシタは今年もレース番組の解説を担当した。「WTCC世界ツーリングカー選手権」と「スーパーGT選手権」。司会者との調子にのった『丁々発止(ちょうちょうはっし)』は、本人的には【司会良好】だが、解説者としてのコメントは、さながら【回答乱麻】のごとき珍回答乱射である。あしからず。

※互いに負けじと激しく議論を戦わせることのたとえ。

21年目のキノシタの挑戦はレクサスLFA87号車で参戦。
21年目のキノシタの挑戦はレクサスLFA87号車で参戦。

キノシタにとっての春は、「ニュルブルクリンク24時間耐久レース」で迎える。21年目の挑戦は、またレクサスLFAで参戦。『力戦奮闘(りきせんふんとう)※1』である。もはやベテランの域に達しているようで、口悪い後輩どもからは『孤軍奮闘(こぐんふんとう)※2』で遠慮がない。

ここでは可愛くもない生意気な後輩の名を、呪いを込めて誤字で紹介しておく(笑)

【腋阪呪一】【石裏宏明】【大嶋滓也】達のことである。

※1 力を出し尽くして闘うこと。一所懸命努力すること。
※2 支援する者がない中、一人で懸命に戦うこと。

政府は、東北の高速道路無料開放を第3次補正予算で閣議決定した。野党の反対でまったく身動きできぬ【拘束道路】を【大惨事金】で乗り切ろうとしたのだ。

福島第一原発が放出し続けているであろう放射能が、野菜や魚の購買意欲を減退させている。原子力安全委員会はそれを『風評被害』だと言い切るものの、真実を世間に公表せず、非を通じ込めることこそ【封表被害】である。

日本自動車工業会は、「土日」のかわりに「木金」を休みにする『輪番休業(りんばんきゅうぎょう)』を始めた。もともとは、百貨店や商店といった小売店で有用なシステムだが、不測の事態となった東日本震災による【電力不測】に対応するため、創業以来初の自動車業界版【輪版創業】となった。

※ 互いに協力し、予定を立てて順繰りに休業すること。

8月1日、岐阜県岐阜市の市道で、追跡中のパトカーと原付きバイクが正面衝突した。バイクを運転していた61歳の男性は全身打撲で死亡。警察官の運転が正しかったのかが追求された。公僕が前進してきたバイクを避けられなかったらしい。相変わらず【前進打僕】は闇の中に……。

大震災だけではなく、タイの洪水被害も自動車業界を震撼させた。特にホンダは工場が水没。『天変地異』への備えが叫ばれることになった。

日本カーオブザイヤーの大賞が「日産リーフ」に決定した。この1年に発売された数あるクルマの中でもっとも評価されたのである。下馬表でも圧倒していた。予想どおりの圧勝なのだ。天と地ができた世界のはじまりのことを『天地開闢(てんちかいびゃく)』という。ならば、「i-MiEV」が種をまき、量産電気自動車の世界を実らせようとしたリーフの功績は【電池開闢】に等しい。

なんだか2012年は明るい年になりそうに予感がする。自動車業界が『公明正大(こうめいせいだい)※1』となって光り輝くこと、そして皆様に幸せが訪れることを、『明鏡止水(めいきょうしすい)※2』の境地で待つことにする。

※1 私心をさしはさまず、公正に事を行うこと。
※2 邪念がなく、澄み切って落ち着いた心の形容。

それでは、良いお年をお迎えください。

木下アニキの俺に聞け 頂いたコメントは、すべて目を通しています!するどい質問もあって、キノシタも大満足です!言っちゃダメなことなど。オフレコで答えちゃいますよ!
ニックネーム「GRマニア」さんからの質問
レーシングドライバーの皆様はやはり、スポーツカーを所有しているのですか?メーカーから支給されるんですか?キノシタさんの愛車は?

我々レーシングドライバーは、やはりクルマが大好きだからね。もちろんそれなりの個性的なクルマを乗ってるようだね。

だいたい複数所有が一般的。趣味のクルマと、移動のためのクルマを、使い分けているようだ。趣味のクルマは、大別して2パターン。旧い「ミニクーパーS」だとか「シトロエンDS」といった超個性派、もしくはドリフト仕様の「シルビア」や「スープラ」といった武闘派にわけられる。

移動のクルマはほとんどが、トヨタ系ドライバーでいえば、「レクサスLS」、「プリウス」、「ヴェルファイア」といったところのよう。日産系で「フェアレディZ」「ムラーノ」が人気。ホンダ系は「オデッセイ」が主流だね。年間5万kmほど走るから、経済的で楽なクルマに集中するようだ。

メーカーからの貸与システム?

契約金に「クルマ購入費」に充当する分が上乗され、それを原資に自ら購入しているよう。昔は、メーカーの最高級モデルを無償で貸与されていた時期もあるけれど、最近ではメーカーも財布の紐がきついようで・・・。気前良く貸与してくれてもいいのにね。売るほどクルマを持ってるんだから(笑)。

ケチッ!(笑)

ともあれ、みんな強いこだわりがあるから、いいクルマを所有しているよう。この業界人は、『クルマエンゲル係数』が高いんだね。

キノシタの近況

 ラスベガス・スピードウエイで開催された大イベントに参加してきた。世界のトヨタ系販売会社幹部を一堂に集めて、1日を楽しんだのだ。驚かされたのはスタッフのユニフォームである。豊満な美女達がまとう揃いのTシャツには、「WAKU-DOKI」の文字が……。もともとは豊田章男社長が「もっとワクワクドキドキするクルマを造ろうよ」から始まった造語。はてはサーキットイベントやセレモニーに発展、ついに言葉が、スローガンまで進化したのだ。
 日本語の話せぬ彼女達が、ことあるごとに、たどたどしいイントネーションで、「WA・KU・DO・KI!」を連呼していたのには笑った。そのうち,アメリカで日本語として認知されるかもしれない。「カラオケ」「スキヤキ」と同じように……。
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【編集部より】
木下アニキに聞きたいことを大募集いたします。
本コラムの内容に関することはもちろんですが、クルマ・モータースポーツ・カーライフ…等のクルマ情報全般で木下アニキに聞いてみたいことを大募集いたします。“ジミーブログ”にてみなさまのご意見、ご感想をコメント欄にご自由に書き込みください。