レーシングドライバー木下隆之のクルマ連載コラム ~木下アニキの俺に聞け!~クルマ・スキ・トモニ

人とクルマの、ともすれば手の平から溢れてしまいそうな素敵な思いを、丁寧にすくい取りながら綴っていくつもりです。人とクルマは、いつまでも素敵な関係でありたい。そんなGAZOOが抱く熱く溢れる思いが伝わりますように…。
レーシングドライバー 木下隆之氏


92LAP 超安全、夢の舗装路…        (2013.3.12)

ハイドロ知らず…

高速道路での高機能舗装はとてもありがたい。ハイドロプレーニングだけでなく、視界良好にもなるのだ。安全度は高い。
高速道路での高機能舗装はとてもありがたい。ハイドロプレーニングだけでなく、視界良好にもなるのだ。安全度は高い。

路肩は深い水たまり。タイヤをのせると激しいスプラッシュ。自分だけでなく、並走車の視界すら妨げるのだ。
路肩は深い水たまり。タイヤをのせると激しいスプラッシュ。自分だけでなく、並走車の視界すら妨げるのだ。

高速道路の路面が良くなっていることに気づいたのは数年前である。

特に大雨のとき、水しぶきが感動的に少ない路面に出合うことがある。出合うといったのは、全面ではなく、所々だから…。

おそらく、路面になにがしの細工がしてあるであろうことは明白。想像するに、和菓子「雷おこし」のように、ザラザラになっているよう。水が路面に吸い込まれていくような印象なのだ。

この路面の功績は多い。水たまりにならないからハイドロプレーニングに陥りづらい。高速になればなるほどタイヤは浮き上がる。路面とタイヤの間の水幕が厚くなりグリップダウンする。それが抑えられるのだ。

視界も確保される。トラックの脇をすり抜ける時、巻き上げる水に視界が遮られる経験は誰しもお持ちだろう。あの恐怖たるや尋常なレベルではない。金縛りにあったかのように、身を硬くすることだろう。それも軽減されるのだ。

まさに魔法の路面、である。

高機能舗装は、石ころがキモなのだ

感心しながら日本道路株式会社に問い合わせてみると予想は的中。

「路面の表層には約50mmの厚みがありますが、そのアスファルトに約13mmという大粒の石ころを混ぜているのです」
「ザラザラなの?」
「そうです。大粒ですから、石と石に隙間が残ります。そこに水が浸透していきます」

路面に水たまりがなくなったように感じたのはそれが理由だったのだ。

サンプルの路面に水をたらしたら、アスファルトを透過して、水が滴り落ちた。こうして水を吸い込んでいるのだ。

感心したのはそれだけではない。吸い込んだ水をそのまま地中に垂れ流すのではなく、路肩に埋め込んだ側溝に誘導しているのである。吸い込んだ後は知らんぷり…ではなく、排水にまで気を配っているのである。

  • ごらんのような大粒の石が混入されている。その隙間から水が吸い込まれるのだ。ただ、大粒ゆえに耐久性に難がある。
    ごらんのような大粒の石が混入されている。その隙間から水が吸い込まれるのだ。ただ、大粒ゆえに耐久性に難がある。
  • 水をたらすと、下に滴り落ちた。染み通るというより、流れ落ちるという感覚である。
    水をたらすと、下に滴り落ちた。染み通るというより、流れ落ちるという感覚である。

排水性だけではなく…

この路面が開発されたのは、1960年のアメリカだという。それがヨーロッパに伝播し、日本にやってきたのは1987年。高速道路網が発達している欧米が先。日本は後発だ。

もっとも、日本初の施工は高速道路ではなく、東京環状七号線。一般道が初施工なのだとか…。

「なんで?」
「高速道路会社のNEXCOでは高機能舗装と呼んでいますが、我々の呼称は「低騒音舗装」です。「排水性舗装」ともいいますが、もともと騒音低減が目的だったのです」
「静かな路面?」
「タイヤノイズのメカニズムを理解すれば、納得できるはずです」
「メカニズム?」
「エアポンピング音です。タイヤは空気を路面におしつけます。圧縮された空気が弾けると、「ポン!」という音が発生します。それが連続すると、「ザァ~」というノイズになるのです」
「だから?」

2種類の路面を敷いて、ミニカーで実験。騒音の違いはあきらかだった。
2種類の路面を敷いて、ミニカーで実験。騒音の違いはあきらかだった。

「それをエアポンピング音といいますが、路面に隙間がありますから、空気が圧縮されません。したがって、破裂音がしないのです」

なるほど、そんなメカニズムだったのか?

「実験では、3~5dbほど騒音が低下します。数字にするとわずかですが、耳には大きな違いになりますよ」

だから、環境が重要視される幹線道路で施工されたのである。道路沿い住人の環境対策だったのだ。

ぜひサーキットに…

改めて思った。

これ、サーキットに敷けば、ウエットレースで助かるぞ、と。

超高速域での戦いになるウエットレースは、ハイドロプレーニングとの戦いでもある。もしこれが施工されれば、雨の日にスリックタイヤでも走れるかもしれないのだ。

視界が遮られることも少ない。レースの形態が変わる可能性を秘めているのだ。

「レース用のハイグリップタイヤで掻きむしられると、耐久性に不安が残ります。大粒の石が掛け落ちることも考えられます」
「あらあら…」
「そもそもコストが1.5倍ほどになります。その上でメンテナンス費がかさみますよ」
「それでもぜひ…」
「マシンが走ると、ゴムが路面に付着します。目詰まりを起こしますよね。すると排水性が機能しなくなることも考えられます」

なかなか思惑通りにはいかないのである。トホホ…。

ともあれ、高速道路を含めた生活道路ではとても有効な路面であることに違いはない。ぜひ、全国津々浦々、全面施工を願いたいものだ。

木下アニキの俺に聞け 頂いたコメントは、すべて目を通しています!するどい質問もあって、キノシタも大満足です!言っちゃダメなことなど。オフレコで答えちゃいますよ!
ニックネーム「のりおZ」さんからの質問
僕の愛車は、90年製のジムニーです。
カクカクしたデザインが好きで、おもちゃ感覚で乗れるので、すごく愛着があるんです!
でも、彼女は理解してくれません。
というのも、冷房無しで扇風機を付けていたり、かなりボロボロなんです。
それでも、愛着があるので乗り続けたいのです。
そこでアニキに質問ですが、今まで乗ってきた車の中で、ほんとは手放したくなかった車はありましたか?
あと、彼女を説得してください!!

僕もちょっと前まで、軽トラに乗っていたんだ。

ダイハツ・ハイゼット。エンブレムをレクサスに変えていたんだ。
「レクサスは軽トラも発売してるんだぜ」

誰も信じてくれず、一笑されただけだったけど。(笑)

装備も充実。カーナビ、ETCに加えて、レーダー探知機をダッシュボードに括りつけていた。
「まさか高速道路を飛ばす気じゃないよねぇ?」

みんなの愛情に包まれていたんだ。

ただし、ちょっとした事情があって手放してしまった。とてもいい思い出です。

高価な高級車もいいけれど、コンパクトなクルマは愛着が沸く。少しずつ自分色に仕上げていく楽しみもある。また、買い戻すつもりです。

冷房がない? だから扇風機?

いいじゃない。汗流してドライブしているふたりの姿を想像すると、その遊び心が微笑ましく感じるよね。

彼女へ、そんなクルマを転がしているって、ちょっとカッコイイと思うけど?

キノシタの近況

 名古屋オートトレンドのGAZOO Racingステージは大盛況。たくさん応援に駆けつけてくれてありがとう。東京、大阪、そして名古屋。すべての会場の、すべてのステージをご覧いただいた皆勤賞の方もいたよ。ありがとう。
www.cardome.com/keys/

【編集部より】
木下アニキに聞きたいことを大募集いたします。
本コラムの内容に関することはもちろんですが、クルマ・モータースポーツ・カーライフ…等のクルマ情報全般で木下アニキに聞いてみたいことを大募集いたします。“ジミーブログ”にてみなさまのご意見、ご感想をコメント欄にご自由に書き込みください。