2012年も早2月である。あっという間にもう、2012年の12分の1ヶ月が過ぎ去ってしまった。
月日は誰にも等しく分け与えられているはずなのに、時の流れは何故か、年齢を重ねるほどに駆け足になるようである。理由のひとつは、行動と意識の速度が、それに追いついていかないからに違いない。身の回りの変化が乏しいからかもしれない。
ようやく2012年版のスケジュール帳を購入したのは3日前だった。昨年に消化しておかねばならないはずの雑務が机の上に散乱している。ホームページのプロフィール欄にはまだ、昨年の戦績すらアップしていない。事務所の壁には、「ゴミ収集は28日までにお願いします」との張り紙が貼られたままである。そのまま1年ひと回りしそうな気配が、すでに漂っている。
そんなだから、いまさらながらの話題でご容赦願いたい。
実はキノシタ、こうみえても古風なニッポン男児なのである。
ゆえに、祭事、神事は欠かせない。節句、餅つきはもとより、クリスマスツリーの前で年越し蕎麦を喰う。出初め式から棟上げ式まで足しげく通う。結婚式の招待を断ったことはない。己の火葬は「神宮寺型四方破風関東型センチュリー」で誘えと家人には言い伝えてある。
「正月」などの祝い事は、まさに浮き足立つ。おせち料理は3段重ねが原則だし、黒豆、数の子、きんとん、お煮しめなどは家族総出でこしらえる。餅つき大会へ着物をまとってはせ参ずる。さして興味もない旗揚げなどにも、なぜか正月になれば挑みたくなるし、初詣も欠かさない。初詣は千葉・検見川神社と決めている。もちろん、「臥薪嘗胆」などと心にもない誓いを、字引をペラペラと捲りながら「書初め」したりするわけだ。こんな時にぺんてる筆ペンは重宝する。
であるから、松飾りにもこだわりがある。神社で祈祷していただいた「しめ飾り」を玄関先に飾る。できれば樽のように太い竹筒6連装の松飾りで武装したいところだが、緊縮財政的な事情により断念。干からびたスルメにわらを絡ませた「輪飾り」で妥協しているものの、意気込みだけは負けていないと自負している。
「松飾り」は神様への目印だという。正月に福をもたらす神様が迷わないためのものだそうだ。不思議なことに、神様にも悪いのがいるようで、悪神を遮るための壁の役目もあるという。世の不浄を清める意味もあるという。
そうと聞けば、努力、忍耐、我慢を不精している代償に、他力本願を志の根とするキノシタだから、あらゆる神事にすがるのも道理なのだ。「書初め」を「他力本願」としないのは、己を繕うためである。
どんだけ神頼みかって、事務机の上には、派手な俵の「七福神」と、子供の頭部サイズの「だるま」と、そして小振りながら表情が頼もしい「獅子舞」が鎮座ましましている。その背後には「破魔矢」もある。「お札」もある。
「家内安全」
「五穀豊穣」
「萬民豊楽」
「開運招福」
「商売繁盛」
「所願成就」
神頼みもはなはだしい。
「大入満員」の文字も踊る。
本来、年末の28日に飾りはじめ、新年を過ぎた7日、11日、15日に取り払う。その後に神社で焼き払うのが習わしだというが、守り神の数だけ、多くの福が訪れそうだし、せっかくの神様の誘いを焼き払うのも心が痛む。ゆえに飾り物は増えるばかり。七福神やだるまは、もう5年選手である。
そんな古風な神事にすがっているのだから、もちろん愛車を華やかに飾る「しめ縄飾り」を欠かしたことはない。フロントグリルで風になびく正月の象徴には、たいそう予算を割くのである。
キノシタの「松飾り」は基本的に豪華である。玄関先の松飾りは少々貧相でも、愛車の顔を彩る「しめ縄飾り」に手を抜いては男の沽券にかかわる。
小さく編んだわらをフェニックスのように天に羽ばたかせ、編んだ穂を前垂れのようにさげる。中央の幹から左右に向かって、風圧を迎え撃つようにシダの葉を青々と茂らせる。そこから頂点に向けて、天を突き刺さんばかりの力強さで麦の穂が伸びる。和の中心には「みかん」が1点華やかで、絵馬が踊る。そして正面には堂々と、「安全祈願」の文字が踊るのである。
家人にいわせれば、ちょっと恥ずかしいほどのサイズである。「安全祈願」という文字から想像するにそれが松飾りではなくクルマ用の「しめ縄飾り」であることは想像させるのだが、それをそのまま玄関に飾っても不自然ではあるまいという威風堂々ぶりである。
そりゃもう、「新和風総満艦天井馬堀絵馬」と呼びたくなるほどの存在感である。デコトラ級の華やかさ。組事務所風のゴテゴテ感。そこまで着飾られては、善神様が迷うわけはないし、悪神も寄りつくことはないだろう。風にはためき走り去る姿を自分の目で見られないことが寂しい。
「しめ縄飾り」の御利益は満点だろうと確信する。これまで交通事故らしい事故をしたためしがない。危険とされるレースだって、これまで全損クラッシュしたこともなければ、入院するような天罰が下ったこともない。
なにしろ、こうしてGAZOO.comに、平穏なクルマ生活を題材にしたコラムの連載が許されている。栄光のレーシングスーツをまとって、ニュル通いだって許されている。これが己の努力や能力ではないことは自分が百も承知である。ということは神のお導き以外に理由が立たない。そうでなければ、平民あがりの無能レーサーがこうして、細々ながらも禄を食めるわけがないのである。一事が万事、「しめ縄飾り」の恩恵だと感謝しているのだ。
一方でこれは、日本自動車史最古のドレスアップに違いないと確信している。脈々と伝えられてきた「伝統」を守ることが、クルマスキに生まれてきた己の使命だと言い聞かせているのだ。
と、ここまで偉そうに武勇を語っておきながら、今年の「しめ縄飾り」は少々貧相なものになってしまった。度重なる緊縮財政が理由なのだが、とてもキュートな、つまり子供の三輪車あたりに相応しいサイズに成り下がってしまったのである。
金額500円。史上最低額に手を出してしまった。
小さいながらも今年のしめ縄をありがたく頂戴した直後、いつもの巫女さんに微笑みかけられた。
「あら、今年も、大きい飾りをご用意しておきましたのに…」
「いつもは奮発するのですけど、今年はちょっと事情があって…」
「事情?レースの成績でも悪かったんですか?」
「そうではないのですけれど…」
「だったらいつもの、“やけに派手”で“やたらに大きい”しめ縄飾りをお持ち帰りくださいな」
「いや~、あの~、やっぱり、御利益は、値段に比例するんですよねぇ…」
「いえ、金額の問題ではありませんよ」
「サイズに比例するとか?」
「それもありませんよ」
「派手さには比例するんですよねぇ?」
「心の持ちようですから…」
「巫女さんは、小さなしめ縄飾り、お嫌いですか?」
「いえ、ウジウジ迷っている男はもっと嫌いですわ」
かくして愛車のフロントグリルには、小さくてキュートな「しめ縄飾り」がちょこんと愛嬌を振り撒くことになった。
なんだか恐縮しているようである。
彼の名誉のために(つまり小さなしめ縄飾りのために)、今年の成績が落ちないことを祈ることにする。
また今年も「他力本願神頼み」かい!
そうです。誰でも走れるんですよ。凄いでしょ。
ニュルブルクリンクは、F1が開催されるグランプリコースと、世界一過激なことで有名な旧コース(ノルドシュライフェ)があります。その旧コースは、日頃一般に開放されているのです。メーカーの占有時間帯は除きますけどね。
ライセンスも必要ありません。レーシングスーツも必要ありません。ヘルメットも持参しなくて良いのです。 オープンカーでも良いです。バイクでも良いです。バスでも良いです。2人乗りでも良いです。4人乗りでも良いのです。BMW335カブリオレに若い男女が4人乗りしている場面を見たことがあります。その真横を、レーシングギアで武装したポルシェ911GT3RSが抜き去るシーンも頻繁です。それが日常なのです。羨ましいでしょ?
必要なのは走行代金だけ。「1周€22 (2,574円)」と「自己責任」だけです。
(※ €1=117円で計算・2011年6月現在)
「ランボルギーニ・アヴェンタドール」と「フェラーリFF」で「2012年走初め」をしたのも束の間、リーフを走らせに北海道・旭川に渡道。V12気筒7リッターマシンからEVに乗り換えた。氷点下の世界である。
実は電池にとって低温は大敵だ。たとえばヒーターの問題。熱源がないから、ひたすら電熱を働かすしかない。よって電池が消耗する。
だがそれでもEVゆえに有利なことも発見。それはのちのち紹介しましょうか…!
www.cardome.com/keys/
【編集部より】
木下アニキに聞きたいことを大募集いたします。
本コラムの内容に関することはもちろんですが、クルマ・モータースポーツ・カーライフ…等のクルマ情報全般で木下アニキに聞いてみたいことを大募集いたします。“ジミーブログ”にてみなさまのご意見、ご感想をコメント欄にご自由に書き込みください。