レーシングドライバー木下隆之のクルマ連載コラム ~木下アニキの俺に聞け!~クルマ・スキ・トモニ

人とクルマの、ともすれば手の平から溢れてしまいそうな素敵な思いを、丁寧にすくい取りながら綴っていくつもりです。人とクルマは、いつまでも素敵な関係でありたい。そんなGAZOOが抱く熱く溢れる思いが伝わりますように…。
レーシングドライバー 木下隆之氏


86LAP 癒されたのは僕らだった        (2012.12.11)

装いも新たに…

スーパーGTドライバー同士のワンメイクバトル。トヨタの思惑がはずれ(?)、BRZが1-2フィニッシュした。空気の読めないスバルドライバー、おめでとう(笑)
スーパーGTドライバー同士のワンメイクバトル。トヨタの思惑がはずれ(?)、BRZが1-2フィニッシュした。空気の読めないスバルドライバー、おめでとう(笑)

今年のニュルに参戦した日本車勢は、こぞってクラス優勝を手にした。これは凱旋パレード。レクサス、日産、スバル、トヨタ。日本車はずいぶんと速くなったんだなぁと、つくづく思う。
今年のニュルに参戦した日本車勢は、こぞってクラス優勝を手にした。これは凱旋パレード。レクサス、日産、スバル、トヨタ。日本車はずいぶんと速くなったんだなぁと、つくづく思う。

「TOYOTA GAZOO Racing FESTIVAL」

そのイベント名に熱い思いが込められていたように思う。

「TOYOTA MOTORSPORTS FESTIVAL」ではなくて「TOYOTA GAZOO Racing FESTIVAL」。GAZOO Racingの文字が冠となって2回目の開催だ。

これまでのファン感謝デーとは、そもそも内容が異なっていたのも納得がいく。

メーカーの垣根を越えて、クルマ好きが集う場所を提供していたように思う。それこそがまさに、GAZOO Racing の思想である。

「86/BRZのワンメイク・スペシャルレース」では、たった2台のエントリーだったBRZが、17台もの多勢で参戦した86を制して1-2フィニッシュをやらかした!

「空気の読めないスバル勢~!」と実況も熱い。

だが、 GAZOO Racingの理念を思えばそれは微笑ましかったし、イベントを盛り上げた。クルマ好きならば、どれが勝ったっていいんだよ、というわけだ。

「ニュルブルクリンクスペシャルラン」ではスバル WRX STI S206、GTアカデミーGT-R、TOYOTA86に加え、僕が乗るLEXUS LFAがランデブー。この4台は今年のニュルブルクリンク24時間耐久レースで、それぞれのクラスでクラス優勝を飾ったマシン。それを祝福し、歓迎するかのようなパレードランとなった。

ついに日本車がニュルでも活躍する時代になったんだなぁ~、という感慨とともに、メーカーの垣根を越えて勝利を讃える姿勢に感動を覚えた。日産だってスバルだって、ともに世界と戦った同士なのだというわけだ。

いい話でしょ?

前代未聞のカーパフォーマンスショー

奈良県・明日香村の和太鼓集団「倭-YAMATO」の迫力のパフォーマンスで開幕。華やかなサウンドを背景に、3台+特別ゲスト1台の86がコース上で舞った。
奈良県・明日香村の和太鼓集団「倭-YAMATO」の迫力のパフォーマンスで開幕。華やかなサウンドを背景に、3台+特別ゲスト1台の86がコース上で舞った。

和太鼓の派手なパワーにのせられ、3台の86が華麗なカーパフォーマンスを披露した。
自由自在に駆け回るクルマの可能性、ドライバーの妙技、そしてクルマの迫力と美しさが表現されていた。前代見物のコンテンツである。
和太鼓の派手なパワーにのせられ、3台の86が華麗なカーパフォーマンスを披露した。
自由自在に駆け回るクルマの可能性、ドライバーの妙技、そしてクルマの迫力と美しさが表現されていた。前代見物のコンテンツである。

僕にとってとくに印象的だったのは、オープニング・セレモニーの演出である。

イベントの冒頭は、ガズームラのひとつである奈良県明日香村の和太鼓パフォーマンス集団「倭‐YAMATO」によるド派手な演奏で始まった。
ただそれだけではなく、演奏の盛り上がりにシンクロして3台の86が乱入、音楽に合わせてまるでダンスを踊るかのような演技を披露。音と走りの協調には、多くの観客が斬新な仕掛けに驚いたことだと思う。

ただそれだけに終らなかった。3台の86にもう1台の86競技車が乱入。派手なドーナツターンを披露し終え、ドライバーがクルマから降りたつ。そのステアリングを握っていたのはなんと「モリゾウ」選手だったというサプライズ。

「世界で唯一かもしれないドリフトのできる社長」の存在を広くアピールすることになったわけである。

クルマって、やっぱり動いていてこそ本物だと僕は思う。だからこの、音楽と走りを絡ませたカーパフォーマンスは、クルマの魅力を伝える最良の手段だと思った。

まったく今年の「TOYOTA GAZOO Racing FESTIVAL」は奇想天外な仕掛けで観客を魅了した。GAZOOドライバーとして参加したひとりのドライバーとして、本当にそう思う。こんなイベント、かつてはなかったはずだと…。

僕は実は、昨年から始まった「メッセージ・ドローイング」が気に入っている。イベント前夜に、すべての関係者がコース上に思いを綴り、観客を出迎える。朝からは観客もコース上に踏み入れることが可能で、そこにメッセージを加える。そのすべてを見て回ることはできなかったのだが、思いは伝わってくる。心を込めて描かれたそのひとつひとつのメッセージに目を落とすと、体に熱いものが沸き上がってくるのだ。

ふと、路面に目を落とすと、素敵なメッセージを発見した。サーキットに訪れてくれた少女が描いたものだということがのちにわかった。小さな手で、熱い思いを大きく記すその力感に、思わず震えるような感動を覚えたのだ。
「83 LFA 大好き♡」

今年僕がドライブしたクラス優勝マシンのゼッケンである。

演者と観客という隔たりはなく、クルマスキ同士なのだとの思いが、感傷的な思いにさせるのだ。

今年もありがとう、そして来年もよろしく…

普段は、殺伐とした勝負の世界にいる。だからサーキットを心から純粋に楽しむ機会はないのだ。思えばこの日1日、ずっと笑っていたような気がする。

モータースポーツの楽しさがここには充満しているような気がする。

どうだった?

楽しんでくれた?

だと嬉しい!

  • イベント最後のグリッドウォークで、ひとりの女の子がゼッケン83の優勝マシンに寄り添っていた。コースにこんな愛情たっぷりのメッセージを書いてくれた女の子だ。可愛くて、思わず抱きしめちゃいました。
    イベント最後のグリッドウォークで、ひとりの女の子がゼッケン83の優勝マシンに寄り添っていた。コースにこんな愛情たっぷりのメッセージを書いてくれた女の子だ。可愛くて、思わず抱きしめちゃいました。
  • メッセージの横までわざわざクルマを移動して記念撮影。今年頑張って良かったと、本当に思った瞬間です。嬉しいねぇ…。感動を与える立場の僕が、この子から感動をいただきました。
    メッセージの横までわざわざクルマを移動して記念撮影。今年頑張って良かったと、本当に思った瞬間です。嬉しいねぇ…。感動を与える立場の僕が、この子から感動をいただきました。
木下アニキの俺に聞け 頂いたコメントは、すべて目を通しています!するどい質問もあって、キノシタも大満足です!言っちゃダメなことなど。オフレコで答えちゃいますよ!
ニックネーム「じゃがいも機関車さん」さんからの質問
TGRF2012、行ってきました。
木下さんをはじめ、たくさんのドライバーの方々のトークがとっても面白かったです!
その時ふと思ったのですが、今期のシーズンが終わり、ドライバーの方々はレースをする機会がないと思うのですが、冬の間、どのようなトレーニングをされるのですか?
まさか、ゲームでシミュレーションですか?
そんなことはないですよね~(笑)。

シーズンオフといっても、まったくクルマに乗らないわけじゃないんだよ。

スーパーGTだともう、12月に2回もセパンでのマシンテストがある。来期の契約を結んだドライバーの多くは、休む間もなくテスト走行が始まるというわけ。だから休んでなんていられない。

もっとも、シーズン中に比較すれば、走る機会はたしかに減る。キノシタのように基本的にGAZOO Racingとしかドライバー契約をしていないドライバーは、欧州のレースが終わったら、来期の契約にありつくまでは走行はない。TGRFのLFA走行を、惜しむように走っていたよ。

で、トレーニングね。基本的には日常でしているようなメニューをこなす毎日なんだよ。年末年始のオフを利用して、南国でキャンプを張るドライバーもいるけど、日常の延長だと思っていい。

トレーニングジムに通うドライバーもいるし、僕の場合などは、日々バイクでロングラン(もちろんエンジン付きバイクではなく、サイクリングマシンだよ)。スイミングプールも週イチペースで通っている。スポーツ整形医専門の主治医に体のメインテナンスもしてもらったりね。

ゲーム?

実はいるんだよね。大嶋和也のゲーム狂は有名だよね。日々、食事中でも移動中でも、空き時間があればいつもスマホでゲームをしている。反射神経を鍛えるアプリを手放さないようだ。

キノシタの近況

 来年発売予定の新型レクサスISを走らせてきた。場所はロス・アンジェルス郊外のとあるエリア。写真のように偽装してあるけれど、中身は本物!特に、走りにこだわったというだけあって、刺激的な走りだったよ。開発陣が口にする「BMW3シリーズを超えたぞ」という思いは、ひしひしと伝わってきました。レクサスGSに続き、こいつも凄い
www.cardome.com/keys/

【編集部より】
木下アニキに聞きたいことを大募集いたします。
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