やや旧聞に属するが、スペインのサッカーリーグが開幕したときに、ちょっとした騒動が起きた、と新聞報道があった。
夏真っ盛りの8月19日、レバンテ-アトレチコ・マドリード戦、マジョルカ-エスパニョール戦の2試合と、26日のバレンシア-ラコルーニャ戦が午後11時にキックオフとなったのである。ということはつまり、試合終了は深夜1時を超える。
「子供が寝る時間に試合だなんて、どうやって観せればいいんだ。サッカーにとっていいことではない」
チーム関係者は嘆く。
たしかに、深夜開催否定派の思いはわからないでもない。子供達にもサッカーの楽しみに触れてほしいというのに、深夜開催ではそれもままならない。せっかくの夏休みなのだ。青く澄み渡った空の下、青々とした芝生を駆け回るプレーを楽しんでもらうのが筋だろう。
そこには、大人の事情が見え隠れする。
リーグ側は、真夏の熱さを凌ぐために、8月に開催される第一節と第二節に限って、午後11時キックオフを認めているという。選手の体力と、観戦する側の体を心配してのことだというのが名目。
炎天下で頭クラクラでは、たしかに体の毒だ。
「おっと、キーパーがフラフラしていますよ…」
「おそらく熱中症でしょうね」
そんな解説は聞きたくない。だから、陽が沈み、気温がやや下がる夜半開催は、しごく理にかなっている。
サッカー選手はなぜか、キャップをかぶらないから、よけいに直射日光は身に応えるという事情もある。
ただし本当の理由は、テレビ放映権の問題ではないかという見方が根強いのだ。
欧州では各国のプロモーターが放送権を一括管理しているのに対してスペインでは、それぞれのクラブが独自に放送権を扱う会社と契約をする。となれば、放送権管理会社は、人気の高いチームのテレビ放映を、高視聴率の見込めるオイシイ時間帯にあてはめることになる。おのずと、レバンテやアトレチコ・マドリードといった不人気チームは深夜枠とならざるを得ないのだ。
欧州スタンダードだったら、プロモーターが全体収支を考えながら放映バランスを整えるはずだ。だがスペインではゴールデン枠の奪い合いになる。
レアル・マドリードとバルセロナという人気チームが、すべての放送権収入6億のうちの約半分を占めるという現実がそれを物語る。
「結局は、金に目が眩んだよな…」
怒気を抑え切れない人が多いと聞く。
とはいうものの、キノシタ的には、午後11時キックオフもそれほど悲観したことでもなさそうに思う。
灼熱地獄でのプレーも辛いだろうが、深夜にプレーするのも決して楽ではない。深夜にゲームセットをむかえれば、“午前様サッカー選手”とあいなる。そこに地方移動が加われば、選手はむしろ“国内時差ボケ”との戦いとなるのだ。
そうはいっても「そもそもレアルの裏で試合をやっても、ダレも見やしないぜ」という現実がある。テレビ放送がないよりは、たとえ時間帯が遅くとも、放送されるだけでもありがたいという考えも捨て切れないから悩ましい。
現在国内でテレビ観戦可能なモータースポーツ番組は以下のとおり。
「GAORAのWTCC世界ツーリングカー選手権」 ←木下がゲスト解説してます!
「GAORAのインディカーシリーズ」
「GAORAのインタコンチネンタルラリーシリーズ」
「JスポーツのスーパーGT」 ←木下がゲスト解説してます!
「JスポーツのDTMドイツ・ツーリングカー選手権」
「Jスポーツのフォーミュラーニッポン」
「JスポーツのWRC世界ラリー選手権」
「JスポーツのFIA世界耐久選手権」
「JスポーツのFIA GT1世界選手権」
「日テレG+のNASCAR」
「フジNEXTのフォーミュラー1」
「BSフジのフォーミュラー1」
「BSフジのフォーミュラーニッポン」
「テレビ東京のSUPERGT+」
こうして並べてみると、なかなかどうしてコンテンツは豊富である。こんなにあったっけ? とあらためて思う。
ただ寂しいのは、地上波番組はひとつだけということ。その地上波すら、午後11時30分からの枠だ。BSやCSは生放送も録画放送もある。何回もリピートされるという点ではモータースポーツをテレビ観戦する機会は少なくないのだが、オイシイ時間帯は少ないのが現実だ。
最近は「録画して観る」時代だから、あまり時間帯は気にしなくていいのではないかとも思う。現地に足を運んでほしいという思いは残るけれど、まずはテレビから興味を持ってもらいたいものだよね。
10年ほど前のこと。BTCCブリティッシュ・ツーリングカー選手権で深夜開催のレースがあった。たしか午後8時頃のスタートだったと思う。しかも土曜日開催である。
当時からイギリスは、斬新な企画を次々に投入していた。そのひとつが、「夜のレース開催」だった。
目的は、スペインリーグのそれと似ているものの、選手のためでもテレビ放映権利的大人の事情でもない。現地に足を運んでくれる観客のためだけの優しさが、レースの夜開催を実現させた。
「日曜日の昼間にわざわざ地方のサーキットに足を運ぶのは大変だろう。クタクタになって帰宅して、翌日早くからお父さんが仕事に向かうことを考えたら、土曜日開催というアイデアが持ちあがったんだ。」
国民の生活パターン分析が根底にある。
「お父さんには庭掃除もあるし、家族団欒もある。子供とサッカーもしたいだろうしね。そう思って、土曜日に仕事が終ってからサーキットに来てくれればいいようにしたのだよ。
もともとイギリス人はあまり働かないからね。仕事を終えてからサーキットにやってきても、十分に間に合う時間のはずさ。
そして翌日もまた休み…、いいアイデアだろ?」
かつてBTCCマシンの開発ドライバーをしていたこともあって、イギリスのプロモーターとは懇意にしていた。そのボスがそう言っていたことを思い出す。
たしかに、週末に仕事仲間と連れ立って、たとえばバールで酒を煽るような気軽さでレース観戦が可能だ。クラブ活動を終えた子供と連れ立ってもいい。少々帰宅は遅くなるけれど、日を跨ぐほどではない。多少夜更かししたって翌日は休日だ。寝坊すればいいだけなのだ。
スペイン・サッカーリーグの午後11時開催の時間論議はともかくとして、観客重視の柔軟な発想は認めたいと思う。
ただ、ちょっとした弊害もあった。
実はキノシタは、国内のWOWOWで「BTCC」のゲスト解説を担当していた。現地からの衛星映像を国内のスタジオで受け取り、それをモニターで見ながらの解説スタイルだった。
「キノシタさん、このバトルはいかがでしょう?」
「いや、まったく読めませんねぇ~」
「それほど混戦だということですね?」
「いえ、見えないんです!」
後にも先にもこんなコメントをしたのは一度かぎりである。
深夜の暗いサーキットで、ヘッドライトをハイビームにして迫ってくるマシンがどれなのかが、まったくといっていいほどわからなかったからなのだ。
ゼッケンも色も、もっといえば車種さえも判別できなかったのである。それでどう解説しろと…。
かくいう実況アナウンサーのほうがもっと悲劇だった。
「さあ、シグナルがブラックアウトで全車一斉にスタート!クルマが走ってくるぞ、たくさん走ってくるぞ。とっても、たくさんたくさん走ってくるぞ!」
順位の変動も、コースアウトしたマシンも、その車種もほとんど実況できないのだ。
夜中開催の精神と発想は、灼熱の国F1アブダビGPやF1シンガポールGPに受け継がれているが、当時、満足な照明設備を持たないイギリス(田舎のスネッタトーン・サーキット)ではやはり無理があったと思う。
キノシタは、態度はデカいが、気は小さい。それでも見えぬレース生放送をなんとか終えることができたのだから、煌煌とライトに照らされる近代的サッカースタジアムでの放送なんて、まったく問題なかろうと思けどね。
簡単なようで難しい質問だよね。
特に「86」が素材だと答えに窮する。
というのも、「サーキットで優れたタイムを叩き出したい派」なのか「ワインディンクで気持ちよくドライブしたい派」なのかで選択が異なるよね。「ドリフト派」なのか「グリップ派」なのかでも異なる。
たとえば、ドリフトに興じたいのだったら、フロントにTOYOR1R/リアのTOYODRBなんてのがお勧め。フロントにがっちりグリップするR1Rで食いつかせておいて、リアはドリフトコントロールしやすいDRBで整えるというようなパターンがいい。といった具合にね。
隔月刊の「GT-Rマガジン」が主催する好例の「R'sミーティング」に招待されました。かつてはGT-Rドライバーだったし、同誌で「R's百景」というエッセイも連載しているという関係でのトークショー出演。
現場には夥しい数のGT-Rが勢揃いしていたのだが、嬉しかったのは、僕の背後に映っている「緑のクルマ」。僕が当時戦っていたグループA仕様の「共石GT-R」のレプリカモデルが来ていたことだ。熱狂的な個人の作品である。
全日本総合優勝を何度も経験したし、インターTECで欧州勢を抑えて優勝もした。キノシタの歴史を彩る希少な1台なのだ。
ちなみに、右横のイエローのマシンは、いまアウディで活躍するT・クリステンセン車。写真では見切れているけど、さらに横には、GAZOO Racing 86で活躍する影山正彦選手が戦っていた「カルソニックGT-R」もあった。
そう、当時のバチバチライバルがいまこうして、GAZOO Racingでチームメイトとしてコンビを組んでいるのです。僕らはこれで育ったんだよね。
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【編集部より】
木下アニキに聞きたいことを大募集いたします。
本コラムの内容に関することはもちろんですが、クルマ・モータースポーツ・カーライフ…等のクルマ情報全般で木下アニキに聞いてみたいことを大募集いたします。“ジミーブログ”にてみなさまのご意見、ご感想をコメント欄にご自由に書き込みください。