レーシングドライバー木下隆之のクルマ連載コラム ~木下アニキの俺に聞け!~クルマ・スキ・トモニ

人とクルマの、ともすれば手の平から溢れてしまいそうな素敵な思いを、丁寧にすくい取りながら綴っていくつもりです。人とクルマは、いつまでも素敵な関係でありたい。そんなGAZOOが抱く熱く溢れる思いが伝わりますように…。
レーシングドライバー 木下隆之氏


87LAP 動かないクルマも魅力的です        (2012.12.11)

米国LAショー!

米国LAショー!

「クルマは動いてこそ価値がある」

常々そう思っている。

それはもう、クルマへの素直な感想というレベルではなく、たとえば「人は神が造りたもうた…」に等しいほどの、キノシタの格言だといってもいい。

あはっ、それほど大上段に物事を構える必要などはないのだが、モーターショーと名のつくイベントには背を向けてきているのは、クルマは展示されているだけで走らないからなのだ。

デトロイトモーターショー、フランクフルトモーターショー、ジュネーブモーターショー…。世界にはビッグなモーターショーが沢山ある。

十数年前に一度だけ、取材という業務のために足を運んだことはあるけれど、あれから今年まで観戦する機会は訪れなかった。だって、東京モーターショーだってドタキャンすることだってあるのだから、わざわざ海外にまで遠征するわけがない。

業界人の中には、世界各地のモーターショー巡りをする御仁も少なくない。レギュラー参戦組ではないものの、たとえばデトロイトだけは欠かさないで参加する、あるいは、北京だけは行くように心掛けている、というジャーナリストも多い。そんなのに、東京にすら行かないなんてほとんど非国民。この記事を読んだ諸先輩方からのお叱りメールが怖いほどである。

ただ、なんと言われようとも、クルマは走ってナンボを金言名句としているキノシタには、展示されているだけで走らないクルマはクルマではなくオブジェ、つまりモーターショーではなく「クルマ型オブジェ」展覧会には足が向かないのは道理。オイルの焼ける匂いや、金属が擦れる音はもちろんのこと、そもそもエンジン音すら聞こえてこないのである。興味なし…なわけである。

初めてのLAショー

そんなキノシタが先日、LAモーターショーに出掛けた。そしてにわかに、モーターショーに興味を持ってしまったのだから笑える。「人は神が造りたもうた…」級の格言も、気分次第で前言撤回するのがキノシタの良いところである (笑)。

たしかにクルマは動いていない。ステージ後方で垂れ流している映像からのエンジン音は、リアルサウンドではない。バーチャル感は溢れている。

ショーにはショーの別の魅力があることを知った。ちょっと変則的な思いだけれど、クルマそのものというより、メーカーがこのショーに期待する思いや、我々へのメッセージなどを深読みしようとすると、にわかにモーターショーの魅力がクローズアップしていくのだ。

ショーには公道ではお目にかかれないモデルが笑顔を振りまく。たとえばトヨタブースでは、新型「RAV4」がワールドプレミアとなった。レクサスブースでは、来期デビュー予定とされている「LF-CC」が注目の的。それを観るだけでも興奮する。だけどそれとは異質の門外漢であるキノシタにとっては、ステージの造作や構成などに注目してしまうのだ。

それぞれのメーカーが趣向を凝らして…

ホンダのブースは真っ赤っか! ただし、クルマだけでなくアシモから耕耘機まで…。サスがホンダです。
ホンダのブースは真っ赤っか! ただし、クルマだけでなくアシモから耕耘機まで…。サスがホンダです。

たとえば「ホンダ」

赤基調のブースには、ハイブリッドのアコードから、真っ赤なインディカー、真っ赤なGPマシン、真っ赤なモトクロッサーが並ぶ。もちろんアシモもあり、船外機があり、田植機から発電機、そしてプライベートジェットのレプリカが展示されている。

全方位的にエンジン付きを展開するホンダを声高らかにアピールとしてるわけだ。

リンカーンには、驚くことに新車は一切ナシ。かつての栄華を思い起こさせる伝統的な仕上がりだ。懐かしむだけでいいのかとも思う。
リンカーンには、驚くことに新車は一切ナシ。かつての栄華を思い起こさせる伝統的な仕上がりだ。懐かしむだけでいいのかとも思う。

かたや「リンカーン」

モーターショーなのに新車は一切ナシ。すべては1950年から1960年代の旧車のみ。ブースデザインは、エンブレムの元となった六角形で彩られており、旧車を展示することで伝統の厚みを語っている。

それにしても、新車一切ナシで良いのかねえ?

そして「日産」

とことんモータースポーツ押しである。ル・マン参戦で話題をさらった「デルタウイング」が中央に展示。どかんとアイキャッチ。その背後でさりげなく、インフィニティを表現していた。

マツダは「魂動」。漢字攻めは、米国では響きそう。
マツダは「魂動」。漢字攻めは、米国では響きそう。

「マツダ」

漢字押しのマツダはここでも手抜かりはない「魂」の「動」と書いて「KODO」と読ませていた。どこか最近のマツダアイデンティティは、光岡自動車の「オロチ」に似ている。そのルックスがそっくり。だからというわけではないが、漢字が似合っていた。オリエンタル押しである。

ボルボは北欧家具見本市のよう。とても落ち着きのあるしつらえです。
ボルボは北欧家具見本市のよう。とても落ち着きのあるしつらえです。

「ボルボ」

徹底的に北欧家具縛りである。そこに安全を絶妙に絡ませている。カーショーというより、家具見本市の様相だ。床から建家から椅子から机まで、すべて上質のウッドで造り込んでいる。

きわめつけは「MINI」

エリア一帯を街に見立て、クルマをデザインの一部として飾っている。クルマを展示するというより、MINIのある街並を表現したかのようで好感触。

一部には、MINIのインパネを巨大化したオプジェが展示されており、多くの視線を集めていた。

  • MINIはMINIらしくポップな雰囲気で整えられている。電話ボックスがあり、街灯がある。キッザニアに紛れ込んだかのようです
    MINIはMINIらしくポップな雰囲気で整えられている。電話ボックスがあり、街灯がある。キッザニアに紛れ込んだかのようです
  • MINIのインパネを模した巨大なオプジェ。シフトレバーもダイヤルもあります。
    MINIのインパネを模した巨大なオプジェ。シフトレバーもダイヤルもあります。

モーターショー通いが始まりそうです

モーターショーはクルマの見本市ではない。メーカーの思いを伝える場所なのだ。華やかにスポットライトを浴びて微笑むショーカーよりもむしろ、メーカーブースの造作が、ショーに心地良い刺激と彩りを添えていた。

世田谷辺りの街並をなんとなく散歩するような気軽な感覚で、モーターショーを楽しむのも悪くはない。「ちい散歩」も「ぶらり途中下車の旅」も、同じだと思えば、世界のモーターショーにも足が向く。

来年のデトロイトショーに、キノシタがいたりして… (笑)。

木下アニキの俺に聞け 頂いたコメントは、すべて目を通しています!するどい質問もあって、キノシタも大満足です!言っちゃダメなことなど。オフレコで答えちゃいますよ!
ニックネーム「まさやん」さんからの質問
先日のTGRF2012はとても楽しかったです。
当日、トップガンの方の同乗走行という大変貴重な体験をさせて貰いました。
おかげで、これからサーキットを自分の車で走りたいと思うようになりましたが、何から始めたら良いのでしょうか。
ちゃんと準備をして楽しみたいと思っていますので、ご指導お願いします。

走りをはじめるのはなんでもかまわないよ。セオリーなんてまったくない。将来、プロドライバーを目指すのならば、ある一定の法則はある。だけど、走りを楽しみたいのなら、いまチャレンジしたいことに挑めばいいだけだよ。

ドリフトがしたいなら、どこかでテールスライドしてみればいい。サーキットで腕を磨きたいのなら、サーキットに通えばいい。その後に上を目指したければ、そこから次の進路に移ればいい。要するに、いま何をしたいのかですべてが決まるのだ。

さてさてまずは、「ワクドキサーキットを走ろう」がもっとも気軽に参加できるだろうね。ぜひいらっしゃいね。それから次は、一緒に考えようよ!

キノシタの近況

 新型レクサスISのプロトタイプに乗ってきたぞ。米国LA近郊のとあるワインディングで…。マキマキ模様の覆面なのは、まだデビュー前の極秘車だからです。まずは来春のデトロイトショーで発表。正式デビューは4月頃らしい。ともかく、格段にプレミアム度が高まっている。とにかくスタイルがかっこいい。走行性能にはまだまだ煮詰めるポイントはあるけれど、デビューまでに完璧になるだろうね。
www.cardome.com/keys/

【編集部より】
木下アニキに聞きたいことを大募集いたします。
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