レーシングドライバー木下隆之のクルマ連載コラム ~木下アニキの俺に聞け!~クルマ・スキ・トモニ

人とクルマの、ともすれば手の平から溢れてしまいそうな素敵な思いを、丁寧にすくい取りながら綴っていくつもりです。人とクルマは、いつまでも素敵な関係でありたい。そんなGAZOOが抱く熱く溢れる思いが伝わりますように…。
レーシングドライバー 木下隆之氏


80LAP 30秒のドラマに夢中です      (2012.9.11)

TNP? 短くなってないし…

インパクトの強いテレビCMが流行である。特に自動車関係のCMは、手をかえ品をかえ、印象に強く残るCM攻勢が活発だ。

このところ元気なのはダイハツだろう。笑いを誘う系のCMが主流だが、その効果は絶大で、たしかに一度見たら忘れられない。

「TNP系」は話題をさらった。27.0km/Lという驚異的な燃費をアピールするのが目的のそれは、「低燃費」を意味もなく「TNP」に置き換えただけなのだが、そのストーリーは理由なく頬が緩む。

「TNPって?」

「低燃費だからTNPなんだよ」

「そもそも日本語だし、短くなってない…」

強面の役者である遠藤憲一とV6の岡田准一のマジトークが主体であり、そこに個性的な役者の小日向文世がアクセントを添えるのだ。

放送開始はそれほど新しくはないのだが、いまだに忘れられないし、実はその言葉を日常でも使ってしまっているほどなのだからプランナーの思うつぼである。

実は、ニュルブルクリンク24時間のレース中、走行中のドライバーは、毎周あるポイントでピットクルーに、燃料消費量を無線報告することになっている。計器の中のある数字を読み上げるだけなのだが、そのやり取りでさえこうだ。

「ピット、聞こえますか? TNP、○○です」

「TNP、○○ですね。確認しました」

あるとき後輩連中を初めて酒に誘ったら、「やつはTNPですから経済的ですよ」っていわれてはっとした。すぐに酔っぱらうこともすでにTNPなのである。そこまで応用されるともはや、ダイハツが作った造語であることなど消え失せている可能性も高いわけで、ダイハツの本懐を遂げたとは言い難いのだが、ともあれCMプランナーはしたり顔だろう。こうして今、キノシタが記事にしてしまっているのも好例だろう。

CMにはふたつの手法があるという。とにもかくにも繰り返し放映することで、視聴者の脳裏に深く強く印象を刻み付ける方法と、インパクトを重視することで印象つける方法だ。それを重ね合わせると、効果は二乗数で増す。

まさかトヨタが深夜限定CMを製作するなんて…

最近度肝を抜かされたのは“新型オーリス”のテレビCMである。

イスラエル出身の19歳の美形モデルが、真っ赤な下着に黒いコートを羽織っただけの姿で迫ってくる。コートを脱ぎながら歩く美形モデル。細い足。小さな尻や、見えそうで見えない胸をアップでとらえる。オーリスの前で振り向き腕を組み、カメラを前に仁王立ち。バストが露に…。

「常識に尻を向けろ。」

あっけにとられた数秒後、ようやくそのモデルが女性ではなく、中性的な男性モデルであることを理解するのだが、そのインパクトは確かに強烈だ。

ちょっと刺激が強すぎるという理由で、CMの放送は夜23時以降に限定しているらしい。それがどれだけオーリスのイメージを訴求するかは難しいところだが、これまでのトヨタのCMは保守的すぎたし、面白みに欠けたのも事実。少なくとも企業体質が大きく変わろうとしていることは伝わってくる。深読み過ぎる?

  • 細い足、小さなヒップ、真っ赤な下着…。
この時点ですでにドキドキなんですね。
    細い足、小さなヒップ、真っ赤な下着…。
    この時点ですでにドキドキなんですね。
  • オーリスの前に歩み寄り、スパッと振り返って腕を組むとバストが露に…。
「えっ?」誰もがドキッとするわけです。彼女が彼女ではなく「彼」だったことに気づくまでの数秒が、強烈なインパクトゾーンとなるわけです。
    オーリスの前に歩み寄り、スパッと振り返って腕を組むとバストが露に…。
    「えっ?」誰もがドキッとするわけです。彼女が彼女ではなく「彼」だったことに気づくまでの数秒が、強烈なインパクトゾーンとなるわけです。

子供心に、ワクワクドキドキ・・・♡

いまだに強い印象を残しているCMといえば、「スカイラインシリーズ」であろう。1968年にデビューしたC10型スカイライン(通称箱スカ)から、C110型スカイライン(ケンメリ)を経て、C210型スカイライン(ジャパン)までの「ハーフモデル系CM」は子供の心に憧れを喚起した。

時代は昭和高度成長期から成熟期に移行していたし、「クルマ=夢」ではなく、現実的な乗り物になっていった時代だ。たしか草刈正雄だったと思うけれど、ハーフ系イケメンが、超美人のハーフモデルとイチャイチャしながらドライブするストーリーと自分を重ね合わせ、恥ずかしながら興奮したものである。

だってC10型スカイラインが「♪愛のスカイライン♪」であり、C110型スカイライン「♪ケンとメリー~愛のスカイライン♪」、C210型スカイラインが「♪愛はたぶん♪」ってんだから、こりゃもうデートカーの典型的な姿である。

もう、このCMは宣伝のためのCMの域を超えて、ひとつの時代を切り取った原風景である。だってスカイラインのCMを集めた「スカイラインCMコレクション」なるDVDだって発売されているのだから、超CM的存在である。

「スカイラインCMコレクション」には、2代目から10代目までの79種が104本収録されている。CMだけで66分。特典映像などを加えて277分にもおよぶ超大作である。これをキノシタはひとり、チビチビと水割りなどを煽りながら飽きもせずに見続けてしまうのだから病気である。

CMは商品の訴求という枠を超えて、時代を表す鏡としての機能も備えている。数十年後、時代を浮かび立たせるようなCMを期待したい。

  • こんなDVDが発売されているってことが素晴らしい。それほど観たいCMってことです。
    こんなDVDが発売されているってことが素晴らしい。それほど観たいCMってことです。
  • ちなみにDVD購入者は、僕の友人の息子で、超クルマ好きの高校生。ということは原体験のない世代なのだが、それでもこのCMは心に響くという。
プレステのコントローラーと重なっているあたりが、時代の変遷を物語っていますね。
    ちなみにDVD購入者は、僕の友人の息子で、超クルマ好きの高校生。ということは原体験のない世代なのだが、それでもこのCMは心に響くという。
    プレステのコントローラーと重なっているあたりが、時代の変遷を物語っていますね。
  • そもそも「愛のスカイライン」なんてコピーが古臭くありながらストレートで突き刺さる。当時は高級の部類に属するスカイラインが、ダートをかっ飛ぶなんて…。
    そもそも「愛のスカイライン」なんてコピーが古臭くありながらストレートで突き刺さる。当時は高級の部類に属するスカイラインが、ダートをかっ飛ぶなんて…。
  • イケメンハーフの男女がひたすらイチャイチャしながら愛を語るわけです。
 自らの容姿はさておいて、イメージを重ね合わせてしまうわけですな。
    イケメンハーフの男女がひたすらイチャイチャしながら愛を語るわけです。
     自らの容姿はさておいて、イメージを重ね合わせてしまうわけですな。
木下アニキの俺に聞け 頂いたコメントは、すべて目を通しています!するどい質問もあって、キノシタも大満足です!言っちゃダメなことなど。オフレコで答えちゃいますよ!
ニックネーム「BR86Z」さんからの質問
木下さんは、普段の食事はカロリー等、気を付けているのでしょうか?
ご自宅での料理など、紹介してほしいです。
僕は、太りやすい体質なので、おすすめのメニューなどあれば、教えてほしいと思います。

かつては食事を気にしていた時期もあるけれど、食べることは大好きなので断念した。食事制限をしたことで増えるストレスを考えればむしろ体に悪いのだと思うことにしたんだ。とっても都合のいい解釈だけどね。

ただし、幸いなことに、野菜は大好きだし、豆類や乳酸菌類にも目がない。酒も浴びるほど呑むけれど、比較的体にいいとされている焼酎が大好きなんだ。考え方も都合主義だけど、体に都合良く出来ているらしいね。だから健康です。

ある人がこう言っていた。

「体は必要だと感じるものを欲するものなんだ。だけど、頃合いというものがある…」

その理論からすると、食べたいものを程よく口にするのが理想だということになる。その言葉を信用するってところも、都合主義である。(笑)

キノシタの近況

 年に一度開催される「ロードスター4時間メディア対抗レース」に参戦した。スーパーGTの番組に出演しているという理由で「Jスポーツ」チームからの参戦。85リッターの燃料で筑波サーキットを4時間走ればいいのだが、ドライバーの最長時間やらピットストップ義務付けなどが複雑に絡むからテクニックだけではなく戦略も大切なのである。

 もっとも、超ベテランの小幡栄さんや渡辺明さん、若手の柴田優作くんやJスポーツ久保健部長とのコンビが最高。最後はガス欠ストップだったけれど、レースはメンバー次第だと強く実感しました。「オレがオレが…」という我がままドライバーがひとりもいないチームは理想です!
www.cardome.com/keys/

【編集部より】
木下アニキに聞きたいことを大募集いたします。
本コラムの内容に関することはもちろんですが、クルマ・モータースポーツ・カーライフ…等のクルマ情報全般で木下アニキに聞いてみたいことを大募集いたします。“ジミーブログ”にてみなさまのご意見、ご感想をコメント欄にご自由に書き込みください。