「クルマは動いてこそ価値がある」
常々そう思っている。
それはもう、クルマへの素直な感想というレベルではなく、たとえば「人は神が造りたもうた…」に等しいほどの、キノシタの格言だといってもいい。
あはっ、それほど大上段に物事を構える必要などはないのだが、モーターショーと名のつくイベントには背を向けてきているのは、クルマは展示されているだけで走らないからなのだ。
デトロイトモーターショー、フランクフルトモーターショー、ジュネーブモーターショー…。世界にはビッグなモーターショーが沢山ある。
十数年前に一度だけ、取材という業務のために足を運んだことはあるけれど、あれから今年まで観戦する機会は訪れなかった。だって、東京モーターショーだってドタキャンすることだってあるのだから、わざわざ海外にまで遠征するわけがない。
業界人の中には、世界各地のモーターショー巡りをする御仁も少なくない。レギュラー参戦組ではないものの、たとえばデトロイトだけは欠かさないで参加する、あるいは、北京だけは行くように心掛けている、というジャーナリストも多い。そんなのに、東京にすら行かないなんてほとんど非国民。この記事を読んだ諸先輩方からのお叱りメールが怖いほどである。
ただ、なんと言われようとも、クルマは走ってナンボを金言名句としているキノシタには、展示されているだけで走らないクルマはクルマではなくオブジェ、つまりモーターショーではなく「クルマ型オブジェ」展覧会には足が向かないのは道理。オイルの焼ける匂いや、金属が擦れる音はもちろんのこと、そもそもエンジン音すら聞こえてこないのである。興味なし…なわけである。
そんなキノシタが先日、LAモーターショーに出掛けた。そしてにわかに、モーターショーに興味を持ってしまったのだから笑える。「人は神が造りたもうた…」級の格言も、気分次第で前言撤回するのがキノシタの良いところである (笑)。
たしかにクルマは動いていない。ステージ後方で垂れ流している映像からのエンジン音は、リアルサウンドではない。バーチャル感は溢れている。
ショーにはショーの別の魅力があることを知った。ちょっと変則的な思いだけれど、クルマそのものというより、メーカーがこのショーに期待する思いや、我々へのメッセージなどを深読みしようとすると、にわかにモーターショーの魅力がクローズアップしていくのだ。
ショーには公道ではお目にかかれないモデルが笑顔を振りまく。たとえばトヨタブースでは、新型「RAV4」がワールドプレミアとなった。レクサスブースでは、来期デビュー予定とされている「LF-CC」が注目の的。それを観るだけでも興奮する。だけどそれとは異質の門外漢であるキノシタにとっては、ステージの造作や構成などに注目してしまうのだ。
たとえば「ホンダ」
赤基調のブースには、ハイブリッドのアコードから、真っ赤なインディカー、真っ赤なGPマシン、真っ赤なモトクロッサーが並ぶ。もちろんアシモもあり、船外機があり、田植機から発電機、そしてプライベートジェットのレプリカが展示されている。
全方位的にエンジン付きを展開するホンダを声高らかにアピールとしてるわけだ。
かたや「リンカーン」
モーターショーなのに新車は一切ナシ。すべては1950年から1960年代の旧車のみ。ブースデザインは、エンブレムの元となった六角形で彩られており、旧車を展示することで伝統の厚みを語っている。
それにしても、新車一切ナシで良いのかねえ?
そして「日産」
とことんモータースポーツ押しである。ル・マン参戦で話題をさらった「デルタウイング」が中央に展示。どかんとアイキャッチ。その背後でさりげなく、インフィニティを表現していた。
「マツダ」
漢字押しのマツダはここでも手抜かりはない「魂」の「動」と書いて「KODO」と読ませていた。どこか最近のマツダアイデンティティは、光岡自動車の「オロチ」に似ている。そのルックスがそっくり。だからというわけではないが、漢字が似合っていた。オリエンタル押しである。
「ボルボ」
徹底的に北欧家具縛りである。そこに安全を絶妙に絡ませている。カーショーというより、家具見本市の様相だ。床から建家から椅子から机まで、すべて上質のウッドで造り込んでいる。
きわめつけは「MINI」
エリア一帯を街に見立て、クルマをデザインの一部として飾っている。クルマを展示するというより、MINIのある街並を表現したかのようで好感触。
一部には、MINIのインパネを巨大化したオプジェが展示されており、多くの視線を集めていた。
モーターショーはクルマの見本市ではない。メーカーの思いを伝える場所なのだ。華やかにスポットライトを浴びて微笑むショーカーよりもむしろ、メーカーブースの造作が、ショーに心地良い刺激と彩りを添えていた。
世田谷辺りの街並をなんとなく散歩するような気軽な感覚で、モーターショーを楽しむのも悪くはない。「ちい散歩」も「ぶらり途中下車の旅」も、同じだと思えば、世界のモーターショーにも足が向く。
来年のデトロイトショーに、キノシタがいたりして… (笑)。
走りをはじめるのはなんでもかまわないよ。セオリーなんてまったくない。将来、プロドライバーを目指すのならば、ある一定の法則はある。だけど、走りを楽しみたいのなら、いまチャレンジしたいことに挑めばいいだけだよ。
ドリフトがしたいなら、どこかでテールスライドしてみればいい。サーキットで腕を磨きたいのなら、サーキットに通えばいい。その後に上を目指したければ、そこから次の進路に移ればいい。要するに、いま何をしたいのかですべてが決まるのだ。
さてさてまずは、「ワクドキサーキットを走ろう」がもっとも気軽に参加できるだろうね。ぜひいらっしゃいね。それから次は、一緒に考えようよ!
新型レクサスISのプロトタイプに乗ってきたぞ。米国LA近郊のとあるワインディングで…。マキマキ模様の覆面なのは、まだデビュー前の極秘車だからです。まずは来春のデトロイトショーで発表。正式デビューは4月頃らしい。ともかく、格段にプレミアム度が高まっている。とにかくスタイルがかっこいい。走行性能にはまだまだ煮詰めるポイントはあるけれど、デビューまでに完璧になるだろうね。
www.cardome.com/keys/
【編集部より】
木下アニキに聞きたいことを大募集いたします。
本コラムの内容に関することはもちろんですが、クルマ・モータースポーツ・カーライフ…等のクルマ情報全般で木下アニキに聞いてみたいことを大募集いたします。“ジミーブログ”にてみなさまのご意見、ご感想をコメント欄にご自由に書き込みください。