ホンダと聞いてF1を思い浮かべるのは、もう旧い感覚だそうだ。モータースポーツの頂点であるF1を圧倒的なパワーで席巻したあの衝撃は、もう過去のことのようなのである。
だったらなんだ?
フィット?
ハイブリッドスポーツ?
お洒落な青山の会社?
ビジネスジェットメーカー?
いや、すべて間違い。
とあるアンケートによると、どうやら「ホンダ=アシモ」なのだそうだ。
ハイロウズの♪日曜日よりの使者♪の軽快なリズムに乗せ、ちょっとドジするアシモに感情移入してしまう人は多かろう。何を隠そうキノシタも、アシモの大ファンである。実は着ぐるみだったりして…なんて思ってしまう可愛い動きが微笑ましい。
企業広告でも大活躍。商品そのものを強く訴える広告ではなく、ホンダという企業のイメージリーダー的に扱われているのだから、「ホンダ=アシモ」となるのも納得する。
メーカーからすれば、「ホンダ=アシモ」であり、「ホンダ=親しみやすさ」となるわけで、CMプランナーと宣伝担当者のセンスには脱帽である。
アシモが活躍するCMは沢山ある。
「海外のとある電車のプラットホームに駆け乗ろうとする通学途中の子供達、そこに混じってアシモも遅れまいと、最後尾から駆け足。だが、いかんせん歩みは遅い。子供達がみんな乗り込み、さてアシモも車内に…。その瞬間にドアがパタリと閉まる。走り去る電車を寂しそうに見送るアシモ…」
あのCM良いねぇ…。
出来ればアシモの高性能を訴えたいところなのだが、足の遅さを隠そうともしなかったところなどは、硬い企業では許されないだろう。ホンダならではの大英断。アシモの愛らしさの影で、企業の柔軟性をやさしく潜ませているのだ。
「地下鉄から街中へつながる階段で、ビジネスマンが足早に先を急ぐ。その背後からアシモがユルユルと登ってくる。ようやく地上にたどり着くアシモ。さらにその後ろから、元気一杯の子供達が一段飛ばして駆けてくる。最後の少年は、アシモのカクカクした歩きを真似て茶化す。Do you have a HONDA?」
微笑ましい。
「アパートの中庭でダンスを踊るアシモ。そこにひとりの少女が歩み寄る。一緒に踊りはじめるのだが、背後から母親の声。「何をしているの? 早く宿題しちゃいなさい!」「え~、宿題やだ~、あたしにもあんなロボット買って~」遊び相手がいなくなり寂しそうにフレームアウトするアシモ…」
まるで家族の一員になりたがっているようである。
そんな中、キノシタの好みのアシモCMは「RUN」である。
「とある空港の平面エスカレーターに立つ老紳士。その脇の通路をユルユルと歩むアシモをチラ見しながら抜き去る。するとアシモもチラ見。負けたくないとばかりに早足に。老紳士も負けまいと駆け足に。お互いライバル心剥き出して先を急ぐ。ついには老紳士が先行したかに見えた。だが、老紳士の先には、大きな荷物を運ぶカップルが。それに塞き止められる。その脇をアシモが抜き去る。悔しそうな老紳士。勝ち誇るアシモ…。だが、勝利を確信したかのようなアシモの目の前には、珍しいアシモにカメラを向ける少年が…。後ずさりするアシモ…」
2006年のCMだが、アシモって駆け足できるんだって感動したと同時に、アシモの愛らしさが印象に刻まれた。
ロボットの進化は目覚ましい。自動車メーカーの生産現場などに行くと、けなげに働くロボットを見ることが出来る。3K現場では人間の代役として貴重な存在だ。
人間そっくりのロボットが最近話題である。アンドロイドと言うそうで、仕草や表情までもがまるで生身の人間のよう。SF映画の「ターミネーター」や「ブレードランナー」などは、ほぼ完成したアンドロイドである。
昨日、落語家の故・桂米朝さんのアンドロイドが高座にあがったという。音声は収録しておいたテープだったが、会場は大きな笑いに包まれた。観客はほとんど人間と錯覚しかけていた証拠である。
アシモは、アンドロイドに対してヒューマノイドと呼ばれる。表情がなく、姿形はロボットに近いのが違いである。だが、どこか感情すらありそうだと思えるからアシモは偉い。
先日、最新のアシモがお披露目した。
世界初の二足歩行ヒューマノイドとして誕生したアシモも、すでにお茶を運んだり、往来をぶつからずに歩けるという。
1986年の誕生の時には、人間の形をしておらず下半身だけの不気味な姿だった。一歩進むのに5秒を要したという。いまでは、時速9km/hで駆ける。子供の小走りに近い速度だ。駆ける時には、両足が路面を離れるというのだから感心しきり。道につまずきそうな突起があってもバランスする。サッカーボールを正確に蹴って驚かせてくれた。
なんでも大きな進化は、柔らかい紙コップにジュースを注げることだという。自律歩行し、バッテリーが減ったら自ら充電場所に戻るまで進化したのだから、ジュースの継ぎ足しなど簡単なのかと思っていたらそうでもないらしい。柔らかい紙コップを手にするには優しい力加減が必要であり、継ぎ足すジュースによって重みが変わる。それに合わせて力を調節しなければならない。これが困難らしいのだ。人間が無意識にしているそんな行為も、難題だという。それをも克服したのである。
近い将来には、アシモはどんな芸を披露してくれるのだろう。なんだか子供の成長を見守る父親の心境である。
アシモの技術は、クルマに投入されているという。できれば、人を癒してくれるその愛らしさが注がれれば、クルマ社会はもっと穏やかになるのだが…。
日本カー・オブ・ザ・イヤーの選考委員という大役を仰せつかって早十数年になる。その年でもっとも光ったモデルに投票することになるのだが、基本的な考えはこう。「十年後に振り返ってみて、2012年にはあのモデルが誕生したんだよね」と思えるモデルに投票することにしているんだ。
クルマの出来はそれほど意識していない。たとえ完成度が低くとも、印象に残るとこが大切だと考えている。その年を彩ったモデルである必要がある。
「BRZ&86」はたしかに目立った。BMW3シリーズなんて、とっても良く出来ているしね。レンジローバー・イヴォーグも人を惹き付けるよね。
イギリスに行った時に遭遇。バッキンガム宮殿の脇に馬車が走っていた。デモンストレーションも兼ねてるのだが、その凛とした姿には敬服。この前後には車の往来がある。だが誰も抜こうとせず、もちろんクラクションの音もなし。クルマはもともと馬車の進化系であることを実感!「一馬力」
www.cardome.com/keys/
【編集部より】
木下アニキに聞きたいことを大募集いたします。
本コラムの内容に関することはもちろんですが、クルマ・モータースポーツ・カーライフ…等のクルマ情報全般で木下アニキに聞いてみたいことを大募集いたします。“ジミーブログ”にてみなさまのご意見、ご感想をコメント欄にご自由に書き込みください。