僕らが普段口にしている食べ物。もちろん食品メーカーが、発売前に徹底的にテストして商品化されるわけですな。もちろん味だけではなく、安全性も徹底的に確認され、こりゃ美味しいぞ、となって市場に出回る。
僕らが普段使っている電子機器。もちろんこれも、発売前の徹底した開発テストを経て販売されるわけだ。いまこうしてキノシタがパチパチとキーボードを叩いているiMacだって、そうしたテストをクリアして僕の事務所に届けられている。
もちろん自動車も例外ではない。走行性能、ドライビングフィール、燃費、環境性能、特に安全性に関しては絶対に手抜かりがあってはならないクルマは、徹底したテストが繰り返えされる。
すべてが確認されてから、ようやく街中を
走ることが許されるのだ。
それだけに、製品を生み出すのは苦労が重なる。特に自動車、市販に辿り着くまでの道筋は、とても困難なのだ。
というのも、クルマは公道を走ることを前提に商品化されるのにもかかわらず、その肝心な公道でのテストが厳しく制限されているからなのだ。
特に日本、頑固でわからず屋の役所は、公道テストの許可を簡単には下ろさない。
メーカーが所有するテストコースでももちろん数万kmにおよぶ走行が繰り返されている。だがそれだけでは完璧ではない。普段僕らが走っている街や高速道路やワインディングで試してこそ、ユーザーの心に響くというのに、完成するまで街は走っちゃダメ!
と頑固に許可を下さないのである。マジかよもう(怒)、ってかんじ。
「じゃあ役所が石頭だから、テストコースでチョチョイと仕上げちゃって、公道のことはどうでもいいよね」とはならないわけで、ではメーカーはどうするかといえば、かなりいい線までテストコースで完成させておいて、最後の塩胡椒はわざわざ「改造申請」を取得し公道テストすることになる。
ただ、これにも課題があって、現行車、つまり、すでに市場に出回っているクルマの中身だけを新型に改造し、改造申請をして走らせるわけだ。
かつて運輸省が、某トラックメーカーの公道テストに関していちゃもんをつけてきたことがあったし、某自動車メーカーに対しても、ちょっと書き間違えただけのような改造申請書類の不備を指摘して、まるで違法改造に加担したかのように攻めていたっけ。大幅な改造では許可が下りない。したがって、ちょっとダンパーを交換したとか、ミッションオイルを変更したとかの、小さな改造に留めてのテストとなる。
それじゃ、完璧じゃないよねぇ。
だって、ボディは旧型なわけだから、空力や重量配分などがアンバランスのままである。深いところの味わいのような領域まで吟味したいのに、これでは微細な味の善し悪しが曖昧だ。新しいデザインがどう街に溶け込むか…なんて視覚的な領域まで踏み込むことは困難。とことん納得するテストにはならないのである。
じゃあどうしてる?
やはり世界はおおらかである。
日本の役所は融通が利かないけれど、海外では比較的緩やか。メーカーの心意気を尊重してくれているから、開発車両の走行許可は比較的簡単に下りる。日本のメーカーが、わざわざ海外に遠征して公道テストするのは、そんな裏事情もあるのだ。
灼熱のアリゾナ、極寒のフィンランド、速度無制限のドイツ…。堂々と公道テスト可能なのだから、そりゃクルマの熟成は駆け足で進むわね。
写真は2013年の春に発売開始予定の新型レクサスISの公道走行風景である。渦巻き模様でカモフラージュしているのは、姿形はまだ見せたくないからなのだが、中身は本物の新型だ。
上段の写真は、決してパトカーに咎められているわけではなく、ポリスマンが興味津々で話しかけてきたからだ。
「そのクルマはなんだ?」
「新型のレクサスだぜ」
「おおファンキーじゃね~か!」
「飛ばせば、あんたのパトカーよりも速いぜ!」
「そりゃ面白い、勝負しようじゃね~か」
ちょっと話を盛ると、そんなかんじである。
食品テストならば、室内だって可能だ。電子機器だって同様だ。
だけど、自動車はそうはいかない。日本ではまして、そうはいかないのだ。
それでも知恵を絞って、金を投資して、世界トップ級のクルマを完成させている日本のメーカーは偉いぞ。
もちろん「ジェイズな奴ら」(ネコ・パブリッシング刊)と「豊田章男の人間力」(学研パブリッシング刊)は必読だぞ。だって木下が書き上げたものだから。
「ジェイズな奴ら」は、クルマぞっこんの青春ストーリー。短編小説だから読みやすいと思う。「人間力」は経済書。豊田章男社長の人物像に迫ったものだ。ぜひ…。
ともあれ、クルマ関係の書物は沢山あるからね。むさぼるように読めばいいと思う。
田中光二の「白熱のデッドヒート」、景山民夫の「虎口からの脱出」、海老沢泰久の「F2グランプリ」、大藪春彦の「汚れた英雄」。どれもドキドキしたなあ。
BS「ベストモーターTV」の収録。レギュラーの土屋圭市さん、服部尚貴くんに加え、今回はゲストとして谷口信輝くんが登場。雨のモテギで500馬力オーバーで真剣バトル。
ポルシェ911GT2RS、マクラーレンMP4-12C、日産GT-R、メルセデスSLS AMG、フェラーリ458イタリア…。総額1億を超えるのだ。よくぞまあ、ノークラッシュで終えられたものだと、みんなでみんなを褒めていました。テレビをご覧くだされ!
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【編集部より】
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